2021年度公務労協情報 8 2020年11月27日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

内閣人事局・人事院へ2021年度基本要求を提出-11/27


 公務員連絡会は11月27日、内閣人事局、人事院に対して「2021年度賃金・労働条件に関わる基本要求」(資料1、2参照)を提出した。公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が交渉に臨み、誠意ある回答を示すよう求めた。
 それぞれの交渉経過は次の通り。

<内閣人事局との交渉経過>
 内閣人事局への提出交渉では、内閣人事局から松本内閣審議官らが対応した。
 要求提出にあたり、森永副事務局長は、基本要求を次の通り説明した。

1.雇用と賃金・労働条件
  公共サービス基本法は2009年に制定されて今年で11年が経過した。公共サービス基本法に基づき、臨時・非常勤職員を含めたすべての公務員をはじめ、公共サービス従事者に、社会的に公正な賃金・労働条件を確保するとともに、必要な人件費予算等の財源を確保していただきたい。
  また、すべての課題に直結するのが定員問題、とくに、新型コロナウイルス感染症への対策は、喫緊の最重要な課題であることから、必要な定員を確実に確保していただきたい。
  2021年度の人事院勧告・報告への対応にあたっては、われわれとの十分な交渉・協議を行った上で、職員の賃金水準の維持・改善をはかっていただきたい。その際、公務員給与について社会的な合意を確立すべく、公務員の人事行政に責任を持つ立場での役割を果たすことを求めておく。
2.新型コロナウイルス感染症への対応
  未だ収束の見えない新型コロナウイルス感染症の感染拡大のもと、現場では、「新しい生活様式」や「新しい日常」での対応が求められ、テレワークをはじめとする働き方改革や職員の健康確保措置なども引き続きの課題である。引き続き、政府には、職場における対応等について、速やかな職員周知を行うことを求めておく。
  公務員連絡会では、本年10月に組合員に対して生活実態調査を実施し、その中で、「新型コロナウイルス感染症と仕事」、「テレワークの活用」について調査項目として現在集計中である。調査がまとまりしだい提供するので、是非、内閣人事局においても各府省における在宅勤務やテレワークにおける課題等を把握した上で、公務員連絡会との協議を通じて改善をはかること。
3.労働時間、休暇・休業制度
  河野大臣が就任以来、在庁時間の悉皆調査や勤務時間管理のICカードを活用した試行をはじめとして、霞が関をはじめとする長時間労働の是正に向けたリーダーシップを強力に発揮していることは、大変心強く感じている。今後、具体の施策が講じられていくと思うが、その際には、公務員連絡会と超過勤務縮減の実効性確保に向けて建設的な議論を行うよう強く求めておく。
  男性国家公務員の育休等取得促進については、歓迎するところではあるが、職場の雰囲気づくりなど環境整備に向け、さらに努力すること。
4.女性公務員の労働権確立
  性別や世代等を超えて働きやすい職場を実現することが基本であり、内閣人事局としても使用者としての責務をしっかりと果たしていただきたい。また、様々な取組について、フォローアップも実施されるが、数値目標のみにこだわりすぎることのないように、個々の置かれている環境や職場実態に応じて臨機応変に対応するよう求めておく。
5.福利厚生施策等
  現在、国家公務員健康増進等基本計画の5年に1度の改正に向けた作業が進められており、公務員連絡会としても過日、意見等を提出した。具体の改正案の取りまとめに向けては、われわれとの協議も踏まえた対応を求めておく。
6.人事評価制度
  現在行われている「人事評価制度の改善に向けた有識者検討会」での検討状況を踏まえ、具体的な改善等の措置を行う場合には、われわれと前広かつ十分に交渉・協議した上で、合意に基づく対応を強く求めておく。
7.雇用と年金の接続
  定年の引上げについては、とくに段階的に定年年齢が引き上がる過程で定年を迎える職員にとっては重大な人生設計に関わる事であり、速やかに結論を得て、国家公務員法改正法案を再提出することを求めておく。なお、定年引上げ実現までの間は、職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員の確保をはかること。
8.非常勤職員
  同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進することが、官民共通の課題であり社会的に重要な政策であることから、国に採用される非常勤職員の給与水準等の統一性・公平性の確保に向けた予算の確保等について、政府の責任において措置すること。
9.障害者雇用
  法定雇用率2.5%については、2019年末の時点で2.85%となり、法定雇用率を満たしているが、一方で定着率は91.4%となっている。来年の3月には法定雇用率が0.1%引き上げられることとなるが、引き続き、法定雇用率を順守するとともに、職員が働き続けられる環境の整備に向けた政府をあげての更なる取組を求めておく。
10.公務員制度改革
  引き続き、国家公務員制度改革基本法の自律的労使関係制度を確立することが課題であり、われわれと十分に話し合いながら着実に検討を進めること。

