公務労協地方公務員部会は、人事院勧告・報告後、各人事委員会が勧告作業に取りかかることを受け、8月8日に石田総務大臣に対して「2019年地方公務員給与の改定等に関わる申入れ」を、9日に全国人事委員会連合会に対して「2019年給与勧告等に関する要請」を行った。
【石田総務大臣への申入れの経過】
石田総務大臣への申入れは8日に行い、二階堂地方公務員部会議長ほか委員長クラス交渉委員が出席した。
冒頭、二階堂議長は、申入書(別紙1)を手交し、「政府は、6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019」で、「新経済・財政再生計画」を着実に推進するとし、Society5.0時代の到来や人口減少を見据え、歳出改革等の加速・拡大を通して、財政健全化につなげるとしている。とくに、地方行財政改革では、一般財源総額について、2018年度と実質同水準を2020年度予算編成においても踏襲するとされたものの、財政問題が一層深刻化するなか、人件費を含む地方財政への影響が危惧される。一方で、働き方改革、定年引上げなどをはじめ、大きな課題が山積するなか、地方公務員は、公務・公共サービスに従事する労働者として精力的に職務を遂行している。人事院は8月7日、政府と国会に対して2019年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行った。今後、各人事委員会では、2019年の勧告に向けた作業が本格的に進められるが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応をはかるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請する」と申し入れた。
これに対して石田大臣は、「要請の内容は承った。各要求事項は検討の上、しかるべき時期に回答させていただく」と述べた。
【全国人事委員会連合会への要請の経過】
全人連への要請は9日に行い、二階堂議長(全水道委員長)、加藤事務局長および幹事が出席した。全人連は、青山全人連会長をはじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
冒頭、二階堂議長は、要請書(別紙2)を手交し、地方公務員を取り巻く厳しい情勢等について認識を述べた上で「各人事委員会が、専門機関としての機能を発揮されるよう期待している。2019年の勧告に向け、地方公務員が置かれている現状を十分踏まえ、下記事項の実現に向け最大限の努力をお願いしたい」と、要請した。
続いて、加藤事務局長が要請事項について説明した上で、「本年の人事院勧告で、月例給・一時金ともに6年連続で引き上げることとした。職員の士気を高め、良質な公務・公共サービスを提供するためにも、各人事委員会の尽力を期待している」と、全人連としての努力を強く求めた。
こうした地方公務員部会の要請に対し、青山会長は別紙3の通り回答し、この日の要請を終えた。
(別紙1)
2019年8月8日
総 務 大 臣
石 田 真 敏 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 二階堂 健 男
2019年地方公務員給与の改定等に関わる申入れ
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
さて、政府は、6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019」で、「新経済・財政再生計画」を着実に推進するとし、Society5.0時代の到来や人口減少を見据え、歳出改革等の加速・拡大を通して、財政健全化につなげるとしています。とくに、地方行財政改革では、一般財源総額について、2018年度と実質同水準を2020年度予算編成においても踏襲するとされたものの、財政問題が一層深刻化するなか、人件費を含む地方財政への影響が危惧されます。
一方で、働き方改革、定年引上げなどをはじめ、大きな課題が山積するなか、地方公務員は、公務・公共サービスに従事する労働者として精力的に職務を遂行しています。
人事院は8月7日、政府と国会に対して2019年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行いました。今後、各人事委員会では、2019年の勧告に向けた作業が本格的に進められますが、地方公務員の労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度が機能するよう、総務省として適切な対応をはかるとともに、労使間の十分な交渉・協議を通した自主的な給与改定を尊重するよう要請します。
貴職におかれましては、下記事項の実現に向け最大限のご努力をいただきますようお願いします。
記
1.2019年の地方公務員の給与改定については、地公法第24条2項の趣旨を踏まえた自治体の自主的な決定が尊重されるよう対応すること。また、住居手当の見直しについては、地方自治体における宿舎の設置状況や手当の支給実態等、地方の実情を勘案し対応すること。
2.公営企業および技能労務職員の給与については、当該職員に労働協約締結権が保障されていることを踏まえ、労使交渉に基づく自主的・主体的決定を尊重すること。
3.地方自治体における長時間労働の是正については、厳格な勤務時間管理や超過勤務縮減目標等の設定など、実効性のある超過勤務縮減策を講じられるよう地方自治体を支援すること。とりわけ、地方公務員の時間外勤務に関する実態調査を実施するとともに、人事委員会規則等改正による時間外勤務命令の上限を確実に設定するよう対応をはかること。
4.定年の引上げに関わっては、人事院「意見の申出」を踏まえ、地方自治体においても国に遅れないよう制度設計を進めるとともに、地方公務員部会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて対応すること。定年引上げまでの間は、全ての地方自治体で再任用制度を確立し、職員の希望する再任用の実現とともに、高齢期の生活を支える給与、適切な労働条件を確保するよう対応をはかること。
5.改正地方公務員法等の審議及び附帯決議を踏まえ、臨時・非常勤職員制度の改善に向けた全般的かつさらなる見直しを引き続き検討するとともに、会計年度任用職員制度導入に係る必要な財政措置を講ずること。
6.パワーハラスメント対策については、人事院「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」の動向等、国家公務員への対応や労働施策総合推進法の改正を踏まえ、地方公務員における措置について、地方公務員部会との十分な交渉・協議、合意に基づいた対応をはかること。
