2020年度公務労協情報 11 2020年3月3日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

2020年春季要求事項で幹事クラスが人事院・内閣人事局と交渉−3/3


 公務員連絡会は3月3日、人事院職員団体審議官、内閣人事局内閣審議官との交渉を実施し、2月18日に提出した2020春季要求に対する中間的な回答を引き出した。いずれの回答も抽象的な内容であったため、公務員連絡会は、今後行う書記長クラスの交渉において、より具体的かつ前向きな回答を行うよう要求し、回答指定日に向けて交渉を積み上げていくこととした。

<人事院職員団体審議官交渉の経過>
 人事院の練合職員団体審議官との交渉は、13時30分から行われた。
 冒頭、森永副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、練合審議官は「現在最終回答に向け、検討を行っているところ。最終回答は3月18日以降を予定しているが、現段階における状況について、回答させていただく」と述べ、次の通り答えた。

1.賃金要求について
 今年の春闘では、連合は、賃上げ要求について「社会全体に賃上げを促す観点とそれぞれの産業全体の『底上げ』『底支え』『較差是正』に寄与する取り組みを強化する観点から、2%程度とし、定期昇給分(定昇維持相当分)を含め4%程度とする。」との目標を掲げ、その実現に向けて取組を進めることとしている、と承知している。
 一方、日本経団連は、「賃金引上げへの社会的な期待も考慮しつつ、賃金引上げのモメンタムの維持に向けて、各社一律ではなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことが基本」とした上で、「『基本給』『諸手当』『賞与・一時金』の3つを柱に据えながら、各企業において、多種多様な方法による組み合わせを含めて議論していくことが望まれる。」としている、と承知している。
 今現在、新型肺炎による経済への影響が心配されるところだが、3月中旬以降、経営側からの回答・妥結が行われるので、人事院としてもその動向を注視しているところである。
○  国家公務員の給与について
 国家公務員の給与について、本年も情勢適応の原則に基づき、民間給与の実態を精緻に調査した上で、民間給与との精確な比較を行い、必要な勧告を行うという基本的スタンスに変わりはない。
 官民給与の比較方法については、これまでも必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員の勤務条件については、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を考慮し、基準の設定等の必要な措置を行ってきているところである。
 非常勤職員の給与については、平成29年7月に、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなどの指針の改正を行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
 非常勤職員の休暇制度については、民間の状況等を踏まえ、本年1月よりいわゆる夏季休暇を新設する措置を行ったところである。

3.労働時間の短縮及び本格的な短時間勤務制度等について
○ 超過勤務の縮減等について
 長時間労働の是正については、昨年2月、人事院規則を改正し、超過勤務命令を行うことができる時間の上限について、原則として1箇月について45時間かつ1年について360時間などと設定して、昨年4月から施行している。
 他律的業務の比重が高い部署の範囲や、どのような業務が上限を超えて超過勤務を命ずることができる特例業務に該当するかの判断について、人事院が主な府省における制度の運用状況を聴取したところ、各府省においては、制度の趣旨に沿った運用が行われていると認められた。各府省において、上限を超えて超過勤務を命ぜられた者がいた場合には、その要因について整理、分析及び検証が行われることとなる。
 公務における長時間労働の是正については重要な課題であり、政府全体で連携して取り組んでいくことが必要であり、人事院としても、今後、検証等の結果も含め、制度の運用状況についてフォローアップを行い、必要に応じて各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしていきたい。
 また、勤務時間管理については、超過勤務の運用の適正を図るため、課室長等による超過勤務予定の事前確認や、所要見込時間と異なる場合の課室長等への事後報告を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は、課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできる旨を職員福祉局長通知で規定したところである。
○ 休暇・休業制度について
 両立支援制度を含む職員の休暇、休業制度については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
 また、両立支援制度の活用については、平成30年3月に発出した「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の内容が各府省において徹底されるように更なる周知に取り組んでまいりたい。なお、新型肺炎の対応についても、時差出勤に関する休憩時間の特例や、出勤困難休暇に関する通知を発出したところ。

