2020年度公務労協情報 14 2020年3月13日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

2020年春季要求で人事院の職員福祉局長、給与局長と書記長クラスが交渉-3/12


 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3月12日17時から人事院職員福祉局長、17時30分から給与局長との交渉を実施し、2020年春季要求に対する現段階における回答を引き出した。
 この日に行われた交渉経過は次のとおり。

<職員福祉局長交渉の経過>
 冒頭、吉澤事務局長が新型コロナウイルス感染症対策との関係から、先般の局長通知(休暇等の取扱い)を評価する一方、今後も事態の動向に応じて、臨機応変に対応をはかるよう要請した。その上で、現時点における回答を求めたのに対し、合田職員福祉局長は以下のとおり答えた。

1.労働時間の短縮、休暇等について
 長時間労働の是正については、昨年2月、人事院規則を改正し、超過勤務命令を行うことができる時間の上限について、原則として1箇月について45時間かつ1年について360時間などと設定して、昨年4月から施行している。
 他律的業務の比重が高い部署の範囲や、どのような業務が上限を超えて超過勤務を命ずることができる特例業務に該当するかの判断について、人事院が主な府省における制度の運用状況を聴取したところ、各府省においては、制度の趣旨に沿った運用が行われていると認められたところである。各府省において、上限を超えて超過勤務を命ぜられた者がいた場合には、その要因について整理、分析及び検証が行われることとなる。
 勤務時間管理については、超過勤務の運用の適正を図るため、課室長等による超過勤務予定の事前確認や、所要見込時間と異なる場合の課室長等への事後報告を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は、課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできる旨を職員福祉局長通知で規定したところである。
 公務における長時間労働の是正については重要な課題であり、政府全体で連携して取り組んでいくことが必要である。人事院としても、今後、検証等の結果も含め、制度の運用状況についてフォローアップを行い、必要に応じて各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしてまいりたい。
 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
 また、両立支援制度の活用については、平成30年3月に発出した「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の内容が各府省において徹底されるよう更なる周知に取り組んでまいりたい。

2.非常勤職員等の休暇について
 非常勤職員の休暇制度については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮して必要な措置を行っており、昨年1月より結婚休暇の新設、忌引休暇の取得要件の改善を行い、また、本年1月より夏季休暇を新設する措置を行ったところである。
 今後も引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

3.障害者雇用について
 障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
 さらに、平成30年度及び令和元年度に障害者選考試験を実施するなどしているところである。
 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

4.健康・安全の確保等について
 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しており、これまでも「こころの健康相談室」の運営、「試し出勤」の活用、「ストレスチェック制度」の導入など様々な取組を進めてきている。心の健康の問題による長期病休者のうち3人に1人は再発者であることを踏まえ、職員が円滑に職場復帰できるよう、「試し出勤」の活用等を引き続き促してまいりたい。
 新型コロナウイルス感染症対策については、出勤することが著しく困難であると認められる場合の休暇に関する職員福祉局長通知の発出、時差出勤に係る休憩時間の特例に関する事務総長通知の発出などの対応を行ってきたところであり、今後とも問題意識を持って事態を注視し、必要に応じて対応を検討してまいりたい。

