2019年度公務労協情報 30 2019年8月1日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

月例給・一時金ともに引上げの見通しと回答
−人事院給与局長と2度目の交渉−


 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、1日14時30分から、2019年人勧期要求に関わり松尾人事院給与局長と2度目の交渉を行った。
冒頭、吉澤事務局長が「7月25日の交渉の議論を踏まえた現段階の検討状況を回答されたい」と求めたのに対し、松尾給与局長は以下の通り答えた。

1 勧告について
勧告日は、来週半ばで調整中である。具体的な日程は、総裁会見の際にお伝えすることができると思われる。
2 官民較差等について
(1) 官民較差と月例給について
官民較差については、最終的な詰めを行っているところである。
現在のところでは、プラスではあるものの、その幅は昨年よりも小さくなる見通しである。
(2) 特別給について
特別給についても、現在、最終的な集計を行っているところであるが、支給月数が若干の引上げとなる見通しである。
なお、支給月数の引上げがある場合には、勤勉手当に配分することを考えている。
3 本年の改定の考え方について
仮に、官民較差を埋めるために基本的給与である俸給の引上げを行うこととなった場合であっても、較差の程度を踏まえると俸給表全体の改定は難しいが、民間の初任給との間に差があること等を踏まえ、初任給に重点を置いて若年層が在職する号俸について改善を行いたいと考えている。
4 諸手当について
住居手当について
住居手当については、これまでの議論を踏まえ、次のとおり見直しを行うことを考えている。
公務員宿舎の使用料の上昇を考慮し、手当の支給対象となる家賃額の下限を4,000円引き上げる。また、この改定により生じる原資を用いて、民間における住宅手当の支給状況等を踏まえ、最高支給限度額を1,000円引き上げる。
これに伴い、いわゆる基礎控除額は16,000円となり、最高支給限度額は28,000円となる。
なお、基礎控除額の参考指標としてきた公務員宿舎の平均使用料は20,000円を少し上回っているが、これまで伺ってきた職員団体の御意見も踏まえて、手当額が大幅に減額となる職員が相当数生じる状況や公務員宿舎使用料の中位階層の額が16,000円台であることを考慮し、基礎控除額を16,000円にとどめたものである。

回答に対し、吉澤事務局長は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 配分については別途議論させてもらうこととする。今回、官民較差の水準は厳しいと受け止めているが、過去の経緯でいえば、扶養手当の配分や一律支給で対応した場合があった。今回、何故、俸給表の改定で対応するのか。
(2) 較差が小さいことを想定せざるを得ないが、全世代への配分を求めておく。
(3) 初任給あるいは若年層に重点をあてれば、現実的に非常勤職員の給与の改善がはかられることになるのではないか。
(4) 一時金について、今年を含めた近年、勧告までに公表されている各種調査とは結果的に整合しない。この関係をどう捉えているか。
(5) 一時金の引上げを勤勉手当に充てることについては、ワークライフバランスや働き方改革を推進しているなかにあって、育児休業の職員や非常勤職員の処遇にとって課題がある。

 これに対し、松尾給与局長は次の通り回答した。
(1) 本年は官民較差が小さく、俸給表の引上げができる最小限の較差である。手当の見直しについては、喫緊に見直すべきものがない。民間企業で初任給が引上がっていることや、若年労働市場の競争が厳しいことを踏まえ、俸給表にメリハリをつけて若年層に配分すべきと考える。
(2) 組合の主張として、何人も恩恵を受けるべきという主張は承った。
(3) 初任給等を改善することで、非常勤職員の給与について改善がはかられることになると考える。
(4) 民調は業種の範囲や事業所を実地調査するなど、民間の各種調査とは異なる点があるため、単純な結果の比較は困難だ。我々としては自信をもって精緻な調査を行っている。
(5) 一時金の支給方法については、民間の考課査定分と勤勉手当の比率は、公務の勤勉手当(約42%)が民間の考課査定分(約45%)の割合に達していないため、勤勉手当に配分せざるを得ない。育児休業中の職員の勤勉手当についての指摘は承知している。非常勤職員への勤勉手当の支給状況については改善されつつあると承知しているが、各府省を個別に指導する中で、更に改善されるよう取り組んでいきたい。

吉澤事務局長は、続いて住居手当の見直しについて、次の通り局長の見解を質した。
(1) 住居手当について、前回の交渉で見直しに関して、まずは「納得と合理性」が必要と指摘したが、例えば、どのような理由で基礎控除額の参考指標に公務員宿舎使用料とするのか。
(2) 公務員宿舎については、「主として福利厚生(生活支援)目的のものは認めない」ということが指摘されているが、あくまで「主として」ということから、福利厚生であることを否定していない。宿舎に入るか賃貸に入るかはあくまで個人の選択の自由ではないか。
(3) 近年の公務員宿舎の廃止・縮小と使用料の引上げの発端は、2009年の事業仕分けにあり、政治的・社会的な公務員の厚遇批判にあると承知をしているが、どのように認識しているか。
(4) 住居手当の見直しは、基礎控除額を引き上げることによって生じる原資により、上限額を引上げる、すなわち住居手当の範囲で見直しの原資は完結するのか。また、実施時期は来年4月を予定しているのか。

 これに対し、松尾給与局長は次の通り回答した。
(1) 宿舎に入居する職員とそれ以外の職員との間の負担の均衡をはかるためである。
(2) あくまでも個人の選択の自由である。
(3) 当時の議論は承知している。宿舎についても、維持管理に必要な費用と使用料を合わせるということで、宿舎使用料が段階的に引上げられたと認識している。
(4) ご指摘の通りの見直しを考えている。

以上の住居手当の見直しに関する議論を踏まえ、吉澤事務局長は、この問題について最終的に「住居手当については、90年代前半から長年にわたり見直しが行われていないことを踏まえ、また、既に使用料が大幅に引き上げられている宿舎居住職員とのバランスをはかる必要に対して、見直し提案は、手当が減額される職員への一定の配慮がなされたものといえる。その上で、月例給や一時金の全体的な勧告の状況を勘案すれば、さらに負担を抑制するための措置を総裁回答において講じることを求め、それを基本として、遺憾ではあるが、見直し提案を受けとめることとする」とまとめた。これに対し松尾局長は、「ご要望は承った」と回答した。
最後に、吉澤事務局長は「要求は、厳しい状況のもと、職務に必死で奮闘する職員・組合員の切実な要求である。最終回答に向け、勧告への反映を引き続き求める」と強く要請し、この日の交渉を締めくくった。

以上