4.障害者雇用について
 障害者雇用に関しては、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、その推進に全力で取り組むこととされている。
 人事院としては、障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を行い、平成31年1月から施行している。
 また、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、平成30年12月に「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
 さらに、平成30年度及び今年度に障害者選考試験を実施したほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

5.女性公務員の労働権確立について
 人事院としては、公務におけるワーク・ライフ・バランスの推進及び女性の活躍推進に向けた取組を人事行政における重要施策と位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援など様々な施策を行ってきているところであり、引き続き、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。

6.高齢者雇用施策について
○ 定年の引上げについて
 人事院としては、昨年8月の意見の申出に至る過程での各府省及び職員団体の意見も踏まえ、定年の引上げの実現に向け各施策の必要性等の理解の促進に一層努めるとともに、政府における検討に際して、これまでの検討結果に基づき必要な協力を行うこと等を通じて、必要な法律改正が早急に行われるよう、その責任を果たしてまいりたい。
○ 再任用職員の給与制度について
 再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまでも見直しを行ってきているところである。
 人事院としては、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。

7.福利厚生施策の充実について
○ 心の健康づくり対策について
 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しており、これまでも「こころの健康相談室」の運営など様々な取組を進めてきている。引き続き、各府省と連携しつつ、適切に対応してまいりたい。
○ ハラスメント対策について
 パワー・ハラスメントの防止については、本年1月14日に、「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」から報告書を受け取ったところ。今後、当該報告書の提言を踏まえつつ、皆様のご意見を伺いながら、民間労働法制の施行日である6月1日に新たな人事院規則を施行できるよう、作業を進めてまいりたい。
 現在、検討中のパワー・ハラスメントの防止のための制度措置の概略については、次のとおり、パワー・ハラスメントの防止、救済等に関する措置を講じるため、新たに人事院規則等を制定する。

(1)パワー・ハラスメントの定義
 パワー・ハラスメントとは「職務に関する優越的な関係を背景として行われる、職員に精神的若しくは身体的苦痛を与え、職員の人格や尊厳を害する、又は、職員の勤務環境を害することとなるような、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動」をいう、と定める予定である。
 今申し上げた「職務に関する優越的な関係を背景として行われる」言動とは、当該言動を受ける職員が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを言い、例えば、民間指針に掲げられている上司等の例に加え、他省庁の職員による言動で、当該言動を行う職員の所属部局の権限の関係で、当該職員の了解を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下で行われるもの、また、職員が担当する行政サービスの利用者等からの言動で、当該行政サービスをめぐるそれまでの経緯やその場の状況により、その対応を打ち切りづらい中で行われるものが含まれるとする予定である。
 また、「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上必要性がない又はその態様が相当でないものをいう、とする予定である。このような言動に該当するか否かは、個々の具体的状況を踏まえて総合的に判断することとする。

(2)人事院の責務
 研修の実施や苦情相談対応のほか、パワー・ハラスメントの防止及びパワー・ハラスメントが生じた場合の対応に関する施策についての企画立案を行うとともに、各省各庁の長が実施する措置に関する指導等に当たることと規定する予定である。

(3)各省各庁の長の責務
 @ パワー・ハラスメントの防止に関し、必要な措置を講じること。
 A パワー・ハラスメントが生じた場合には、必要な措置を迅速かつ適切に講じること。行為者が他省庁の職員であるときは、当該省庁の長に対し、調査を要請するとともに、必要に応じて当該行為者に対する指導等の対応を求めること。
 B 他省庁の長から、調査、行為者への指導等の要請を受けた場合に、これに応じて必要な協力を行うこと。
 C パワー・ハラスメントに対する苦情の申出、調査への協力に起因して職員が不利益を受けることがないようにすること。
以上のように規定する予定である。
 今申し上げた「必要な措置」とは、次のようなものがあると考えている。(@)部内規程の作成・明示、(A)職場や職員の実情に応じた業務体制の整備などパワー・ハラスメントの原因や背景となる要因の解消、(B)パワー・ハラスメントの兆候の早期探知、(C)苦情相談の迅速かつ適切な解決、(D)再発防止に向けた措置、(E)苦情申出、調査への協力等に起因して不利益を受けないことの職員への周知、である。

