公務員連絡会は11月28日、人事院、内閣人事局に対して「2020年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ(資料1、2参照)」を提出した。公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が交渉に臨み、誠意ある回答を示すよう求めた。
それぞれの交渉経過は次の通り。
<内閣人事局との交渉経過>
内閣人事局への提出交渉は、13時30分から行われ、内閣人事局からは稲山内閣審議官らが対応した。
要求提出にあたり、森永副事務局長は、基本要求を次の通り説明した。
(1) 1の雇用と賃金・労働条件については、第1に、2009年に制定され、今年で10年が経過した公共サービス基本法に基づいて、臨時・非常勤職員を含めたすべての公務員をはじめ、公共サービス従事者に、社会的に公正な賃金・労働条件を確保するとともに、必要な人件費予 算等の財源を確保すること。また、すべての課題に直結するのが定員問題、使用者として必要な定員を確実に確保すること。
第2に、2020年度の人事院勧告・報告への対応に向けても、われわれと十分交渉・協議を行って、職員の賃金引き上げをめざすことを求める。その際、公務員給与について社会的な合意を確立すべく、公務員の人事行政に責任を持つ内閣人事局の役割を果たすこと。
(2) 2の労働時間、休暇・休業等については、改正人事院規則等のもと、超過勤務の縮減に向けて各職場で取組が進められている。長時間労働の是正は最重要課題であり、職員の健康確保の観点からも、客観的で厳格な勤務時間管理が必須である。引き続き、公務員連絡会として も各職場の労使関係の中で取組を進めていくが、超勤縮減に向けた政府の本気度が問われているとの自覚をもって必要な対策を講じるよう求める。
第2に、男性国家公務員の育休等取得促進については、今後、内閣人事局において具体的な方策の検討が進められると承知しているが、公務員連絡会との協議を踏まえて対応すること。
(3) 3の女性公務員の労働権の確立については、性別や世代等を超えて働きやすい職場を実現することが基本であり、内閣人事局としても使用者としての責務をしっかりと果たすこと。また、様々な取組みについて、フォローアップも実施されているところであるが、数値目標の みにこだわりすぎることのないように個々のおかれている環境や職場実態に応じた施策の推進を求める。
(4) 4の福利厚生関係については、ハラスメントは官民問わず解決すべき喫緊の課題である。あらゆるハラスメントが職場からなくなるように、一層有効な対策を着実に推進するとともに、とくにパワー・ハラスメントの防止対策については、民間の取組に遅れることなく政府を あげて取り組むこと。
(5) 5の人事評価制度については、評価者と被評価者の信頼関係、コミュニケーションが取れていることが前提である。公平・公正な人事評価制度の運用に向けて、職場の実態を踏まえた適切な措置を講じること。
(6) 6の雇用と年金の接続については、定年の引上げについては、昨年の人事院の意見の申出からすでに1年以上が経過している。着実かつ確実な早期実施の具体化に向けて、公務員連絡会と十分な交渉・協議、合意に基づく対応を改めて強く求めておく。なお、定年引上げ実現 までの間は、職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員の確保をはかること。
(7) 7の非常勤職員の待遇改善については、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進することが、官民共通の課題であることから、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保に向けた予算の確保等について、政府の責任において措置するこ と。
(8) 8の障害者雇用については、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、政府としての役割を適切に果たすこと。
(9) 9の公務員制度改革については、引き続き、国家公務員制度改革基本法の自律的労使関係制度を確立することが課題であり、われわれと十分に話し合いながら検討を進めること。
(10) 10の転居を伴う異動に関わる職員の負担については、人事異動の際、転居を伴う異動となった場合に、引っ越し業者の繁忙期と時期が重なるなどして、日程の確保が困難なケースや確保できても料金が通常期と比して高騰しているなど、職員に過重な負担となっている現状 があることを踏まえ、人事異動に伴う職員の負担軽減をはかるため、移転料の見直しなど必要な施策を講じるよう政府全体で取り組むこと。
続けて、交渉委員から職場実態に基づき、定員の確保、転居を伴う異動による職員の自己負担分が増大している現状を訴え、改善を求めた。
これらに対して、稲山内閣審議官は「要求の趣旨は承った。要求事項は多岐にわたっているため、検討させていただいた上で、しかるべき時期に回答を行いたい」と回答した。
最後に、森永副事務局長は「内閣人事局におかれては、職場の実態を十分に把握し、課題の解決に向けて、公務員の人事行政に責任を持つ中央人事行政機関としての機能を発揮していただきたい。12月には、誠意ある回答を求める」と要請し、この日の交渉を終えた。
<人事院との交渉経過>
人事院への提出交渉は、15時から行われ、人事院からは練合職員団体審議官、好岡職員団体審議官付参事官が対応した。
要求提出にあたり、森永副事務局長が、基本要求を次の通り説明した。
(1) 一の給与関係については、大きく3つの課題がある。第1に、経済情勢については、先行きの不透明感が強くなるのではないかと認識しているが、2020年も継続的な賃上げ、毎年賃金が上がることが当たり前の社会の実現が官民共通の課題であり、人事院としても、その職 責をしっかりと果たすこと。
