公務労協地方公務員部会は、10月10日、地方公務員給与の改定等に関わり、総務大臣に提出した申入書に対する最終回答を引き出すため、総務省交渉を実施した。地方公務員部会からは鬼木企画調整委員代表(自治労書記長)ら書記長クラス交渉委員が出席し、総務省からは大村公務員部長らが対応した。
冒頭、鬼木企画調整委員代表が、地方公務員部会の要求に対する最終回答を求めたのに対し、大村公務員部長は以下のように答えた。
(1) 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨を踏まえ、各地方公共団体の議会において条例で定められるものである。各地方公共団体においては、国民・住民の理解と納得を得られるよう、情報公開を徹底するなど、自主的な取組を進めながら、適切に給与を決定することが肝要である。このため、総務省としても、こうした考え方に基づき、必要な助言を行っていく所存。
また、住居手当の見直しについては、国の見直しの趣旨を踏まえつつ、御指摘の宿舎の設置状況やその使用料の状況など、各団体の実情を考慮した上で、適切に対処すべきである。
(2) 技能労務職員等の給与については、一般行政職と異なり、人事委員会勧告の対象とはならず、労使交渉を経て労働協約を締結することができる。その上で、給与の種類、基準については条例で定めるものとされている。一方で、職務の性格や内容を踏まえつつ、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与等を考慮することが法律上求められている。
また、技能労務職員等の給与については、同種の民間事業の従事者に比べ高額となっているのではないかとの国民等の厳しい批判がある。各地方公共団体においては、このような考え方に立って、給与に関する情報の開示を進めながら、住民の理解と納得が得られる適正な給与とすることが重要と考えている。
(3) 地方公務員の長時間労働の是正は、ワークライフバランスを実現するうえで重要な課題であると認識している。総務省としては、各地方公共団体に対し、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置が適切に行われるよう助言を行うとともに、職員の時間外勤務のより一層の縮減に取り組むよう、助言を行っているところである。
また、各地方公共団体の積極的な取組を支援するため、働き方改革の推進に資する実践的な取組手法や先進的な取組事例について、調査研究事業や自治体職員間の意見交換に基づく検討結果をガイドブックとして取りまとめ、各地方公共団体に周知している。今後とも、地方公共団体における時間外勤務縮減の取組をしっかり支援していきたいと考えている。
地方公共団体における人事委員会規則等改正による時間外勤務命令の上限の設定等については、本年4月1日時点では、全国の約7割の団体で措置されていると承知しているが、残りの団体についても、早期に導入いただくよう、助言しているところである。また、各地方公共団体における制度の運用状況や時間外勤務の実態等を把握することは重要と認識しており、調査の時期や方法等については、今後検討してまいりたい。
(4) 地方公務員の定年引上げについては、昨年8月の人事院の意見の申出や国家公務員の制度設計を踏まえ、地方公共団体の意見も伺いながら検討を進めていきたいと考えている。地方公務員の再任用については、平成25年3月の総務副大臣通知「地方公務員の雇用と年金の接続について」の中で、@ 定年退職者が再任用を希望する場合、任命権者は、公的年金の支給開始まで、常時勤務を要する職(フルタイム職)に当該職員を再任用することを基本とすること、A 再任用に関する条例が未制定の場合は速やかに条例の制定をすること、など、地方の実情に応じて必要な措置を講ずることを要請している。
平成29年度における再任用の実施状況をみると、フルタイム勤務が50,086人、短時間勤務が59,930人となっている。再任用職員数は年々増加してきており、中でもフルタイム勤務再任用が増加傾向にある。なお、都道府県、政令指定都市及び市区町村における条例制定率は、令和元年6月1日現在で99.9%となっている。
また、再任用応募者数に対する採用者数の割合は、平成29年度実績で98.5%となっており、再任用希望者はほぼ全員採用されていることから、概ね全ての地方公共団体で、雇用と年金の接続に向けた再任用の取組が、着実になされているものと考えている。
さらに、昨年度に引き続き本年度も、専門家による講演の実施等を通じ、各団体における再任用制度の適切な活用の取組を推進してきたところであり、引き続き、地方公共団体に対する助言等を行ってまいりたい。
(5) 臨時・非常勤職員制度の改善に向け、総務省としては、改正法に係る運用上の留意事項や円滑な施行のために必要と考えられる事項について示した「事務処理マニュアル」を策定し、全国の地方公共団体に対し周知するなど、必要な助言を行ってきたところである。