(4)職員の責務
 @ 職員は、パワー・ハラスメントをしてはならないこと。
 A 職員は、人事院が定める「パワー・ハラスメントを防止し問題を解決するために職員が認識すべき事項についての指針」について十分認識して行動することが求められること。
 B 管理又は監督の地位にある者は、パワー・ハラスメントの防止のため、良好な勤務環境を確保するよう努めること。
 C 管理又は監督の地位にある者は、パワー・ハラスメントに関する苦情相談があった場合には、問題を解決するため、迅速かつ適切に対処すること。
以上のように規定する予定である。
 今申し上げた「指針」については、検討会報告書の別紙1を踏まえて作成する予定である。

(5) 研修等
 @ 各省各庁の長は、パワー・ハラスメントの防止等のため、職員の意識の啓発、知識の向上を図ること。
 A 各省各庁の長は、職員に対し研修を実施すること。特に、新規採用者及び昇任者に対する研修を実施すること。
 B 各省各庁の長は、職員に対し、人事院が定める「パワー・ハラスメントを防止し問題を解決するために職員が認識すべき事項についての指針」の周知徹底を図ること。
 C 人事院は、@およびAに関する各省各庁の長への指導等に当たるとともに、自ら実施することが適当と認められる研修の実施に努めること。
以上のように規定する予定である。

(6)苦情相談への対応
 @ 各省各庁の長は、相談員を配置する等必要な相談体制を整備し、職員に明示すること。
 A 相談員は、人事院が定める「パワー・ハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針」に十分留意して、問題を迅速かつ適切に解決するよう努めること。
 B 各省各庁の長は、相談員に対し、Aの「指針」の周知徹底を図らなければならないこと。
 C 職員は、相談員のほか、人事院に対しても苦情相談を行うことができること。人事院は、パワー・ハラスメントに関する職員からの苦情相談に対し、必要な調査を行い、指導、助言及び必要なあっせん等を行うこと。
以上のように規定する予定である。
 今申し上げた苦情相談に関する「指針」については、検討会報告書の別紙2を踏まえて作成する予定である。

(7)他のハラスメント防止の人事院規則の改正
 パワー・ハラスメントにおける「職員の責務」の規定に合わせて、人事院規則10−10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)及び人事院規則10-15(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等)における「職員の責務」の規定を改める予定である。人事院規則10-10については、「職員は、セクシュアル・ハラスメントをしてはならない」とし、人事院規則10-15については、「職員は、自らの言動により、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントを生じさせてはならない」と規定する予定である。

(8)施行日
 施行日は、令和2年6月1日とする予定である。
 以上がパワー・ハラスメントの防止のための制度措置の概略であるが、パワー・ハラスメントに限らず、職場のハラスメントは、職員の尊厳を傷つけるものであり、引き続き、取組を強化してまいりたい。

 春季要求事項に先立ち、森永副事務局長は、「新型コロナウイルスの対応については、緊急事態であるからこそ冷静な対応が求められている。人事院においても政府方針等を踏まえて様々に検討を行い、所要の通知の発出等をしていると承知している。通知をめぐる解釈で現場が混乱することのないように、事務連絡で周知するなど、より丁寧な対応を求めておく」とし、次のとおり人事院の見解を質した。

【新型コロナウイルスの対応について】
 3月1日付で発出された、出勤等が著しく困難であると認められる場合の休暇の取扱いについて、「職員又はその親族に発熱等の風邪症状が見られること」から勤務しないことがやむを得ないと認められる場合の解釈についてだが、新型コロナウイルスへの感染の有無によって取扱いが異なるのか否か、説明を求める。
 回答:今般の通知は、「発熱等の風邪症状がみられること」という「症状」に着目しており、新型コロナウイルス感染症の有無までは問うていない。

