公務員連絡会は12月18日、幹事クラス交渉委員が人事院、内閣人事局との交渉を実施し、2020年度の基本要求に対する回答を引き出した。公務員連絡会は、今回の回答を踏まえて、2020春季生活闘争の取組を進めることとし、基本要求に関わる交渉・協議に区切りを付けることとした。
それぞれの交渉経過は次の通り。
<内閣人事局との交渉経過>
内閣人事局との交渉は14時45分から行われ、内閣人事局は稲山内閣審議官らが対応した。
冒頭、森永副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、稲山審議官は「先月28日に提出のあった「2020年賃金・労働条件に関わる基本要求」について、この時期における回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。
1.雇用と賃金・労働条件について
雇用と賃金・労働条件に関して、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
令和2年度の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
2.労働時間、休暇及び休業等について
労働時間、休暇及び休業等に関して、長時間労働の是正については、平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府一丸となって、
・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や
・業務の見直し・効率化や、部下職員の超過勤務時間見込みの事前把握等、管理職のマネジメント改革による超過勤務の縮減
・テレワークやフレックスタイム制等による働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。
今後とも、働き方改革に積極的に取り組み、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
なお、人事院規則の改正により、本年4月から、超過勤務命令については、原則として、1箇月につき45時間かつ1年について360時間の範囲内で行うこととされたところであり、政府としては、同制度の適切な運用をはかるとともに、その運用状況を見ながら、必要に応じて、適切に対応してまいりたい。
3.女性公務員の労働権確立について
女性公務員の労働権確立に関して、男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍については、平成27年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」等を踏まえ、平成28年1月に改正した「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」や、同年4月に施行された女性活躍推進法等に沿って、取組を進めているところ。
内閣人事局としては、これら取組指針等に基づき、各府省の取組を引き続きフォローアップし、その取組を促進させるようなサポートを行うことにより、職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
4.福利厚生施策等について
福利厚生施策等については、平成28年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
基本計画には数値目標(実施率100%)を導入しているが、このうち、昨年度における管理職員等に対するハラスメント防止等に関する研修の受講率は9割超、ストレスチェックの実施率は100%、要医療該当職員の受診率は7割超、二次健診対象職員の受診率は6割超などとなっている。
引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
5.人事評価制度について
人事評価制度については、各評語が付与される行動の明確化等による評語区分のレベル感の整理・徹底、上位評価及び下位評価を付与する場合の理由の記載の徹底など、評語区分の趣旨の徹底、評価の納得性及び制度への信頼感の向上や、人材育成等への一層の活用として、職員の能力開発やスキルアップ、さらには組織のパフォーマンスの向上につながるように指導・助言を行うための面談手法等、被評価者への指導に役立つ評価者訓練の充実等を図っているところである。
今後とも、皆様とも十分意見交換し、御理解をいただきつつ、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。
6.雇用と年金の接続について
雇用と年金の接続に関して、国家公務員の定年の引上げについては、人事院の意見の申出も踏まえつつ、政府として更なる検討を重ね、結論を得てまいりたいと考えているところであり、その際、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。
なお、定年退職者の再任用については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、政府全体で着実に推進していまいりたい。
7.非常勤職員制度等について
