公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、6月19日13時30分から、一宮人事院総裁との交渉を実施し、「2019年人事院勧告に関わる要求書」(別紙)を提出した。これにより、2019人勧期の取組は正式にスタートした。
本年の人勧期をめぐっては、月例給、一時金の引上げ勧告の実現と同時に、住居手当の見直し、超過勤務の上限規制の実効性確保、パワー・ハラスメント対策などが重要課題となっている。公務員連絡会は、勧告に向けて、交渉を強化することはもとより、7.25中央行動や地方における決起集会などを実施して、要求の実現を図るべく、取組を進めていく。
交渉の冒頭、柴山議長は、提出した要求書について次の通り述べ、要求の実現を迫った。
(1) 2019年人事院勧告の要求提出に当たって、公務員連絡会を代表して一言述べさせていただく。
(2) 要求書にもあるとおり、内閣府が10日に発表した2019年1〜3月期の実質GDP成長率は、年率換算で2.2%増となり、2四半期連続のプラス成長となっている。しかし、その要因は米中貿易摩擦にともなう輸出入のギャップによるものが大きく、内需においては個人消費の低迷が続くなど、景気は予断を許さない状況にある。
(3) このように経済の先行き不透明感が増すなかにおいても、民間の労使は、「経済の自律的成長」の実現には月例賃金の引き上げが不可欠であることや、人材の確保・定着に向けた賃金水準改善の必要性等について真摯な交渉を繰り広げ、継続した賃金引き上げを実現するなど、引き続き、所得の向上と将来不安の払拭による消費の拡大をめざし、粘り強い闘争を展開している。また、このような民間動向を踏まえ、国立印刷局及び造幣局の賃金においても0.33%相当額の引き上げとする調停案受諾で決着している。
これに続くべく、本年も公務員給与の引き上げ勧告を行うことは当然のことであり、その結果が社会全体に波及させることにつながることから、人事院勧告の担う役割は極めて重要だ。
(4) 本日提出した要求書では、公務員の賃金をはじめとする労働条件をめぐる様々な課題について、具体的な要求事項の実現を求めているので、人事院の使命としてその解決を図っていただきたい。
本日の要求提出を機に、事務レベルで交渉を積み上げていくが、しかるべき時期に、要求に対する最終的な回答をいただきたいと考えているので、よろしくお願いする。
続いて吉澤事務局長が要求事項を説明。これを受けて一宮人事院総裁は、「ご要求は確かに受け取りました。最近の公務を巡る情勢は依然として厳しい状況です。人事院としては、国会と内閣に必要な報告・勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしていく所存です。今後、本年の勧告に向けて、要求された課題について皆さんの意見も聞きながら、検討を進めて参りたいと考えています」と応えた。
(別紙)2019人勧期要求書
2019年6月19日
人事院総裁
一 宮 なほみ 様
公務員労働組合連絡会
議 長 柴 山 好 憲
2019年人事院勧告に関わる要求書
貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
さて、わが国の経済情勢は、2019 年1〜3月期の実質GDP成長率は年率換算で2.2%増(前期比0.5%増)となり、2四半期連続のプラス成長となりました。しかし、その要因は米中貿易摩擦にともなう輸出入のギャップによるものが大きく、内需においては個人消費の低迷が続くなど、景気は予断を許さない状況にあります。
このような環境においても、連合は春季生活闘争において継続した賃上げを実現するなど、引き続き所得の向上と将来不安の払拭による消費の拡大をめざし、粘り強い闘争を展開しています。これに続くべく、本年も公務員給与の引上げ勧告を行うことは当然のことであり、その結果が社会全体への賃上げにもつながることから、人事院勧告の担う役割は極めて重要です。
職員は、国民生活の安心・安全の確保など、その期待に応えるため、全国の各地域で高い使命感と責任をもって日々の職務に精励しています。しかし、その勤務環境は、要員が恒常的に不足し超過勤務が蔓延するなど、厳しいものとなっており、良質な公務・公共サービスを確実に提供するためにも、必要な要員が確保されなければなりません。
つきましては、公務員連絡会は、2019年の人事院勧告に関わる要求を提出します。貴職におかれましては、下記事項の実現に向け、最大限努力されるよう要求します。
記
1.賃金要求について
(1) 月例給与について
2019年の給与改定勧告に当たっては、職員の月例給与水準の引上げ勧告を行うこと。なお、人口減少社会に対応した配分とするとともに、実質賃金の動向を踏まえて全世代に配慮すること。また、較差の配分等については、早い段階から公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて行うこと。
(2) 一時金について
一時金については、精確な民間実態の把握と官民比較を行い、支給月数を引き上げること。
(3) 諸手当について
@ 社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえて改善することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて勧告作業を進めること。
A 住居手当については、公務員宿舎の削減及び宿舎使用料等の段階的引上げを踏まえ、総合的に改善することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて行うこと。
(4) 再任用職員の給与について
再任用職員の給与制度については、経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて行うこと。
2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
公務職場におけるワーク・ライフ・バランスを実現するため、「働き方改革」等を次の通り進めること。
@ 超過勤務を縮減するため、ICT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理を直ちに実施するとともに、事前の超過勤務命令を徹底すること。
A 超過勤務の上限規制については、「他律的業務の比重が高い部署」の指定状況等に関する公平性を確保するため、各府省への指導等を徹底するとともに、引き続き、超過勤務縮減に向けて公務員連絡会と協議すること。
B 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する手当の割増率を引上げること。あわせて、超過勤務手当の全額支給の徹底について必要な対応をはかること。
C 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
D 家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
E 妊娠・出産・育児に関わる休暇制度について、新設を含め改善を図ること。
(2) 障害者雇用について
障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、人事院としての役割を適切に果たすこと。
(3) 女性公務員の採用等の推進について
女性国家公務員の採用・登用・職域拡大の着実な推進に向け、積極的な役割を果たすこと。
(4) 高齢者雇用施策について
「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」の着実かつ確実な早期実施に向け、人事院の責任を果たすこと。なお、定年引上げまでの間は、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを中心とする職員の希望通りの再任用を実現するため人事院としての適切な役割を果たすこと。
(5) 福利厚生施策の充実について
@ 心の健康づくりについては、勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、ストレスチェックや「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づく施策の着実な推進に向けて必要な対応を図ること。
A ハラスメントの防止については、一層有効な対策を着実に推進すること。
特にパワーハラスメント対策については、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正を踏まえ、国家公務員における措置の具体化に向けて、公務員連絡会との協議に基づき早急な対応を図ること。
3.非常勤職員等の制度及び待遇改善について
(1) 同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇原則に基づき、非常勤職員等の給与を引き上げること。また、改正後の「非常勤職員給与決定指針」等に基づく、各府省の取組状況を踏まえ、現行指針のさらなる改善に向けて公務員連絡会と協議を行い、非常勤職員の着実な待遇の改善について一層努力すること。
(2) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(3) 非常勤職員の休暇制度・休業制度については、働き方改革の具体化という観点から、常勤職員との間で取扱いが異なる休暇・休業に関して総点検を実施し、公務員連絡会との協議に基づく改善を図ること。
(4) 非常勤職員制度の改善に関するこれまでの取組を踏まえ、制度の抜本的改善に向けた検討を継続することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、作業を進めること。
以上