 「発熱等の風邪症状が見られる」という点については、新型コロナウイルスの感染の有無にかかわらず、出勤困難に該当するということか。
 回答:その通りである。

 逆に発熱等の風邪症状がない場合で、新型コロナウイルスに感染している場合、そういう事例もレアケースとしてあると思うが、取り扱いはどうなるのか。
 回答:職員が新型コロナウイルスに感染していることが判明した際には、病気休暇の対象となるが、人事院規則10-4の就業禁止の措置の対象にもなる。

 今回の通知で、発熱等の風邪の症状が見られた場合や、子の世話は出勤困難休暇になるが、新型コロナウイルスに感染した場合は、出勤困難休暇にはならず、いわゆる人事院規則10−4の就業禁止という対応という理解か。常勤・非常勤に関わらず、有給での対応になるのか。
 回答:職員に症状は見られないが、感染が判明している際には、就業禁止の措置により、職務専念義務が免除となる。

 非常勤職員の病気休暇は無給だが、就業禁止にする人事院規則10−4で職務専念義務の免除によって、非常勤職員も有給になるということか。
 回答:その通りである。

 新型コロナウイルスへの対応に関しては、出勤困難休暇の取扱い、病気休暇の取扱い、人事院規則10-4の就業禁止による職務専念義務免除の取扱いなど、ケースが分かれるが、実態として給与の取り扱いに関わっては、差異がなく全て有給で取り扱われるという理解でよいか。
 回答:出勤困難休暇や就業禁止の措置によれば、非常勤職員も含めて有給となる。

 これらの回答に対し、森永副事務局長は「組織の中で解釈のいき違いが生じるなど、現場は混乱している。また、国の対応が地方の対応にもつながるため、各府省での取り扱いも含めて、しっかりとした想定問答等を事務連絡などで示すようにしていただきたい。また個別で不明な点があれば随時確認させていただく」と重ねて要求した。

 続いて、森永副事務局長は、主な春季要求事項に関わり、次のとおり人事院の見解を質した。

(1) 賃金要求について
 本年の春季生活闘争については、先月中旬以降、先行組合の要求提出がスタートしている。取り巻く環境は例年になく厳しいものとなっているのではないかというのが率直なところだが、人事院においては、民間の動向を精確に把握し、継続した賃金引き上げの勧告を行うことが必要であることは、強調しておく。
 改めて、本年の民調における「比較対象企業規模」については、現行どおりであることを確認する。

(2) 非常勤職員について
 民間において、短時間、有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針が本年4月1日から適用される。これを公務においてどのように具体化するかが課題であり、いっそうの改善が求められる。
 非常勤職員の休暇制度については、無給休暇の有給化を強く求める。とくに、病気休暇については、私傷病の際に取得できる日数も含めた速やかな改善が必要だ。

(3) 労働時間の短縮等
 超過勤務時間の縮減については、関係人事院規則の施行から間もなく1年が経過する。人事院においては、超勤縮減の実績、問題点と課題の検証を各省各庁任せにするのではなく、主体的に行うことを強く求めておく。
 われわれも職場段階での点検をはじめ、改めて取組を強化していくので、引き続き、各省各庁の取組状況等の前広な共有を求めるとともに、交渉・協議の場を通じて、課題解決をはかっていくこと。

(4) 障害者雇用について
 障害者雇用については、先月、厚労省から集計結果が公表され、法定雇用率は達成されたということだが、公務職場における障害者の参画という視点からすれば、定着率が91.4%に留まっていることは引き続きの課題である。われわれも職場段階で働きやすい環境の整備を はじめ、組合として協力・努力をしていくが、引き続き、人事院としても役割を適切に果たすこと。

(5) 高齢者雇用施策について
 定年引上げについては、人事院の意見の申出を踏まえて政府での検討が最終段階にきているが、今通常国会での関係法案の提出、成立に向け、重ねて人事院として最大限の努力をするよう求めておく。
 なお、再任用職員の給与制度については、その経済的負担や定年前職員との均衡を考慮して、期末・勤勉手当や生活給的手当の支給など、改善に向け検討すること。