非常勤職員等の雇用、労働条件の改善に関して、非常勤職員の処遇改善については、平成29年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省間で申合せを行っている。この申合せに沿って各府省で取組みを行った結果、期末手当や勤勉手当について、平成28年の内閣人事局の調査では2〜3割弱の支給率であったが、平成30年度においては9割超の非常勤職員に対し支給されており、着実に処遇改善が進んでいる。皆様とも引き続き意見交換を重ねつつ、この申合せに沿った処遇改善が進むよう、必要な取組を進めてまいりたい。
8.障害者雇用について
障害者雇用については、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害者の多様な任用形態の確保、障害者雇用マニュアルの作成などにより、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
また、職場実習の実施や講習会の開催など、各府省における障害者雇用の推進に係る支援等にも努めている。
今後とも、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。
9.公務員制度改革について
公務員制度改革に関して、自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12 条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
10.転居を伴う異動に関わる職員の負担について
転居を伴う異動に関わる職員の負担については、本年3月に各府省に対し、4月期人事異動に伴う引越時期の分散について協力を依頼したところ。引き続き、各府省等に対して必要な検討と協力を求めてまいりたい。
これに対して、公務員連絡会側は次の通り質すとともに重ねて要請を行った。
(1) 給与改定に当たっては、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢との回答であったが、基本権制約のもとでは当然のことだ。公務員連絡会としては、引き続き、国家公務員制度改革基本法12条及び附則2条に基づく自律的労使関係制度の措置を追求しながら、当面は、人事 院勧告制度のもとでの給与・勤務条件決定システムを前提とした取組を進めていく。来年度の給与改定についても、人事院勧告の取扱いを含めて、われわれとの交渉・協議、合意による対応を求めておく。その上で、公務員給与に対する社会的な合意が確固たるものとなるよう、 引き続き、使用者としての丁寧な説明責任を果たすこと。
(2) 長時間労働の是正に向けては、本年4月から改正人事院規則等のもとで超過勤務の縮減に向けて現場での取組が進められている。
公務労協が本年9月に実施した生活実態調査において、本年4月からの超過勤務時間の上限規制がはじまったことに関して「職場の上限時間規制のルールについて知っているか」尋ねたところ、あまり知らない(28.4%)、まったく知らない(7.0%)を合わせると35.4%、と いう結果になった。これが職場の実態ではないか。このことは、組合としても大いに反省をしなければいけない所であり、われわれも現場で更なる努力を重ねていくが、政府としても超過勤務の縮減に向けてあらゆる施策を講じて取り組むこと。
(3) 定年の引上げについては、昨年8月の人事院の意見の申出から既に1年以上が経過している。改めて、事前にわれわれとの十分な交渉・協議、合意に基づいて進めていくことを強く求めておく。
(4) 事務補助職員の非常勤職員は、在職状況統計表によれば、ここ5年ほどで約8千人増えている状況にあり、職場にとって不可欠な存在であることは言うまでもない。
この間の政府内における申し合わせにより、着実に処遇改善が進んでいるとの回答だったが、省庁によって「予算の範囲内」での対応が行われている限り、国に採用される非常勤職員の給与水準等の統一性や公平性は確保されないのではないか。申入れの際の要求項目にも明記 しているが、政府として必要な予算を確保するなど、同一労働同一賃金原則を公務が率先して実現していく立場として、必要な措置を講じることを改めて求めておく。
(5) 公務員制度改革については、遅々として議論が進んでいない。回答では、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があるとのことだったが、引き続きわれわれとの真摯な議論を求めておく。自律的労使関係制度を措置することは政府の責務であり、労働条件に ついては、労使が交渉で決めることが大原則であることを強調しておく。
(6) 障害者雇用については、改めて、障害者に寄り添った職場環境の整備や職員に対する理解の促進に向けて、より丁寧な対応を求めておく。
(7) 転居を伴う異動に関わる職員の負担については、引っ越し時期の分散だけで、課題が解決するとは到底思えない。来年4月の人事異動期まで間もないなかで出来ることは限られてくるだろうが、今後も見据えて、実態を正確に把握し、移転料の見直しも含め、政府全体で必要 な施策を講じるよう改めて求めておく。
これに対し、稲山審議官は次の通り答えた。
(1) 超過勤務の縮減の関係について、国家公務員においてしっかり休んで集中して働き、限られた時間で成果をあげる生産性の高い働き方へ変えていくことが課題と考えている。ワークライフバランス推進強化月間やゆう活をきっかけとした長時間労働を前提とした働き方を改め る意識改革、業務の見直し・効率化、部下職員の超過勤務時間見込みの事前把握、テレワーク等による働き方、働く場所の柔軟化にどう取り組んでいくか、今後とも働き方改革に積極的に取り組んで、すべての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