第2に、官民比較方法については、現在の方法を当面堅持して、ラスパイレス比較を原則とした精確な民調を行うこと。なお、2020年度の給与勧告においては、初任給をはじめ公務員の賃金水準を引き上げること。
第3に、諸手当については、本年の勧告で、この間の継続課題となっていた住居手当について見直しが行われた。基本要求の提出に当たっては個別の手当についての言及はしないが、社会経済情勢の変化や職員の職務や生活実態を踏まえて検討すること。
(2) 二の労働時間、休暇・休業等については、改正人事院規則等のもと、超過勤務の縮減に向けて各職場で取組が進められている。長時間労働の是正は最重要課題であり、職員の健康管理の観点からも、客観的で厳格な勤務時間管理が必須である。公務員連絡会としても各職場の 労使関係の中で取組を進めていくが、引き続き、人事院の責任において、各省各庁の実態を適時適確に把握し、適切かつ必要に応じて強力な指導助言を行うこと。
(3) 三の女性公務員の労働権の確立については、性別や世代等を超えて働きやすい職場を実現することが基本であり、人事院としても積極的に役割を果たしていただきたい。
(4) 四の福利厚生等関係については、いわゆるメンタルヘルスを要因とした長期病休者の現状は、人事院白書によれば、2017年度で3,841人、職員の1.39%となっており、高止まりしている傾向が改善されていない。職員の心の健康づくりについて着実に取組を進めることが必要 だ。あらゆるハラスメントが職場からなくなるように、一層有効な対策を着実に推進するよう求める。とくに、パワー・ハラスメントの防止対策については、現在、人事院の検討会において議論が進められているが、厚労省の労政審において、パワハラの判断基準を示した「指 針」が20日にとりまとめられ、民間では来年6月1日から適用される予定と承知している。公務においても、民間に遅れることのないように、検討会におけるヒアリングの際にも主張した要求内容を踏まえ、公務員連絡会との交渉・協議に基づいて措置すること。
(5) 五の人事評価制度については、評価者と被評価者の信頼関係、コミュニケーションが取れていることが前提である。そのためには、パワー・ハラスメントの防止対策などをはじめとした職員の勤務環境のさらなる改善に向けて努力すること。
(6) 六の雇用と年金の接続については、「意見の申出」から既に1年以上が経過するもと、着実かつ確実な早期実施に向けて、人事院としての責任を果たすこと。再任用職員の給与制度については、期末・勤勉手当や生活関連手当などの改善に向けて、公務員連絡会と交渉・協議 を行うこと。
(7) 七の非常勤職員関係については、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進するとともに、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保をはかること。本年の公務員人事管理に関する報告において、非常勤職員への夏季休暇を新設すること とされたが、このことは待遇改善の一歩であると評価する。今後は、非常勤職員の休暇制度の改善に向けて、とくに無給休暇の有給化をはかるなど、常勤職員との違いについて合理的な説明ができない事項の是正に向けて公務員連絡会と協議すること。
(8) 八の障害者雇用については、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、職員の勤務環境の整備に向けて、人事院としての役割を適切に果たすこと。
申入れに対し、練合審議官は「本日の要求については承った。十分検討の上、然るべき時期に回答させていただく。本日は、いくつかの点について現時点でのコメントを申し上げる」として、現時点での見解を次のように示した。
(1) 賃金に関わる要求について
民間企業においては、製造業を中心に業況判断の先行きが不透明となっており、人事院としても、今後の景気や賃金の動向を注視していきたいと考えている。いずれにしても、月例給、一時金ともに、今後とも情勢適応の原則に基づき適正な給与水準を確保すべく、職員団体の 意見も聴きながら適切に対処していくということが基本となる。
なお、一時金に係るラスパイレス比較については、民間給与実態調査において、個人別に年2回の一時金の額を月例給に加えて調べることが必要となるが、民間企業の負担等を考えると困難と考える。
(2) 労働時間、休暇及び休業等に関わる要求について
超過勤務の上限規制については、勧告時報告でも言及したとおり、他律的業務の比重が高い部署の範囲などの各府省における制度の運用状況を把握し、必要に応じて各府省を指導していきたい。
(3) 女性公務員の労働権確立に関わる要求について
女性の活躍の推進については、人事行政における重要な施策の一つとして、男女ともに働きやすい勤務環境の整備や、女性国家公務員の採用・登用の拡大を積極的に進めてきているところである。
引き続き、両立支援策の一層の活用を促進するとともに、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修等を通じて各府省の取組を支援していく。
(4) 福利厚生施策等に関わる要求について
パワーハラスメントの防止対策については、現在検討会において鋭意検討しているところであり、今回の要求について確実に担当に伝えるとともに、新たな措置案について、職員団体の意見を聴く機会も当然設けていきたい。
(5)非常勤職員制度等に関わる要求について
非常勤職員の給与については、引き続き指針に基づき、常勤職員の給与との権衡を確保し得るよう取り組んでいきたい。非常勤職員の休暇については、勧告時報告でも言及したとおり、夏季休暇を新設する予定である。
続いて、各交渉委員が職場実態に基づき、消費税増税等に伴う通勤手当の課題、夏季休暇の取得可能期間の弾力的な対応を求めた。
最後に森永副事務局長が「労働基本権制約の代償措置としての人事院の役割を着実に発揮していただきたい。また、職場で起きている現実を直視し、各省を適時適切に指導するなど人事院としての責務をしっかりと果たしていただきたい。12月には、誠意ある回答を求める」と要請し、この日の交渉を終えた。