(6) 福利厚生施策の充実について
 パワハラ対策については、今ほど、審議官より、新たな人事院規則の制定に向けた検討状況について、口頭で説明があったが、今日の段階で何点か指摘しておく。
 この間、職場からパワハラに関する相談なども寄せられていることは、検討会からのヒアリングの際にも報告しているが、やはり、パワハラの根絶には、管理職に限らない研修や日常的な周知啓発を行いつつ、風通しの良い職場環境をつくることが重要だ。この点については、われわれも労働組合の立場で現場でしっかりと取組をすすめていく。研修や周知啓発についてどの程度、どのように規定するかが課題だが、その際、人事院の「パワハラ防止ハンドブック」の改訂について、規則等の制定と並行した作業を行うことが重要だ。
 また、ことが起こってしまったあとの解決に向けた「体制」も極めて重要だ。この間、検討会のヒアリングでも指摘した、簡易・迅速、納得・有効、プライバシー保護を具備した紛争解決機能が求められる。現状の苦情相談体制や公平審査の仕組みについて、人員を含めた組織体制を強化していく必要がある。
 いずれにせよ、本日、説明があった内容については、われわれとの交渉・協議に基づく対応を求めておく。

 これに対し、練合審議官は次の通り答えた。

(1) 新型コロナウイルス感染症対策については、引き続き状況等を見極めつつ必要な対応をおこなってまいりたい。

(2) 本年の民調の比較対象企業規模については、現行通りの対応を考えている。

(3) 非常勤職員の無給休暇の有給化や労働時間の短縮、障害者雇用、高齢者雇用施策については、要求・意見として受け止めさせていただき、各担当に共有する。

(4) パワハラ対策について、先ほど申し上げた制度措置の概略は、人事院の検討会報告書を踏まえたものであり、セクハラ防止の人事院規則10−10の構成を参考にしつつ検討を進めている。今ほどのご意見も担当に伝えつつ、引き続き人事院として検討をしてまいりたい。

 また、各交渉委員からの意見として、「夏季休暇の取得可能期間の弾力的な対応にむけた検討状況について、情報提供を求める」、「再任用職員の給与制度について、民間でも同一労働同一賃金が4月から施行されるなか、生活給的手当が支給されないのは問題であり、重ねて改善を要望する」と求めたのに対し、人事院は、「夏季休暇については強い要望を受けていることを担当に伝える。再任用職員の手当については、民間状況を見ながら引き続き検討してまいりたい」と答えた。

 最後に、森永副事務局長が「本日の回答は、現時点における人事院の検討状況と受け止める。昨年末の基本要求に関わる交渉も踏まえて、今回の春の交渉では、夏の人勧期に向けてお互いに課題を整理確認し、具体的な解決に向けて互いに方向性を探っていくことが重要だ。12日の両局長との交渉では、われわれの要求について具体的かつ前向きな回答を求めておく」と要請し、交渉を締めくくった。

<内閣人事局内閣審議官交渉の経過>
 稲山内閣審議官との交渉は、15時から行われた。
 冒頭、森永副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、稲山審議官は「主な事項について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。

1.2020年度賃金について
 2020年度賃金について、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
 本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善については、平成29年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省間で申合せを行っている。この申合せに沿って各府省で取組みを行った結果、期末手当や勤勉手当について、平成28年の内閣人事局の調査では2〜3割弱の支給率であったが、平成30年度においては9割超の非常勤職員に対し支給されており、着実に処遇改善が進んでいる。皆様とも引き続き意見交換を重ねつつ、この申合せに沿った処遇改善が進むよう、必要な取組を進めてまいりたい。

3.労働時間、休暇及び休業等について
 労働時間、休暇及び休業等に関して、長時間労働の是正については、平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府一丸となって、
 ・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や
 ・業務の見直し・効率化や、部下職員の超過勤務時間見込みの事前把握等、管理職のマネジメント改革による超過勤務の縮減
 ・テレワークやフレックスタイム制等による働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。
 今後とも、働き方改革に積極的に取り組み、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
 なお、人事院規則の改正により、本年4月から、超過勤務命令については、原則として、1箇月につき45時間かつ1年について360時間の範囲内で行うこととされたところであり、政府としては、同制度の適切な運用をはかるとともに、その運用状況を見ながら、必要に応じて、適切に対応してまいりたい。