(別紙2)
2019年8月9日
全国人事委員会連合会
会 長 青 山 ●(やすし) 様
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 二階堂 健 男
2019年給与勧告等に関する要請書
各人事委員会の地方公務員の給与・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
さて、地方公務員をとりまく環境は年々厳しさを増し、働き方改革、定年引上げなどをはじめ、大きな課題が山積するなか、公務・公共サービスに従事する労働者として精力的に職務を遂行しています。
一方で、政府は、国家公務員の定員合理化、人口減少を反映した地方公務員の定員抑制、また、生産年齢人口減少による労働力の供給制約やSociety5.0における技術発展の加速化を背景とした「スマート自治体」の推進について議論を進めています。
人事院は8月7日、政府と国会に対して2019年の官民較差に基づく国家公務員の給与等に関わる勧告を行いました。各人事委員会におかれましては、2019年の勧告に向け、職員の士気を確保し、良質な公務・公共サービスを提供していくためにも、専門機関としての機能を発揮いただくとともに、地方公務員が置かれている現状を十分踏まえ、下記事項の実現に最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.民間賃金実態に基づき公民較差を精確に把握し、人事院勧告を最低とした地方公務員給与の勧告を行うこと。勧告にあたっては、給料表の改善を中心に公民較差を解消すること。また、一時金の公民比較は、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
2.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。
3.諸手当の改善については、地域の実情を踏まえつつ、組合との十分な交渉・協議に基づくこと。とくに、住居手当の見直しについては、地方自治体における宿舎の設置状況や手当の支給実態等、地方の実情を勘案し、関係労働組合との十分な交渉・協議、合意に基づき進めること。
4.臨時・非常勤職員の任用や待遇について、地方公務員法及び地方自治法の改正法を踏まえ、人事委員会として改善に向けて必要な対応をはかること。
5.公立学校教員の賃金に関わり、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。また、作成に当たっては、関係労働組合との交渉・協議を行うこと。
6.公務における働き方改革を着実に推進するため、厳格な勤務時間管理や超過勤務縮減目標等の設定をはじめ、長時間労働の是正、ワーク・ライフ・バランスの実現に資する施策の構築など、人事委員会として必要な対応をはかること。とりわけ、「特例業務」における上限時間を超えて時間外勤務を命じた場合の要因の整理・分析・検証を行うこと。
7.定年引上げに関わっては、人事院「意見の申出」を踏まえ、確実に実現することとし、地方の実情に応じ適切に対応すること。定年引上げまでの間は、職員の希望通りの再任用を実現するとともに、高齢期の生活水準と適切な労働条件を確保するための対応をはかること。
8.障害者雇用については、障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう対応をはかること。
9.実効性のあるハラスメント防止策を引き続き推進するため、積極的な対応を行うこと。とくに、パワー・ハラスメント対策については、人事院「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」の動向等、国家公務員への対応や労働施策総合推進法の改正を踏まえ、地方公務員における措置について、人事委員会として必要な対応をはかること。
10.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休暇・休業制度を確立すること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するための介護休業制度の整備をはかること。また、育児休業・介護休暇に関して男性の取得促進のための必要な措置を講ずること。
11.公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題と位置づけ、必要な施策の確立をはかること。
以上
(別紙3)
令和元年8月9日
要請に対する全人連会長回答
全人連会長を務めております、東京都人事委員会委員長の青山です。
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
さて、一昨日の7日、人事院勧告が行われました。
本年の官民較差は、民間における賃金の引上げを図る動きを反映して、民間給与が公務員給与を額にして387円、率にして0.09%上回っており、この較差を埋めるため、初任給及び若年層について俸給月額を引上げることとしております。
特別給につきましても、民間事業所における好調な支給状況を反映して、民間が公務を上回ったことから、支給月数を0.05月分引き上げることとし、引上げ分は勤勉手当に配分することとしております。
このほか、公務員人事管理に関する報告では、多様な有為の人材の確保・育成や、能力・実績に基づく人事管理の推進、勤務環境の整備、障害者雇用に関する取組、定年の引上げなどについて意見が述べられております。
詳細につきましては、これから人事院の説明を受けますが、国家公務員と地方公務員の立場の違いはありつつも、人事院の勧告は、各人事委員会が勧告作業を行う上で、参考となるものであることから、その内容については、十分に吟味する必要があると考えております。
今後、各人事委員会は、皆様からの要請の趣旨も考慮しながら、それぞれの実情等を勘案し、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。
改めて申すまでもありませんが、各人事委員会といたしましては、本年も、中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を果たしてまいります。
全人連といたしましても、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。
私からは、以上でございます。