資料1.内閣人事局への基本要求書
2019年11月28日
内閣総理大臣
安 倍 晋 三 様
公務員労働組合連絡会
議長 柴 山 好 憲
2020年度賃金・労働条件に関わる基本要求について
近年頻発する大規模な自然災害からの復旧・復興をはじめとして、公務公共サービスが果たすべき役割は大きくなっています。このような中、職員は、国民の安心・安全を支えるため、日夜自らの職務遂行に邁進していますが、職場では、働き方改革に伴う超勤縮減への対応が問われるもと、長時間労働が慢性化し、長期病休者も少なくないなど、厳しい労働条件、勤務環境におかれています。
一方で、日本経済は、米中貿易摩擦の先鋭化、英国のEU離脱問題、世界的な金融緩和競争などをはじめとした海外経済の変調、本年10月の消費税率引き上げの影響なども要因として、今後の見通しは極めて不透明な状況にあります。
また、国民生活を支える基盤である公務公共サービスを維持・確保するために不可欠な財政再建問題についても、先行きの見通しが立っていない状況にあります。
わが国はすでに超少子高齢社会・人口減少社会に突入しているなかにあり、労働力不足が経済に与える影響を考えたとき、官民問わず「働き方」を見直すことが社会全体の共通課題となっています。良質な公共サービスを確実に提供していくためには、人材確保の観点も含め、職員の適正な賃金・労働条件と人員の確保が不可欠です。その意味で、公務員の人事行政に責任を持つ中央人事行政機関として、内閣人事局がその役割を十全に果たすことが求められています。
貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。
記
1.雇用と賃金・労働条件について
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、臨時・非常勤職員を含めたすべての公務員及び公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保すること。
(2) 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保することとし、職員のゆとり・豊かな生活を保障すること。2020年度においては、生活水準を維持・改善するため、人事院勧告の取扱いを含めて、公務員連絡会との交渉・協議に基づき職員の賃金水準を引 き上げること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(3) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。
2.労働時間、休暇及び休業等について
ワーク・ライフ・バランスを実現するため、公務職場における「働き方改革」等を次の通り進めること。
(1) 公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、使用者の責務としてICT等を活用した客観的で厳格な勤務時間管理を直ちに実施し、職員の勤務状況の把握に努めること。あわせて、各府省における取組状況を把握し、必要な措置を講じること。
(3)改正人事院規則等を踏まえ、各府省における「他律的業務の比重の高い部署の指定」の統一性の確保や上限規制の特例業務の厳格化を含むより実効性のある超過勤務縮減策を直ちに実施すること。
(4) 公務における本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(5) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
(6)「男性国家公務員の育休等取得促進」についての具体的な方策等の検討に当たって は、公務員連絡会との協議を踏まえて対応すること。
3.女性公務員の労働権確立について
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、政府全体として積極的に取り組むこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実施に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 女性の採用・登用・職域拡大、メンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組を着実に実施すること。
4.福利厚生施策等について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員健康増進等基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。
(3) 心の健康づくりについては、引き続きストレス原因の追究と管理職員の意識改革に努めることとし、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4)2020年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(5) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(6) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に推進すること。なお、パワー・ハラスメントの防止対策については、民間の取組に遅れることのないよう政府全体で取り組むこと。
5.人事評価制度について
人事評価制度について、円滑に運用されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底等に努めること。
6.雇用と年金の接続について
(1) 定年の引上げについては、人事院の意見の申出を踏まえ、公務運営を確保する観点からも着実かつ確実な早期実施の具体化に向けて、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて対応すること。