4.障害者雇用について
 障害者雇用については、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害者の多様な任用形態の確保、障害者雇用マニュアルの作成などにより、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
 また、職場実習の実施や講習会の開催など、各府省における障害者雇用の推進に係る支援等にも努めている。
 今後とも、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。

5.女性公務員の労働権確立について
女性公務員の労働権確立に関して、男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍については、平成27年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」等を踏まえ、平成28年1月に改正した「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」や、同年4月に施行された女性活躍推進法等に沿って、取組を進めているところ。
 内閣人事局としては、これら取組指針等に基づき、各府省の取組を引き続きフォローアップし、その取組を促進させるようなサポートを行うことにより、職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。

6.高齢者雇用施策について
 雇用と年金の接続に関し、国家公務員の定年の引上げについては、国家公務員の定年を段階的に引き上げるための改正法案を今国会の提出予定法案としており、引き続き法案の提出に向けて進めてまいりたい。

7.福利厚生施策の充実について
 福利厚生施策の充実については、平成28年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
基本計画には数値目標(実施率100%)を導入しているが、このうち、昨年度における管理職員等に対するハラスメント防止等に関する研修の受講率は9割超、ストレスチェックの実施率は100%、要医療該当職員の受診率は7割超、二次健診対象職員の受診率は6割超などとなっている。
 引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。

8.公務員制度改革について
 公務員制度改革に関して、自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12 条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
 この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。

9.転居に伴う異動に関わる職員の負担について
 転居を伴う異動に関わる職員の負担については、昨年12月に各府省に対し、4月期人事異動に伴う引越時期の分散について協力を依頼したところ。引き続き、各府省等に対して必要な検討と協力を求めてまいりたい。

 これに対して、森永副事務局長は、人事院との交渉と同様に「喫緊の課題として、新型コロナウイルス感染症への対応がある。要求提出の際に「国民の不安を取り除くためにも、行政として出来ることは着実に取り組まなければならない。執行体制や職員の安全面にも配慮するなど万全の体制をとること」を大臣に申し上げたところ。引き続き、われわれも労働組合の立場で協力をしていくので、前広な情報提供、共有を求めておく」とし、次の通り主な春季要求事項に関わり内閣人事局の見解を質した。

(1) 転居を伴う異動に関わる職員の負担について
 この課題は、昨年の春季交渉の際にも指摘し、昨年末の基本要求に関わる交渉から要求項目に掲げ、移転料の見直しなど必要な施策を講じるよう政府全体で取り組むことを求めてきたところである。
 今般、赴任に伴う移転料の取扱いに関わって、より実態に即した精算とすることで各省における対応、準備が進められていると承知している。職員の負担軽減につながることであり、われわれが求めていたことからすれば評価するが、他方、われわれと政府との交渉の席上で要求事項として申し入れた内容に関わって、ある意味、一方的に、「こうなります」というのは、われわれと使用者たる内閣人事局との労使関係としてどうなのか。引き続き、内閣人事局として、前広な情報共有とわれわれとの交渉・協議を通じて、勤務条件等含む職場環境の改善に努めるよう強く求めておく。

(2) 働き方改革について
 働き方改革の推進は、まさに公務が率先して対応すべき最重点の課題である。同一労働同一賃金原則に基づく非常勤職員等の待遇改善、改正人事院規則等を踏まえた超過勤務縮減の実績等の検証と必要な対応策の検討など、政府においても、統一的な対応がはかられるよう、予算確保を含め実効性のある施策を講じることを強く求めておく。公務における現状を政府としてどのように認識し、改善しようとしているのか。

(3) 障害者雇用について
 障害者雇用については、先月、厚労省から集計結果が公表され、法定雇用率は達成されたということだが、公務職場における障害者の参画という視点からすれば、定着率が91.4%に留まっていることは引き続きの課題である。われわれも職場段階で働きやすい環境の整備に向けて協力・努力をしていくので、政府全体での着実な取組を求めておく。