5.パワー・ハラスメントの防止対策について
 パワー・ハラスメント防止対策については、「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」の報告書を踏まえ、パワー・ハラスメントの防止、救済等の措置を講じるため、新たな人事院規則を制定等することとしている。
 新たな人事院規則においては、人事院の責務、各省各庁の長の責務、職員の責務、研修、苦情相談への対応等を規定することとしている。規則では、パワー・ハラスメントをしてはならないことを職員の責務として定めることとしている。また、各省各庁の長には、行為者が被害者と同一府省庁の職員である場合のみならず、他府省庁の職員である場合も、行為者の属する府省庁の長と連携して被害者の救済、行為者への対応に当たる義務を課すとともに、行為者が一般職国家公務員以外の者である場合も、被害者たる職員を守る義務を課すこととしている。
 さらに、既存の人事院規則10−10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)及び人事院規則10−15(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等)についても、今般、パワー・ハラスメントについて職員にパワー・ハラスメントをしてはならないと規定することを踏まえ、従前、職員の責務について「ハラスメントをしないよう注意しなければならない」としていたものを「ハラスメントをしてはならない」に改めるとともに、行為者が他府省庁の職員である場合に連携して対応する義務についても明示することとしている。
 これらの規則等の施行に向けて、各府省に対して規則、通達等について説明を行い、各府省において、規則等に従ってパワー・ハラスメント防止に取り組まれるよう、指導してまいりたい。また、新たな研修教材を作成するなどして、積極的に各府省の取組を支援してまいりたい。
 パワー・ハラスメントを受けた職員の救済については、各府省において相談体制を整備し、各府省の相談員が相談者の心情に配慮した適切な対応ができるよう、人事院として、相談対応の指針を示すとともに、相談員セミナーを開催するなど、相談員の能力向上を支援してまいりたい。
 さらに、職員の救済においては、人事院が果たすべき役割も重要と認識している。職員から受けたパワ−・ハラスメント関係の苦情相談については、本院、地方事務局(所)とで連携し、迅速かつ適切な解決を図っていくこととしている。また、公平審査の早期解決に引き続き取り組むなどして、人事院の役割を果たすためあらゆる方策を講じてまいりたい。

 回答に対し、吉澤事務局長は以下のとおり、職員福祉局長の見解を質した。

(1) 昨年の人事管理報告においては、「他律的業務の運用状況を把握し、必要に応じて各府省を指導する」としており、これを踏まえた結果、「各府省において制度の趣旨に沿った運用が行われている」との回答は極めて疑問だ。

(2) 異例である新型コロナウイルス感染症対策は、特例業務となることが考えられるが、この1年間をしっかりと検証して、人事院の役割を改めて果たすことを求める。この件については然るべき時期に引き続き議論するが如何。

(3) 常勤職員との均等待遇の観点から、非常勤職員の休暇制度等について有給化すべきだ。民間における動向を踏まえつつも、常勤職員との均衡の観点から、どうあるべきか検証すべきである。

(4) パワハラ防止検討会報告を評価する。その上で、課題は苦情解決をどのように民間の紛争処理と同等の機能をもたせるかである。各府省及び人事院の人的・体制的問題と考えるが、認識は如何。

(5) パワハラ対策における苦情相談、紛争解決のためには、国公法における人事院の調査権を行使するなども検討するべき。

 これに対し、合田職員福祉局長は次のとおり回答した。

(1) 他律的な業務の比重が高い部署の指定について、同じような業務をしているはずが、府省間で異なる場合がある。一部の省庁では、4月1日時点で、他律的業務に関する部署の指定手続きが間に合わずに追って指定したところ、あるいは指定する区分について課単位で指定するなど、割と大括りの指定をしているところがあり、課題があると考えている。
 行政を取り巻く課題が山積するなか、一部省庁では昨年の秋の段階のヒアリングにおいて、上限時間をかなりの時間を超えているという職員もおり、当該省庁においては、超過勤務の縮減という問題意識はありつつも、超過勤務を避けられない行政課題であるというのも確かなところ。基本的には、超勤縮減の認識なり、上限時間の枠内に収めるという意識自体は、各省は持っていると認識している。

(2) ここ1、2ヶ月の間に新型コロナウイルス感染症対策やWHOによるパンデミック宣言など、こうした状況の中で、非常に長い時間働いている職員がいるのも事実であり、それ自体が公務として避けて通れない中でも、長い時間働くことになる場合には健康管理などについてもしっかりと対応して頂く必要があると考えている。各府省の実態については、人事院としても把握し、必要な指導を行うとともに、引き続き議論をしていく。

(3) 本年4月から施行される同一労働同一賃金を踏まえた民間の動向を注視していく。

(4) 検討会報告のなかでも、有識者委員から、実際、ハラスメントの相談を受ける人はそれなりにスキルが必要だろうということは指摘されている。各府省の相談体制の整備について、人事院として各府省の相談員の能力を高めるための研修や、具体的な対応についての指針その他を提供していくことが大事だと考えている。
 また、人事院においても、本院と地方事務局・事務所が連携をとり、相談に対して、迅速適切に対応していく。