改正法施行後の措置については、各地方公共団体における会計年度任用職員制度の定着状況や、民間の動向、国家公務員に係る制度・運用の状況などを踏まえ、検討してまいりたい。
また、会計年度任用職員制度に係る必要な財政措置については、現在、移行準備状況調査を行っているところであり、当該調査の結果などを踏まえ、法改正の趣旨が実現できるよう、検討してまいりたい。
(6) 今般改正された労働施策総合推進法におけるパワー・ハラスメント防止対策に関する規定については、基本的に、地方公務員にも適用されることとなっている。総務省としては、これまでも機会を捉えてハラスメントの防止について、必要な措置を講ずるよう地方公共団体に対し、助言を行ってきた。
引き続き、改正法の内容や厚生労働省が今後策定する指針の周知を図るとともに、国家公務員における対応も踏まえつつ、地方公共団体、特に一般市町村においても適切に措置義務等を履行し、パワー・ハラスメント防止の実効性が確保されるよう、必要な助言を行ってまいりたい。
これに対し、鬼木企画調整委員代表は次のように意見・要望を述べた。
(1) 国家公務員の給与改定について、早期に人事院勧告どおりの実施を閣議決定し、給与法改正法案の国会提出及び成立に向け、大臣はじめ総務省として尽力されることを強く求める。
地方公務員の給与については、言うまでもなく、地方公務員の給与は、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきものであり、その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものです。それを損なうような指導・助言は控えるよう、その点を改めて強調しておく。
また、住居手当の見直しについて、地方自治体における宿舎の設置状況や手当の支給実態等、地方により実情が異なることから、地方の自主性、主体性による判断を尊重するとともに、副大臣通知への記述には留意が必要であることを申し上げておく。
(2) 労基法別表第一に掲げる事業に従事する職員について、36協定を締結しなければ労基法違反となり、また別表第一に掲げる事業に該当するか否かで適用規定が異なる。これに対し、「問題意識を持っている」「要請にとどまらず、各種会議等で徹底」と中間交渉で回答いただいているが、総務省としても、36協定締結の有無や内容、別表第一の事業における各地方自治体での取扱い状況の把握及び事業内容の基準を明確に示す必要があると考える。
また、労基法別表第一に掲げる事業に従事する職員以外について、時間外勤務命令の上限の設定等の措置を、早急に全自治体において導入されるよう、周知徹底及び指導・助言を要請する。また、時間外勤務に関する実態調査については、実施時期や方法の検討もあると思うが、長時間労働の是正につなげるためにも、その実施を強く求める。
給特法が適用される教育職員の働き方改革については、今臨時国会で給特法改正の動きもあることから、引き続き、文科省と情報共有・情報交換をしながら推進していただきたい。
(3) 国家公務員の制度改正を早期に、着実かつ確実に実現されるよう関係府省に強く働きかけていただくとともに、地方公務員についても、国家公務員と同様に措置するよう強く求める。また、定年引上げまでの間は、再任用制度を確実に運用することが重要であり、全自治体での制度確立と職員の希望通りの再任用の実現とともに、高齢期の生活を支える給与、適切な労働条件が確保されるよう要望する。
(4) 会計年度任用職員制度導入に係る必要な財政措置については、「令和2年度地方財政収支の仮予算」において、「2020年度の予算編成過程で必要な検討を行う」とあるように、所要額を地方財政措置に計上するとともに、地方交付税の算定に適切に反映すべきことを強く求める。また、臨時・非常勤職員制度については、国家公務員非常勤職員との権衡という観点からも、手当・休暇等を含めたさらなる見直しを検討していただきたい。
(5) 人事院「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討委員会」の動向等、国家公務員への対応を注視する一方、労働施策総合推進法の改正を踏まえ、紛争解決の体制整備等、地方公務員への必要な措置を求めるとともに、地方公務員部会との交渉・協議、合意に基づいて対応していただくよう、この場で申し上げておく。
今後、第2回給与関係閣僚会議において本年の人事院勧告の取扱い方針が協議され、閣議において公務員給与改定の取扱い方針、給与法等改正法案が決定される見込みである。これを受け、地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて、総務副大臣通知が発出される予定である。
以上