(4) 女性公務員の労働権確立について
 数値目標のみにこだわりすぎることがないように職場実態に応じた施策を推進すること。性別を問わず、個々人の置かれている状況を踏まえた働きやすい職場となるよう、職場環境や職員の意識を改めていく必要がある。

(5) 高齢者雇用施策の充実について
 公務員の段階的定年引上げについては、「着実かつ確実な早期実施」の実現に向け最大限努力することを求めておく。
 なお、現行の再任用制度については、職員の希望どおりの再任用となるよう、定員管理の弾力的な運用をはかることが必要だ。横断的な課題である「定員、定数管理」について現状をどう認識しているか。

(6) 福利厚生施策の充実について
 ハラスメントのない職場づくりも喫緊の課題だ。とりわけ、パワー・ハラスメントについては、本年6月から職場におけるパワー・ハラスメント防止措置を取ることが義務づけられる。公務においても、民間に遅れることのないように、政府全体で取組をすすめる必要があると考えるが、認識如何。

(7) 公務員制度改革について
 引き続き、国家公務員制度改革基本法の自律的労使関係制度を確立することが課題であり、われわれと十分に話し合いながら検討を進めるよう求めておく。

 これらに対して、稲山内閣審議官から次の通り回答があった。

(1) 働き方改革にかかわる非常勤職員の関係については、冒頭の回答と重複するが、内閣人事局において平成28年に常勤職員と類似の職務を行う非常勤職員を対象に行った処遇実態調査では、期末・勤勉手当の支給率は2〜3割であった。実態調査の結果も踏まえ、非常勤職員の処遇改善を段階的にはかることを平成29年に各府省間で申合せを行い、その申合せに沿って各府省で取組を行った結果、平成30年度には約5万8千人の非常勤職員のうち、9割を超える非常勤職員に対して期末手当・勤勉手当が支給されており、着実に改善がすすんでいる。引き続き、各府省との申合せ等に沿って、各府省が処遇改善にしっかりと取り組んでいくことが重要と考えており、そのために必要な働きかけをすすめてまいりたい。

(2) 高齢者雇用施策の充実にかかわる定員・定数管理については、一般論ではあるが、厳しい財政状況のもと、国民のニーズを踏まえ、機構・定員管理に関する方針に沿って既存の業務見直しに積極的に取り組みながら、定員の再配置を推進し、内閣の重要政策に的確に対応できる体制の構築を図る考え方のもと、各省からの要求内容を精査し、必要な対応がなされていると認識している。内閣人事局においては、高齢職員の活躍の場の拡大及びワークライフバランス推進など、出来る工夫をおこなっている。

(3) ハラスメントの防止、特にパワー・ハラスメントの防止については、平成28年度から国家公務員健康増進法基本計画に基づき、管理職員、課長補佐および係長等への昇任時に、受講を必修化するなど、ハラスメント防止のための研修の強化をはかっており、内閣人事局としても取組を補完するため、eラーニング形式によるハラスメント防止講習を提供している。ハラスメント防止対策については、民間におけるパワー・ハラスメント防止の法制化に伴い、国家公務員についても人事院において、パワー・ハラスメント防止に関する人事院規則等を制定する予定であり、この規則等に基づき、各府省、人事院において取組を行うことと承知している。内閣人事局としては、人事院規則等の内容を踏まえ、関係機関とも連携しながら、公務におけるパワー・ハラスメント防止対策について確実に対応していきたいと考えている。

 最後に、森永副事務局長は、「本日の回答は、現時点における内閣人事局の考え方と受け止める。指摘した様々な課題について、内閣人事局としてリーダーシップを発揮して取り組まれているのか判然としない。われわれもこれまで以上に職場実態を踏まえて建設的な議論をしていくが、次回の統括官との交渉では、是非、具体的で前向きな回答を求めておく」と強く要請し、交渉を終えた。

以上