 続けて、交渉委員からは長時間労働の是正に向けた客観的な勤務時間管理の推進に対する要望を訴え、改善を求めた。

 これらに対して、松本内閣審議官は「要求の趣旨は承った。要求事項は多岐にわたっているため、検討させていただいた上で、しかるべき時期に回答を行いたい」と回答した。
 
 最後に、森永副事務局長は「内閣人事局におかれては、職場の実態を十分に把握し、課題の解決に向けて、公務員の人事行政に責任を持つ中央人事行政機関としての機能を発揮していただきたい。なお、基本要求の内容を十分に精査して、12月には、誠意ある回答を求める」と要請し、この日の交渉を終えた。

<人事院との交渉経過>
 人事院への提出交渉では、人事院からは練合職員団体審議官、好岡職員団体審議官付参事官が対応した。
 要求提出にあたり、森永副事務局長が、基本要求を次の通り説明した。

1.給与関係
  感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた取組が進められているが、今後、民間における雇用や所得の環境がさらに悪化していくことが懸念される。現状の厳しい環境を認識した上で、来年度の給与勧告に向けては、職員の給与が維持・改善されるよう人事院としての責任を果たしていただきたい。また、官民比較方法については、現行の枠組みを堅持するとともに、さらに公正な仕組みとなるよう改善すること。
  諸手当については、基本要求の提出に当たっては個別の手当についての言及はしないが、社会経済情勢の変化や職員の職務や生活実態を踏まえて検討するよう求めておく。
  再任用職員に関わる給与制度等の改善に向けて着実に検討を進めること。
2.新型コロナウイルス感染症
  感染拡大の改善が進まない中で、引き続き、われわれとの協議も踏まえ、職員の感染防止、健康確保のため、適宜、必要な措置を講じていただきたい。なお、人勧期の職員福祉局長との交渉で継続的な課題とした、「妊娠している職員に対する措置の実施状況のフォロー」等についても適切な対応を求めておく。
3.労働時間、休暇・休業制度
  本年の報告において公表された国家公務員の平均年間超過勤務時間数によれば、前年と比較して、本府省で8時間減の348時間、本府省以外で8時間減の190時間となっており、依然として高止まりしていると受け止めている。超過勤務命令の上限等に関する措置が定められた人事院規則等が施行されて1年半余りが経過しており、現在、各府省の上限を超えた場合における要因の整理・分析・検証の状況を人事院として把握に努めていると承知しているが、今後、その状況等について公務員連絡会との前広な協議を改めて求めておく。
4.女性公務員の労働権確立
  年内に策定される新たな男女共同参画基本計画等も踏まえて、性別や世代等を超えて働きやすい職場を実現することを基本に、人事院としても積極的に役割を果たすこと。
5.福利厚生施策等
  人事院の令和元年度年次報告書によれば、苦情相談の内容で最も多いのは、昨年に引き続いて「パワハラ、いじめ・嫌がらせ関係」で496件、30.6%であり、「セクシャル・ハラスメント」も67件、4.1%と昨年より増加している。引き続き、6月1日に施行された新たな人事院規則10-16「パワー・ハラスメントの防止等」も踏まえ、人事院がその役割を適切に果たすとともに、とくに、苦情相談・紛争解決に向けて万全の体制で臨むよう強く求めておく。いずれにせよ、職場からあらゆるハラスメントを根絶し、誰もが生き生きと働き続けられる勤務環境の整備に向けて、われわれも労働組合の立場で現場の労使関係の中で努力をしていく。12月4日から10日は「国家公務員ハラスメント防止週間」であり、是非、改めて、人事院としても職員周知等の徹底について各府省を指導していただきたい。
  なお、公務員連絡会では、本年10月に実施した組合員への生活実態調査の調査項目に、パワハラの防止措置についても盛り込み、現在集計作業中である。調査がまとまりしだい、情報提供するので、引き続き、職場実態を踏まえた課題等について、前広に協議を行うよう求めておく。
6.人事評価制度
  本年の人事管理報告において、能力・実績に基づく人事管理の推進に言及されており、その基礎となり重要な役割を果たすのが人事評価制度である。しかし、評価制度や評価結果の納得性を高めるためには、評価者と被評価者の信頼関係のもとでコミュニケーションが取れていることが前提となる。引き続き、パワー・ハラスメントの防止対策などをはじめとした職員の勤務環境のさらなる改善に向けた努力を求めておく。
7.非常勤職員制度
  非常勤職員の休暇については、この間、2018年に慶弔休暇、2019年に夏季休暇が措置されてきたが、本年は新たな措置が行われなかった。一方で、現状の新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、改めて非常勤職員の「私傷病休暇」や「子の看護休暇」が無給であることへの課題が浮き彫りになっており、今後、公務員連絡会との間で、個々の休暇について検証を行った上で、具体的な改善をはかること。
8.障害者雇用
  法定雇用率を満たした一方で、約1割が離職している現状を踏まえ、人事院においては、引き続き、職員が働き続けられる環境の整備に向けて役割を果たしていただきたい。