(5) 人事院が果たす役割が重要だと認識しているが、相談体制をしっかりと対応していきたい。引き続き、協議を続けていく。

 最後に、吉澤事務局長から「本日の議論も含めて、18日には、要求に沿った積極的な回答を求める」と強く要請し、職員福祉局長交渉を締めくくった。


<給与局長交渉の経過>
 松尾給与局長との交渉は、17時30分から行われた。
 吉澤事務局長が、現時点での回答を求めたのに対し、松尾局長は以下のとおり答えた。

1.賃金要求について
 最近の経済情勢についてみると、2月の月例経済報告は、景気は「緩やかに回復している」と基調判断を維持したものの、先行きについては、「緩やかな回復が続くことが期待されるが、新型コロナウイルス感染症が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある」等としているところ。また、1月の景気動向指数の速報においては、「悪化を示している」との基調判断を示しており、今後の景気の動向を注視している。
 次に雇用情勢についてみると、本年1月の有効求人倍率は1.49倍、また、完全失業率は2.4%であり、昨年から横ばい状態が続いている。
 今年の春闘については、連合は、賃上げ要求について「社会全体に賃上げを促す観点とそれぞれの産業全体の『底上げ』『底支え』『格差是正』に寄与する取り組みを強化する観点から、2%程度とし、定期昇給分(定昇維持相当分)を含め4%程度とする。」としているものと承知している。
 一方、経団連は、本年1月21日に発表した「経営労働政策特別委員会報告」において、「賃金引上げへの社会的な期待も考慮しつつ、賃金引上げのモメンタムの維持に向けて、各社一律ではなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことが基本」とした上で、「『基本給』『諸手当』『賞与・一時金』の3つを柱に据えながら、各企業において、多種多様な方法による組み合わせを含めて議論していくことが望まれる。」としているところである。
 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う企業活動の停滞など、経済情勢が、特にここ1週間程度、一層不透明感を増す中で、言うまでもなく先刻ご承知と思いますが、昨日行われた春闘の大手集中回答もかなり厳しいものとなっており、今後我々としても順次行われる経営側からの回答の動向を注視していくこととしている。
 いずれにしても国家公務員の給与について、人事院としては例年と同様、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行ってまいりたい。

2.非常勤職員の給与について
 非常勤職員の給与については、平成29年7月に、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなどの非常勤職員の給与に関する指針(平成20年8月発出)の改正を行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。

3.高齢期雇用施策について
 定年の引上げについて
 人事院としては、意見の申出に至る過程での各府省及び職員団体の皆さんの意見も踏まえ、定年の引上げの実現に向け各施策の必要性等の理解の促進に一層努めるとともに、政府における検討に際して、これまでの検討結果に基づき必要な協力を行うこと等を通じて、必要な法律改正が早急に行われるよう、人事院として、その責任を適切に果たしてまいりたい。
 再任用職員制度について
 再任用職員の給与については、これまでも適時見直しを行ってきており、引き続き民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。

