公務員連絡会は、10月9日15時から、本年の人事院勧告の取扱いに関する政府の検討状況を質すため、内閣人事局交渉を実施した。公務員連絡会からは書記長クラス交渉委員が出席し、内閣人事局からは堀江人事政策統括官らが対応した。
冒頭、吉澤事務局長が、「本年の人事院勧告・報告がなされてから2か月、既に臨時国会が開会したところだが、8月7日に提出した要求に対する現時点での検討状況を伺いたい」と求めたのに対し、堀江統括官は次の通り回答した。
(1) 8月7日に提出された要求書について、本日までの検討状況を回答する。
(2) 去る8月7日に人事院から国家公務員の給与についての報告及び勧告があったことを受け、8月8日に第1回の給与関係閣僚会議が開催されたところ。
本年の給与改定の取扱いについては、労働基本権制約の代償措置の根幹を成す人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢の下、国政全般の観点から検討を進めているところであり、早急に結論が得られるよう努力してまいりたい。
(3) 国家公務員の定年の引上げについては、人事院の意見の申出も踏まえつつ、国民の理解が得られるよう、政府として更なる検討を重ね、結論を得てまいりたいと考えているところであり、その際、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。
回答を受けて吉澤事務局長は、議論の前提として、「人勧の尊重」と「国政全般の観点」の整合について、統括官の見解を質した。
(1) 労働基本権制約の代償措置としての「人勧尊重」に対し、「国政全般の観点」からの検討というのは、論理的にどう整合するのか。
(2) 労働基本権制約の代償措置の根幹は、例えば全農林警職法事件判決では、争議権の代償ということがある。先ほどの回答では、「国政全般の観点」からの検討の結果、勧告通りの実施とならない場合もあると受け取らざるを得ないが、それは言葉を代えれば、ストライキを構える準備をしておけと言うことと同旨ではないか。
これに対し、堀江統括官は次のように回答した。
(1) 「国政全般の観点」は、国家公務員法の社会一般の情勢に適応するようにという点からきている。政府は、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告を尊重するという基本方針のもと、社会一般の情勢を踏まえたうえで全体的な判断をするというのが論理的な立て付けであり、その検討を給与関係閣僚会議で行い、決定している。人勧尊重という観点に立って検討をすすめており、近日中に結論が得られると考える。
(2) そう問われれば、違法行為はやめてくださいと言わざるをえない。真摯に人勧制度を尊重し検討をすすめ、近日中に結論を示すことができると考えている。
この回答をふまえ、吉澤事務局長は「議論は平行線であることのみ整理し、一方、既に臨時国会が開会されている状況から、本年の人勧取扱いに関する具体的な交渉に移る」として、次の通り統括官の見解を質した。
1.人事院勧告の取扱いについて
(1) 人事院勧告の取扱いにおいて、「国政全般の観点」とは一体何かという点について、うかがいたい。昨年までの交渉では、「社会経済情勢と財政事情」と述べていたが、その認識でよいか。
(2) 「国政全般の観点」について、本年の人事院勧告の取扱いにおいて、これに影響を及ぼすような変化が昨年と比べて、あるのか。
これに対し、堀江統括官は次の通り回答した。
(1) その認識の通りである。
(2) 最終的な判断は、給与関係閣僚会議で行われるものであり、私が何かを申し上げる立場にはない。まさに「国政全般の観点」での総合的な判断になる。あくまで内閣人事局の立場としては、これまでどおり完全実施ということについて理解を得るべく作業をしている。
回答を受けて、吉澤事務局長は、定年引上げについて、現在の検討状況等について次の通り統括官の見解を質した。
2.定年引上げについて
(1) 政府が公式に取り組むことを表明したのは、2017年の骨太方針で、その後、18年、19年と三度の骨太方針に記載があり、その言及の表現は段階が上がっている。しかし、未だに「検討する」という段階にあるのはいかがなものか。検討の経緯、現時点での検討状況如何。政府の検討は最終段階という理解でよいか。
(2) 60歳定年制導入の1985年以来の大改正ではあるが、あまりにも時間がかかりすぎている。2011年の意見の申出は実現しなかったが、今回は政府の要請に基づいて人事院が見解を示したという前提において、政府における責任が重い。
これに対し、堀江統括官は次の通り回答した。
(1) 政府の要請を踏まえて、意見の申出が行われている。検討段階は着実に上がってきており、法案提出を見据えながら検討している。
(2) 政府として定年引上げについて検討するという方針が先にあり、政府の責任についての認識は、その理解のとおりだ。
統括官の「意見の申出」に対する認識を確認した上で、吉澤事務局長は法案提出について、「この臨時国会での法案提出があるのか」と質したところ、堀江統括官から「今のところ法案提出の予定はない」との回答を受けて、吉澤事務局長は「臨時国会に法案が提出されないことは、極めて遺憾だ」と強く指摘した上で、次の通り統括官の見解を質した。
(3) 少なくとも、来年通常国会における法律措置について、内閣人事局として最善の努力をはかるということでよいか。
(4) 具体的な導入スケジュールや退職手当など、この場で議論すべきことがある。然るべきタイミングで十分な議論を改めて求めておく。
これに対し、堀江統括官は次の通り回答した。
(3) 先ほど申し上げたとおり、具体的な内容を詰めているところだ。現時点で時期について申し上げるわけにはいかないが、お気持ちは承った。しっかりと検討して参りたい。
(4) 皆さんの重要な関心事項と理解している。しかるべき時期に意見を聞かせていただきたいと考えている。
最後に、吉澤事務局長は、「人事院勧告の取扱いについて、大臣から完全実施と速やかな法案提出、早期成立をはかるという覚悟を含めた回答がいただけるものと承知している。定年引上げについても、この場での議論を踏まえた最終的な回答を大臣から求める」と述べ、本日の交渉を締めくくった。
以上