(2) 平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえると、公務によって培った知識、経験等が豊富な意欲のある高齢期の職員が最大限に活躍していただくことは、有用な意義を有すると考えている。公務員の定年引上げについては人事院の意見の申出も踏まえつつ、政府として更な る検討を重ね結論を得てまいりたい。その際、皆さんも含めた関係者の意見も聞き、進めてまいりたい。
(3) 非常勤職員の関係については、平成29年に各省で申合せを行って、平成30年度から処遇改善について段階的に取組むこととしている。申合せに基づき、すべての非常勤職員に対して期末・勤勉手当が支給されること、また申合せに沿った給与改定がなされることをめざして 進めてまいりたい。
続いて、交渉委員から、定年引上げの早期実現、転居を伴う異動に関わる移転料の見直しについて、改善を求める要望が出された。
最後に、森永副事務局長が「本日の回答については、今後に向けての現時点における内閣人事局としての考え方が示されたものと受け止めておく。引き続き、継続する多くの課題に対する現状認識について、政府とわれわれとの間でこれまで以上に共有しておく必要があることから、様々な場面での協議の場を設けることを求めておく。来年2月には、2020年の春季要求を提出する。常勤・非常勤に関わらず、すべての職員の賃金・労働条件をはじめとする、人事行政全般の改善に向け、引き続き、使用者としての責任において、努力することを強く求めておく」と重ねて要請し、回答交渉を終えた。
<人事院との交渉経過>
人事院との交渉は16時00分から行われ、人事院は練合職員団体審議官、好岡職員団体審議官付参事官が対応した。
冒頭、森永副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、練合審議官は「11月28日に提出のあった「基本要求」については、今後引き続き検討すべき事項が多いが、主な要求事項について、現時点での検討状況等を申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。
一、賃金に関する事項
(1) 給与水準について
公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立った上で、職員団体の皆さんの意見も聴きながら適切に対処していきたいと考えており、引き続き、春闘における民間の動き等を注視してまいりたい。
(2) 官民の給与の比較方法について
官民給与の比較方法については、公務と民間で同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間準拠方式の下、民間企業従業員の給与をより広く把握し国家公務員の給与に反映させるため、必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
(3) 諸手当について
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行ってまいりたい。
二、労働時間、休暇、休業に関する事項
(1) 超過勤務の縮減について
長時間労働の是正については、本年2月、人事院規則を改正し、超過勤務命令を行うことができる時間の上限について、原則として1箇月について45時間かつ1年について360時間、他律的業務の比重が高い部署においては1箇月について100時間未満、1年について720時間かつ2箇月から6箇月までの各1箇月当たりの平均を80時間とするなどと設定して、本年4月から施行しているところである。
他律的業務の比重が高い部署の範囲や、どのような業務が上限を超えて超過勤務を命ずることができる特例業務に該当するかの判断については、人事院規則等の規定内容や趣旨に沿って、各府省において厳格に行っていただく必要がある。
これまで、人事院が主な府省における制度の運用状況を聴取したところ、各府省においては、制度の趣旨に沿った運用が行われていると認められ、人事院規則で定めた上限を超えて超過勤務を命じた事例が未だにない府省がある一方、事例が存在した府省においても、他律的業務の比重が高い一部の部署・職員に限られている。
勤務時間管理については、超過勤務の適正な運用を図るため、課室長等による超過勤務予定の事前確認や、所要見込時間と異なる場合の課室長等への事後報告を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は、課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできる旨を職員福祉局長通知で規定したところである。
公務における長時間労働の是正については重要な課題であり、政府全体で連携して取り組んでいくことが必要であり、人事院としても、今後、検証等の結果も含め、制度の運用状況についてフォローアップを行い、必要に応じて各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしてまいりたい。
(2) 休暇、休業制度について