(2) 定年引上げ実現までの間は、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを中心とする職員の希望通りの再任用を実現すること。
(3) 事務・事業の円滑な遂行とディーセントワークを保障するとともに、当面、職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員を確保するとともに、定員の弾力的な取扱いなどについて公務員連絡会と協議すること。
7.非常勤職員制度等について
非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進するとともに、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保をはかるため、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員制度について、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組を推進すること。
(2) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(3) 「非常勤職員給与決定指針」等に基づき、予算の確保など必要な措置を講じること。また、非常勤職員の給与改定について、政府全体として統一的に対応することとし、常勤職員と同様に措置すること。
(4) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
8.障害者雇用について
公務職場における障害者雇用について、関係閣僚会議において決定された取組の実現に向け、障害者に寄り添った職場環境の整備や職員に対する理解の促進をはかり、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、政府としての役割を適切に果たすこと。
9.公務員制度改革について
ILO勧告に則り、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員制度改革関連四法案(2011年6月3日国会提出)における措置について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議 院内閣委員会)に基づく、公務員連絡会との合意により実現すること。
10.転居を伴う異動に関わる職員の負担について
転居を伴う異動について、移転料等経費が高騰していることを踏まえ、実態に即した見直しなど必要な施策を講じること。
11.その他
国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。
以上
資料2.人事院への基本要求書
2019年11月28日
人事院総裁
一宮 なほみ 様
公務員労働組合連絡会
議長 柴 山 好 憲
2020年度賃金・労働条件に関わる基本要求について
近年頻発する大規模な自然災害からの復旧・復興をはじめとして、公務公共サービスが果たすべき役割は大きくなっています。このような中、職員は、国民の安心・安全を支えるため、日夜自らの職務遂行に邁進していますが、職場では、働き方改革に伴う超勤縮減への対応が問われるもと、長時間労働が慢性化し、長期病休者も少なくないなど、厳しい労働条件、勤務環境におかれています。
一方で、日本経済は、米中貿易摩擦の先鋭化、英国のEU離脱問題、世界的な金融緩和競争などをはじめとした海外経済の変調、本年10月の消費税率引き上げの影響なども要因として、今後の見通しは極めて不透明な状況にあります。
また、国民生活を支える基盤である公務公共サービスを維持・確保するために不可欠な財政再建問題についても、先行きの見通しが立っていない状況にあります。
わが国はすでに超少子高齢社会・人口減少社会に突入しているなかにあり、労働力不足が経済に与える影響を考えたとき、官民問わず「働き方」を見直すことが社会全体の共通課題となっています。良質な公共サービスを確実に提供していくためには、人材確保の観点も含め、職員の適正な賃金・労働条件と人員の確保が不可欠です。その意味で、人事院が、労働基本権制約の代償機関であることを含め職員の利益保護の役割を十全に果たすことが求められています。
貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。
記
一、賃金に関わる事項
1.給与水準及び配分等について
(1) 給与水準の確保
@ 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保することとし、職員のゆとり・豊かな生活を保障すること。
2020年度の給与勧告においては、生活水準を維持・改善するため、初任給をはじめ公務員の賃金水準を引き上げること。
A 期末・勤勉手当については、民間実態を精確に把握し、支給月数を引き上げること。
(2) 公正・公平な配分
配分については、別途人事院勧告期に提出する要求も含め、公務員連絡会と十分交渉し、合意に基づき行うこと。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
当面、現行の比較企業規模を堅持することとし、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
2.諸手当について
(1) 諸手当について、社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえて改善することとし、公務員連絡会と十分、交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた引上げを行うこと。なお、超過勤務手当については、全額支給すること。
二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
