公務労協地方公務員部会は、11月5日、地方公務員給与の改定等に関わり、総務大臣に提出した申入書に対する最終回答を引き出すため、総務省交渉を実施した。地方公務員部会からは福島企画調整委員代表(自治労書記長)ら書記長クラス交渉委員が出席し、総務省からは大村公務員部長らが対応した。
冒頭、福島企画調整委員代表が、地方公務員部会の要求に対する最終回答を求めたのに対し、大村公務員部長は以下のように答えた。
(1) 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨を踏まえ、各地方公共団体の議会において条例で定められるものである。各地方公共団体においては、国民・住民の理解と納得を得られるよう、情報公開を徹底するなど、自主的な取組を進めながら、適切に給与を決定することが肝要。このため、総務省としても、引き続き必要な助言を行っていく。
(2) 技能労務職員等の給与については、一般行政職と異なり、人事委員会勧告の対象とはならず、労使交渉を経て労働協約を締結することができる。その上で、給与の種類、基準については条例で定めるものとされている。一方で、職務の性格や内容を踏まえつつ、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与等を考慮することが法律上求められている。
また、技能労務職員等の給与については、同種の民間事業の従事者に比べ高額となっているのではないかとの国民等の厳しい批判がある。各地方公共団体においては、このような考え方に立って、給与に関する情報の開示を進めながら、住民の理解と納得が得られる適正な給与とすることが重要と考えている。
(3) 地方公務員の時間外勤務の縮減は、重要な課題であると認識している。総務省としては、各地方公共団体に対し、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置が適切に行われるよう助言を行うとともに、職員の時間外勤務のより一層の縮減に取り組むよう、助言を行っているところ。本年3月末には、総労働時間の削減を含む働き方改革の推進に資する実践的な取組手法について、自治体職員間の意見交換に基づく検討結果を報告書として取りまとめ、各地方公共団体に周知したところ。今後とも、地方公共団体における時間外勤務縮減の取組をしっかり支援していく。
また、本年8月の人事院報告において、来年4月より国家公務員においては超過勤務命令の上限について人事院規則で定めるとされた。地方公務員についても、国と同様に、来年4月より超過勤務命令の上限設定を行うよう通知を発出し助言していくこととしている。助言内容としては、当省が作成している「職員の勤務時間、休暇等に関する条例(案)」に超過勤務命令の上限を定めるための委任規定を設ける改正案を示し、当該委任規定に基づき人事委員会規則等において超過勤務命令の上限を設定することを想定している。
労働基準法別表第一に掲げる事業に従事する職員、地方公営企業の職員、特定地方独立行政法人の職員などには、労働基準法に基づく上限規制が適用になるため、その旨の周知・徹底を行っていく。
(4) 公務員の定年の引上げについては、平成29年6月9日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる骨太の方針2017)において「公務員の定年の引上げについて、具体的な検討を進める」と盛り込まれたことを受け、「公務員の定年の引上げに関する検討会」において検討が進められてきた。この検討会において、公務員の定年の引上げに関する論点整理を取りまとめ、今年の2月16日に人事院に対して定年引上げに関する検討要請がなされ、去る8月10日に、人事院から意見の申出がなされたところ。総務省としては、人事院からの意見の申出や国家公務員の制度設計を踏まえ、地方公共団体の意見も伺いながら検討を進めていく。
雇用と年金の接続については、国家公務員の取扱いに関する閣議決定を受け、平成25年3月に各地方公共団体に対し総務副大臣通知「地方公務員の雇用と年金の接続について」を発出し、その中で、「定年退職者が再任用を希望する場合、任命権者は、公的年金の支給開始まで、常時勤務を要する職(フルタイム職)に当該職員を再任用することを基本とすること」「再任用に関する条例が未制定の場合は速やかに条例の制定をすること」など、地方の実情に応じて必要な措置を講ずることを要請している。平成28年度における再任用の実施状況をみると、都道府県、政令指定都市及び市区町村における条例制定率は99.7%、再任用応募者数に対する採用者数の割合は98.3%となっており、再任用希望者はほぼ全員採用されていることから、概ね全ての地方公共団体で、雇用と年金の接続に向けた着実な取組がなされているものと考えている。また、昨年度に引き続き本年度も、専門家による講演の実施等を通じ、各団体における再任用制度の適切な活用の取組を推進してきており、引き続き、地方公共団体に対する助言等を行うこととしている。
(5) 臨時・非常勤職員制度の更なる見直しに当たっては、今後、各地方公共団体における会計年度任用職員制度の定着状況や、民間の動向、国家公務員に係る制度・運用の状況などを踏まえ、厳しい地方財政の状況にも留意しつつ、検討していく。また、総務省としては、平成32年4月1日の改正法の施行に向け、改正法に係る運用上の留意事項や円滑な施行のために必要と考えられる事項について示した「事務処理マニュアル」を昨年8月に発出し、先月18日に改訂版を発出したところ。今後とも、臨時・非常勤職員全般について、適正な任用・勤務条件の確保が図られるよう、適切に助言していく。
これに対し、福島企画調整委員代表は次のように意見・要望を述べた。
(1) 国家公務員の給与改定について、早期に人事院勧告どおりの実施を閣議決定し、給与法改正法案の国会提出及び成立に向け、大臣はじめ総務省として尽力されることを強く求める。
地方公務員の給与については、言うまでもなく、地方公務員の給与は、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきものであり、その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものだ。それを損なうような指導・助言は控えるよう、その点を改めて強調しておく。
(2) 36協定締結義務のある事業場については、36協定を締結しなければ労基法違反となり、また別表第一に掲げる事業に該当するか否かで適用規定が異なる。職権の行使は労働基準監督機関であるが、総務省としても、36協定締結の有無や内容、別表第一の事業における各地方自治体での取扱い状況の把握及び事業内容の基準を明確に示す必要がある。
また、36協定締結義務のある事業場以外については、労働基準法第33条3項の規定のみでは、使用者あるいは任命権者の裁量による無制限の勤務命令が懸念されたが、今回、条例・規則による超過勤務命令の上限を設定すること、上限を超える超過勤務命令について人事院規則におけるいわゆる「特例」を踏まえて対応するとしたことは一定評価する。今後、長時間労働の是正に向け、具体の条例等整備が円滑に進むよう、早期に地方自治体への通知等の発出を要請する。
給特法が適用される教育職員については、上限規制を含む実効性のある超過勤務縮減の具体的施策をはじめとした教職員の働き方改革について、引き続き、文科省と情報共有・情報交換をしながら推進することを求める。
(3) 国家公務員の制度改正を早期に、着実かつ確実に実現されるよう関係府省に強く働きかけるとともに、地方公務員についても、国家公務員と同様に措置するよう強く求める。また、定年引上げまでの間は、再任用制度を確実に運用することが重要だが、全自治体での制度確立と職員の希望通りの再任用の実現とともに、高齢期の生活を支える給与、適切な労働条件が確保されるよう要望する。
(4) 臨時・非常勤職員制度の改正については、早期に改正法の趣旨を踏まえた制度構築が必要だ。とくに、会計年度任用職員制度の導入については、地方自治体当局による意識の温度差を解消し、制度の円滑な導入が推進されるようさらなる周知徹底及び支援をお願いするとともに、あわせて、厳しい地方財政の現状を鑑み、制度改正による影響額調査結果から必要な財源の確保を強く求める。
今後、第2回給与関係閣僚会議において本年の人事院勧告の取扱い方針が協議され、閣議において公務員給与改定の取扱い方針、給与法等改正法案が決定される見込みである。これを受け、地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて、総務副大臣通知が発出される予定である。
以上