 申入れに対し、練合審議官は「本日の要求については承った。十分検討の上、然るべき時期に回答させていただく。本日は、いくつかの点について現時点でのコメントを申し上げる」として、現時点での見解を次のように示した。

1.賃金に関わる要求について
  民間企業においては、このコロナ禍の下で業況判断の先行きが不透明となっており、人事院としても、今後の景気や賃金の動向を注視していきたいと考えている。いずれにしても、月例給、一時金ともに、情勢適応の原則に基づき適正な給与水準を確保すべく、民間給与実態を精確に調査した上で職員団体の意見も聴きながら適切に対処していくということが基本となる。
2.新型コロナウイルス感染症に関わる要求について
  新型コロナウイルス感染症に関しては、人事院としては、これまで人事制度の面から様々な取組をしてきたが、引き続き感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行っていきたい。
3.労働時間、休暇及び休業等に関わる要求について
  超過勤務の上限規制に関しては、上限時間を超えて超過勤務を命じた場合の各府省における整理、分析及び検証の状況について、現在、各府省から提出された報告を分析するとともに、各府省における実情を聴取し、改善方策について指導、意見交換を行っているところ。
4.女性公務員の労働権確立に関わる要求について
  女性の活躍の推進については、人事行政における重要な施策の一つとして、男女ともに働きやすい勤務環境の整備や、女性国家公務員の採用・登用の拡大を積極的に進めてきているところである。
  引き続き、両立支援策の一層の活用を促進するとともに、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修等を通じて各府省の取組を支援していく。
5.福利厚生施策等に関わる要求について
  パワーハラスメントを含めたハラスメントの防止については、防止対策が適切に実施されるよう、研修教材の提供等によって各府省を支援するとともに、苦情相談等において人事院の役割を適切に果たしていきたい。
6.非常勤職員制度等に関わる要求について
  非常勤職員の給与については、引き続き指針に基づき、常勤職員の給与との権衡を確保し得るよう取り組んでいきたい。
  非常勤職員の休暇についても、民間における取組の動向等を注視しつつ、必要に応じて検討を行っていくこととしている。

 続けて、交渉委員から、来年の民調に対する要望、新型コロナウイルス感染症への対応として、基礎疾患を有する職員や非常勤職員への配慮、障害者雇用の着実な推進、職場実態を踏まえたハラスメントの相談体制の充実などを求めた。
 
 最後に森永副事務局長が「新型コロナウイルス感染症の感染拡大という困難な状況のもとではあるが、現場で懸命に職務に従事している職員の適正な勤務条件、給与の確保をはかるという人事院の役割をしっかりと果たしていただきたい。基本要求の内容を十分精査し、12月には、誠意ある回答を求める」と要請し、この日の交渉を終えた。