ワークライフバランスを実現するため、公務職場における「働き方改革」等を次の通り進めること。
1.年間労働時間の着実な短縮について
公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 使用者の責務としてICT等を活用した客観的で厳格な勤務時間管理を直ちに行うよう措置すること。また、本府省における在庁時間削減の取組についても、人事院として積極的役割を果たすこと。
(2) 改正人事院規則等を踏まえた超過勤務の上限規制については、他律的業務の区分及び上限時間を超えることのできる「上限時間の特例」業務の厳格な適用について、適時適確に実態把握を行うとともに、各府省に対して適切かつ強力な指導助言を行うなど人事院としての責務を果たすこと。
2.休暇・休業制度の拡充等について
ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などについて、次の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇を新設すること。
(3) 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
(4) 不妊治療のための休暇を新設すること。
(5) 育児や介護に関わる両立支援制度の円滑な活用を図るとともに、育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和し、その在り方を改善すること。
(6) 必要な休暇・休業制度が、非常勤職員を含め、男女ともにより活用できるよう、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(7) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。
3.勤務時間制度等の見直しについて
(1) 公務における本格的な短時間勤務制度の導入に向けて、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(2) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
三、女性公務員の労働権確立に関わる事項
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、人事院としての役割を果たすこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 女性の労働権確立にむけ、女性が働き続けるための職場環境の整備に努め、女性の採用・登用・職域拡大を図るとともに、メンター制度の実効性を確保すること。
四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3)「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。
(4) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に実施すること。なお、パワー・ハラスメントの防止対策については、「検討会」での議論も踏まえ、民間の取組に遅れることのないよう、公務員連絡会との交渉・協議に基づき措置すること。特に、@パワハラの定義に ついては、少なくとも民間と同等のものとすること、A公務の特殊性である政治、国民や住民と向き合う上でのカスタマーハラスメントについても検討すること、B民間法で措置される紛争解決機能と同等の措置を講じるとともに、その際、迅速・簡易、納得性、プライバシー の確保を具備したものとすること。
五、人事評価制度に関わる事項
中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、人事評価制度の実施及び評価結果の活用状況を随時検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。
六、雇用と年金の接続に関わる事項
(1) 「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」の着実かつ確実な早期実施に向けて、人事院としての責任を果たすこと。
(2) 再任用職員の給与制度等については、その経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて進めること。
七、非常勤職員制度等に関わる事項
非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進するとともに、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保をはかるため、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(2) 「非常勤職員給与決定指針」等に基づき、着実な待遇改善が行われるよう各府省を指導すること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(4) 非常勤職員の休暇制度等の改善について、働き方改革の具体化の観点から、常勤職員との間で待遇が異なる制度について総点検を実施し、とくに無給休暇の有給化をはかるなど合理的な説明ができない事項の是正に向け、公務員連絡会と協議すること。
八、障害者雇用に関わる事項
公務職場における障害者雇用について、関係閣僚会議において決定された取組の実現に向け、障害者に寄り添った職場環境の整備や職員に対する研修などを適切に実施し、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、人事院としての役割を適切に果たすこと。
九、その他の事項
公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。
以上