 回答に対し、吉澤事務局長は以下のとおり、賃金要求、諸手当について給与局長の見解を質した。

(1) 官民給与の比較方法・企業規模については、変更がないこということでよいか。

(2) 民間との初任給の較差について、現時点での認識如何。

(3) 配分について、今年は格差が厳しいことを想定せざるを得ないことからも、前広な議論を求める。

(4) 昨年は住居手当が見直されたが、現時点で見直しを予定している手当はあるか。

(5) 新型コロナウイルス対応にあたって、現場で昼夜を問わず奮闘し、作業に従事している職員に対し、特殊勤務手当を改善すべきではないか。

 これに対し、松尾給与局長は次のとおり回答した。

(1) 本年の民間給与実態調査は現行どおりで予定している。

(2) 優秀な人材を確保する必要性は官民を問わないものだが、全体が見えない中で、確定的なことを申し上げることはできない。

(3) 職員団体の皆さんのご意見も伺いながら対応したい。

(4) 現段階で見直しを予定している手当はない。

(5) 新型コロナウイルス感染症にかかわる特勤手当、いわゆる防疫等作業手当の特例措置について、緊急に事態が生じたこともあり、関係各府省と調整しつつ、検討を進めてきた。今日のこの場で示す予定の内容が、先に報道されたことは遺憾である。
 特例措置の内容は、新型コロナウイルス感染症に関して、防疫等作業手当の特例措置として、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の内部で乗客等への対応に当たった職員等を対象に、作業1日当たり3千円、そのうち、患者や感染の疑いのある者の体に直接接触する作業や、長時間にわたり接して行う作業に従事した場合は、1日当たり4千円を支給することとしている。4月の給与で支給できるよう、3月18日の人事院規則の交付・施行を予定しているところである。

次に、吉澤事務局長は以下のとおり、非常勤職員の待遇について、給与局長の見解を質した。

(1) 昨年の人事管理報告において、「常勤職員の給与との権衡をより確保」と指摘があったが、「より」とは常勤との権衡が不十分であるという認識か。

(2) 期末・勤勉手当の支給月数について、各府省統一の水準で支給すべきではないか。常勤は統一されているのに、非常勤職員は各府省で異なるというのは不合理である。

 これに対し、松尾給与局長は次のとおり回答した。

(1) 非常勤職員の処遇改善については、引き続き非常勤職員の給与に関する指針のもと、対応を徹底するという観点での、「権衡をより確保」ということである。

(2) 非常勤職員の給与については各府省の予算の範囲内で支給されており、バラツキがあることはやむを得ないと考えている。ご指摘の点は重々承知しているが、一律に支給月数を統一することは難しいと認識している。引き続き、民間の取組状況を注視しながら、検討してまいりたい。

 続いて、吉澤事務局長は定年の引上げに関する国公法等の改正法案について、人事院の見解を質した。

(1) 本日、内閣人事局との最終的な交渉を行ってきた。法案が提出されるが、われわれも早期の審議採決、可決成立にむけて取り組むが、人事院の役割も極めて大きい。国公法の早期成立に向けた対応を求める。

(2) 附則・検討条項の修正は遺憾であるが、給与等の取扱いは、人事院が主体的、独立した検討に基づくものであり、一切の政府あるいは国会の圧力によることのないものという認識でよいか。また、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づく対応を求める。

(3) 定年前再任用短時間の給与は、現行の再任用短時間と同じということだが、不合理ではないか。60歳超職員の7割に対する時間比例とすべきであるが、人事院の認識如何。

(4) 高齢職員の活用を目的とする今回の定年引上げについて、現在の再任用職員も当然に対象であることからすれば、再任用職員の給与を抜本的に見直すべきでないか。

 これに対し、松尾局長は下記のとおり答えた。

(1) 人事院としても定年延長の早期実現にむけ、必要な努力をしてまいりたい。

(2) 附則で定めている給与等の関係については、労働基本権制約の代償機関である人事院の責任において検討を進めていくものである。現時点では具体的な見直し内容が決まっているわけではないが、検討の際には職員団体の皆さまのご意見もしっかりと伺いながら検討してまいりたい。

(3) 定年前再任用短時間勤務は、あくまで一度退職し、再度選考によって再任用される職員であり、給与制度についても現行の再任用職員と同様とするのが適当という考え方である。

(4) 再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、平成27年4月から単身赴任手当を支給することとするなど、見直しを行ってきたところであり、今後とも、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、職員団体の意見も伺いながら、必要な検討を行ってまいりたい。

 その後、交渉委員からは、再任用職員の生活関連手当・特地勤務手当等の改善についての意見・要望が出され、勧告期における議論の継続を松尾局長は了承した。
 最後に、吉澤事務局長から「18日の総裁回答がわれわれの要求内容に則した内容となるよう、積極的な回答を求める」と要請し、給与局長交渉を締めくくった。

以上