2019年度公務労協情報 25 2019年6月12日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

職場のパワハラ実態と現場に即した対策を要望−人事院「パワハラ防止対策検討会」のヒアリング実施−

 本年3月に人事院に設置された「公務職場におけるパワ−・ハラスメント防止対策検討会」が、対策のあり方や具体的な検討を行うにあたっての参考とすることを目的に労使双方に意見聴取を行っており、6月10日、公務員連絡会に対しても意見聴取が行われた。
 冒頭、組織の現況や組合から見た公務におけるパワハラの現状について説明した上で、検討にあたっては、人事院作成の「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」の活用を前提として、@パワハラの定義については、少なくとも民間と同等のものとすること、A民間に措置される紛争解決機能と実質的に同等な「紛争解決」のための手段となり得る体制整備及び必要な措置をはかることを求めた。
 その後、委員からの質問に対し渡辺公務員連絡会賃金・労働条件専門委員長、荘司企画調整委員(国公連合書記長)がこれまで対応した相談事例や現場のパワハラ実態等を踏まえ回答した。質疑については以下の通り。
 
【委員】パワハラ対策として「パワハラの定義については民間と同等のものとする必要がある」という意見を出していただいている。その一方で、提供資料の組合実施のアンケート結果からは「パワハラを恐れる余り、管理職がきつく部下を叱るべき場面でも叱りきれていない」という意見もある。これについては組合としてどう考えるか。

【組合】職務上、上司が部下を指導することはあるが、その指導が過度なものになればパワハラになる。そういった状況に至らないためにも、普段からのコミュニケーションが必要であり、お互いが納得できる上下関係が大切だと考える。

【委員】行う仕事が「公務」であることで、何か違いが生じることはあるか。

【組合】「公務」だからということではなく、職務を行う上で起こることなので、公務でも民間と同様だと考える。

【委員】パワー・ハラスメント防止への対策として、人事院の積極的な介入が必要という意見だが、当事者が自身の職場において当局と協議を行い、解決が困難な場合には人事院が関与するという二審制のような解決方法を想定しているのか。それとも、最初から一括して、人事院が苦情処理を行うことを想定しているのか。また、人事院が介入する際には外部の第三者が関与したほうがよいか。

【組合】最初から一括して人事院が関与することを想定している。仮に二審制のような方法を取ったとして、当事者自身が職場で解決を求めて関係省庁と協議をし、解決しなかった場合には、事案を取り下げるよう説き伏せられてしまうことなどが想定され、人事院に事案が持ち上がることは皆無なのではないか。そういう事態を想定すれば、最初から人事院が介入し、双方の言い分を確認して当局を指導するべきだ。そのためには、人事院の人員確保や能力向上も必要と考える。さらには、人事院が介入する際には、第三者が加わることが望ましい。
また、現状の仕組みでは、当事者は所属の省庁や労働組合になかなか相談できず、ネットで調べるなどして、悩んだ末に人事院に相談をしている。それにもかかわらず、対策は事案を当該省庁に紹介することに留まってしまっている。いろんな要因が重なって起こることだとは思うが、当局の対応が後手に回ることで、当事者が精神疾患による病気休職や、最悪自死に至るケースもある。改善しない場合は、当局を公表するなどのペナルティを課すことなども考えるべきではないか。職員が安心して働くことを考えた時に、迅速に解決する仕組みや、双方が責任をもって解決する仕組みを整備することが必要であり、その上で人事院の果たすべき役割は大きいと考える。

【委員】組合実施のアンケート結果の記載に「人間関係がどんどん希薄になっている」という記述がある。昔からコミュニケーションの少ない職場が多いのか、それとも最近の傾向なのか。

【組合】人間関係は近年希薄になってきているのではないか。その要因は、定員が減らされ、1人当たりの業務量が増えており、周りの職員に関わる余裕もないことや、事務仕事がパソコン中心になっており、会話が減少した側面もある。
加えて、メールによるコミュニケーションの弊害もあると思う。便利ではあるが、送るだけ送って、相手が読んでいるという前提に立って話をするような、アリバイ的なコミュニケーションも発生しており、それによって対面での会話が減少している面もある。

【委員】職員間だけでなく、外部の人とのハラスメントは生じているか。

【組合】カスタマーハラスメントは起きている。実際に自分が納得する答えを得るまで職員を問い詰め続けるような者もいる。今後の民間におけるハラスメント対策でも議論になると思うが、そういう事態を想定した対応が公務においても必要である。また、本府省の業務には国会対応もあり、国会議員への説明等の対応に追われ、長時間労働せざるを得ないケースもある。公務労協として、各政党への協力要請も同趣旨で行なっている。公共サービスを提供するため、その職場をよりよくするためにも、現場への目配りが必要だと考える。

【委員】カスタマーハラスメントについて、具体的にどう対応したらよいと思うか。

【組合】先日、佐賀県内の自治体で個別の者の対応に関する事案も公表されたように、カスタマーハラスメントには対応しないという判断をすることもあると考える。個別の者へ極端に対応に時間を費やす必要が出るなど、対応に苦慮するケースもあると思うが、対処策を考える際の判断はどのケースでも難しいのではないか。

【委員】紛争解決の手段について人事院が介入するなどの意見があったが、その仕組を構築した場合、労働組合の立ち位置はどうあるべきだと考えるか。

【組合】労働組合として、ハラスメントは労使が一緒に解決するべき課題だと認識している。既に組合に苦情相談窓口を設置して、当時者が相談できるようにしているところも多い。解決には労使双方が知恵を絞って考えるしかない。これから枠組みを作るとは思うが、労働組合が関与できるスキームは必要だと考える。
 我々も日頃から相談を受けているが、相談をしてきた人の意見を全て鵜呑みにはしていない。当該の当局が問題として捉えている点を情報交換しつつ、具体的な解決法を探るなど、綿密にやり取りをすることもある。

参考:「公務員連絡会 2019人勧期の取組方針」よりハラスメント部分抜粋
一、2019年人勧期の取組をめぐる情勢
2.その他の課題をめぐる情勢
(1) パワーハラスメント防止対策
 第198通常国会で成立した「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」において、パワーハラスメント防止措置やハラスメント責務規定等(改正労働施策総合推進法)が措置されました。
 一方、人事院は、「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」を設置し、パワハラ防止に関する基本的考え方、パワハラの定義、パワハラ防止の枠組、相談体制・問題発生時の対応方法のあり方、状況等に応じた指導のあり方を主要な論点として掲げ、有識者による検討をすすめています。
 民間の取組に遅れることのないように、国家公務員の措置の具体化に向けて人事院との交渉・協議を行うとともに、検討会における意見聴取等、関係構成組織と連携して対応します。

以上