職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。ご要求のうち、不妊治療の支援については、本年の勧告時報告において、民間の動向等を注視しつつ、不妊治療を受けやすい職場環境の醸成等を図っていく旨言及したところであり、その他の休暇等も含め、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
(3) 勤務時間制度について
勤務間インターバル制については、公務においては、公務の特殊性に応じた様々な勤務形態があることから、一律に連続勤務時間を短縮したり、勤務間隔の基準を示したりすることには様々な課題がある。このため、民間労働法制の改正を踏まえた議論や民間企業における導入状況等について注視していくこととしている。
勤務時間の割振りに当たっては、各省各庁の長が公務の円滑な運営に配慮するとともに、職員の健康及び福祉を考慮して職員の適正な勤務条件の確保に努めるべきこととされており、まずは、各職場において連続勤務を避ける運用に努めることが肝要と考えている。
人事院においても、職員の疲労蓄積の防止のため、早出・遅出勤務について各府省にモデル例を示して活用を促してきているところである。
三、女性公務員の労働権確立に関する事項
人事院としては、女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、女性の採用・登用の拡大や両立支援等の拡充など様々な施策を行ってきているところである。
今後とも、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援施策等により、次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法等に基づく各府省の取組の支援や男女ともに働きやすい勤務環境の整備についての所要の検討などを進めてまいりたい。
なお、メンター制度については、メンター養成研修の実施に加え、平成30年2月に、各府省における職員の職場環境への円滑な適応、能力開発・専門性習得等のキャリア形成、仕事と生活の両立等に向けたメンター制度の活用に資するよう、「メンター制度実施の手引き」(人事院人材局企画課長通知)を作成するとともに、女性職員の登用拡大に向けたメンター制度を類型例の一つとして示し、その概要や留意点について説明するパンフレットを作成したところである。
今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。
四、福利厚生施策に関する事項
(1) 心の健康づくり対策について
心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として様々な施策を展開しているところであり、引き続きそれらの取組を進めてまいりたい。
また、平成28年度より、各省各庁の長に対して、職員に医師等によるストレスチェックの受検機会を付与すること及び職員からの申出に応じて面接指導を実施することを義務付けることなどを内容とするストレスチェック制度が実施されているところである。
(2) ハラスメント対策について
パワー・ハラスメントの防止については、平成31年3月より、有識者による「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」を設置し、検討会において、職員団体の皆さんからヒアリングする機会も設けて議論を重ねているところである。
人事院としては、今後、民間の指針の審議状況も注視しつつ、検討会での議論を取りまとめていただき、その結果も踏まえて、民間法制の施行に遅れることのないように、新たなパワハラ防止策を講じてまいりたい。制度の枠組みを構築する過程では、職員団体の皆さんからのご意見を聴く機会を設けつつ、検討を進めてまいりたい。
その他のハラスメントに防止についても、しっかり取り組んでまいりたい。
五、雇用と年金の接続に関する事項
人事院としては、意見の申出に至る過程での職員団体の皆さんと各府省の意見も踏まえ、定年の引上げの実現に向け、各施策の必要性等の理解の促進に一層努めるとともに、政府における検討に際して、これまでの検討結果に基づき必要な協力を行うこと等を通じて、必要な法律改正が早急に行われるよう、その責任を適切に果たしてまいりたい。
再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまでも見直しを行ってきているところであるが、引き続き民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。
六、非常勤職員制度に関する事項
非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律、人事院規則等に規定しており、期間業務職員制度、育児休業など、これまで職員団体の皆さんの意見も聴きながら見直しを行ってきたところである。
非常勤職員の給与については、平成20年8月に発出した非常勤職員の給与に関する指針について、平成29年7月、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなどの指針の改正を行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
非常勤職員の休暇については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を踏まえて、必要な措置を行ってきている。
本年1月より、いわゆる結婚休暇を新設するとともに、忌引休暇について対象となる職員の限定を外し、全ての非常勤職員が使用できるように改善を行ったところであり、また、本年の勧告時報告において言及したように、民間の状況等を踏まえ、来年1月よりいわゆる夏季休暇を新設する措置を行ったところである。今後も引き続き民間企業における措置状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。
七、障害者雇用に関する事項
障害者雇用に関しては、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、その推進に全力で取り組むこととされている。
人事院としては、障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を昨年12月に行い、本年1月から施行されている。
また、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を、昨年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めたところである。本年の勧告時報告において言及したとおり、各府省における合理的配慮の提供に資するよう、厚生労働省等と連携して、障害者に対する合理的配慮の提供状況を把握し、優良事例に関する情報を提供するなど支援してまいりたい。
これに対して、公務員連絡会側は、次の通り質すとともに重ねて要請を行った。
(1) 2020年度の人事院勧告に向けては、今後の日本経済の見通しが極めて不透明な状況の中での春季生活闘争期からの取組になると認識しているが、賃上げを通じて、「経済の自律的成長」「社会の持続性」を実現するためにも、人事院としての積極的な対応を求めておく。官民比較方法については、今年と変わらないと受け止める。
(2) 労働時間、休暇・休業等とワーク・ライフ・バランス、女性の労働権は一体の課題であり、働き方改革を公務が率先して推進していくことが引き続き重要である。
とくに超過勤務の縮減については、本年4月からの改正人事院規則等に基づく取組が現場で進められているが、様々な課題が寄せられており、われわれも現場段階で把握した現状を人事院とも共有していくので、人事院としても、各省各庁の実態を適切に把握するなどして必要な対応をはかること。
(3) パワー・ハラスメントの防止対策については、検討会での議論の取りまとめを踏まえて制度の枠組みを構築する過程でわれわれの意見を聴く機会を設けるという回答だったが、しかるべき時期に検討会での議論の取りまとめの内容も踏まえてしっかりと議論していきたい。また、その際、申入れの要求項目にあるとおり、少なくとも民間と同等のパワハラの定義、公務におけるカスタマーハラスメントの検討、紛争解決の機能についてが主要な課題となることを改めて申し上げておく。
この間、職場からパワー・ハラスメントに関する相談なども寄せられており、やはり風通しの良い職場環境作りが労使双方にとって重要だ。われわれの立場でも努力していくが人事院としても更なる努力をしていただきたい。
(4) 非常勤職員については、この間、休暇制度の改善がはかられてきたことは評価するが、あくまで「民間の状況等を踏まえての措置」という観点からの改善である。
しかし、常勤職員との適切な権衡という観点に立てば、休暇に関する有給・無給の取扱いなど、依然として解決すべき課題は残っており、常勤・非常勤で異なる休暇・休業制度に関しての総点検の実施と、われわれとの協議に基づく改善を改めて求めておく。
(5) 定年の段階的な引上げについては、人事院の責任を最後まで確実に果たすこと。
また、再任用職員の給与制度については、期末・勤勉手当や生活関連手当が引き続いての課題であることから、われわれとの協議を通じて必要な検討を行うこと。
これに対し、練合審議官は次の通り答えた。
(1) 公務労協の調査において、約3割の人が超過勤務命令の上限規制についてよく知らないというのは、ショッキングなデータなので、担当課とも共有してしっかりと周知徹底をはかりたい。
(2) パワー・ハラスメントについては、昨日も検討会を開催しており、取りまとめにむけて鋭意進めているところ。冒頭申し上げたとおり、まとめられた報告書を踏まえて、職員団体の意見も聞きながら納得性のある措置案を検討していきたい。
(3) 非常勤職員の処遇につきましては、同一労働同一賃金に関する民間のガイドラインを参考にして、説明のつかない不合理な差が無いように適切に対応してまいりたい。
続いて、各交渉委員が職場実態を踏まえ、夏季休暇の取得可能期間の弾力的な対応、同一労働同一賃金をふまえた再任用職員への生活関連手当支給の検討、超過勤務の上限規制の徹底、非常勤職員の育児休業時の給付金などについて要請した。
最後に、森永副事務局長が「本日の回答については、今後に向けての現時点における人事院としての考え方が示されたものと受け止めておくが、職場の実態をより丁寧に把握した上で労働条件の改善に向けて努力すること。基本要求に掲げた事項はすべて重要なものであり、これらに関する現状認識を人事院とわれわれとの間で従前以上に共有するため、引き続き、様々な場面で人事院との意見交換を含めた協議をしていきたい。来年2月に改めて春季要求を提出する。常勤・非常勤に関わらず、すべての職員の賃金・労働条件が改善されるよう、労働基本権制約の代償措置としての人事院の役割を踏まえ、引き続き努力することを強く求めておく」と重ねて要請し、回答交渉を終えた。
以上