資料1.内閣人事局への基本要求書

2020年11月27日


内閣総理大臣
 菅  義 偉 様

公務員労働組合連絡会
議長  武 藤 公 明


2021年度賃金・労働条件に関わる基本要求について

 
 新型コロナウイルス感染症は、いまだに収束の兆しを見せないもと、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた取組が進められていますが、今後、雇用や所得の環境がさらに悪化していくことが懸念されます。
 このような中で、新型コロナウイルス感染症対策や近年多発する大規模な自然災害への対応など、国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの現場では、職員の高い使命感と責任をもった懸命の奮闘が続いています。一方、職場では、テレワークの推進をはじめとする働き方改革にも積極的に取り組んでいるものの、長時間労働の蔓延など厳しい勤務環境は改善されておらず、必要な要員と適切な労働条件等の確保が不可欠です。
 さて、2021年度の基本要求事項においては、新型コロナウイルス感染症に関する勤務条件の改善、真に実効性のある超過勤務の縮減対策、非常勤職員の待遇改善などを重点課題としています。
 貴職におかれましては、こうした点を十分に認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されるよう強く申し入れます。



1.雇用と賃金・労働条件について
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、臨時・非常勤職員を含めたすべての公務員及び公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件と人件費予算を確保すること。
(2) 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保することとし、職員のゆとり・豊かな生活を保障すること。2021年度においては、民間の実勢を踏まえ、人事院勧告の取扱いを含めて、公務員連絡会との交渉・協議に基づき職員の賃金水準を維持・改善すること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(3) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

2.新型コロナウイルス感染症への対応について
国民生活の安心と安全を支える基盤となる公務公共サービスに従事する職員の勤務条件等の確保と職場環境の整備をはかること。とくに、各府省における在宅勤務やテレワークにおける課題等を把握し、必要な対応策を講じること。

3.労働時間、休暇及び休業等について
 ワーク・ライフ・バランスを実現するため、公務職場における「働き方改革」等を次の通り進めること。
(1) 公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、使用者の責務としてICT等を活用した客観的で厳格な勤務時間管理を直ちに実施し、職員の勤務状況の把握に努めること。あわせて、各府省における取組状況を把握し、必要な措置を講じること。
(3) 改正人事院規則施行後の超過勤務の実態を把握し、真に実効性のある超過勤務の縮減策を直ちに実施すること。
(4) 公務における本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(5) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
(6) 「男性国家公務員の育休等取得促進」については、職員が気兼ねなく取得できるような勤務環境の整備に向けて、各府省を適切に指導すること。

4.女性公務員の労働権確立について
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、政府全体として積極的に取り組むこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実施に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 新たな男女共同参画基本計画が年内にも策定されるもと、女性の採用・登用・職域拡大、メンター制度の実効性確保に向け、使用者として必要な取組を着実に実施すること。


5.福利厚生施策等について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員健康増進等基本計画」の最終改正から5年が経過し、本年度中の改正が予定されていることから、改正に当たっては、公務員連絡会と協議すること。また、基本計画の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。
(3) 心の健康づくりについては、引き続きストレス原因の追究と管理職員の意識改革に努めることとし、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4) 2021年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(5) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(6) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に推進すること。とくにパワー・ハラスメントの防止対策については、6月に施行された人事院規則10-16に基づき政府全体で取り組むこと。

6.人事評価制度について
 人事評価制度について、円滑に運用されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底等に努めること。なお、「人事評価制度の改善に向けた有識者検討会」での検討状況を踏まえ、具体的な改善等の措置を行う場合には、公務員連絡会と十分に交渉・協議し、合意に基づき対応すること。

7.雇用と年金の接続について
(1) 定年の引上げに関する国家公務員法改正法案を速やかに再提出し、定年引上げを早期に着実かつ確実に実施すること。
(2) 定年引上げ実現までの間は、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを中心とする職員の希望通りの再任用を実現すること。
(3) 事務・事業の円滑な遂行とディーセントワークを保障するとともに、当面、職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員を確保するとともに、定員の弾力的な取扱いなどについて公務員連絡会と協議すること。

8.非常勤職員制度等について
 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進するとともに、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保をはかるため、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員制度について、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組を推進すること。
(2) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(3) 「非常勤職員給与決定指針」等に基づき、予算の確保など必要な措置を講じること。また、非常勤職員の給与改定について、政府全体として統一的に対応することとし、常勤職員と同様に措置すること。
(4) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。

9.障害者雇用について
 公務職場における障害者雇用について、引き続き、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、政府としての役割を適切に果たすこと。

10.公務員制度改革について
 ILO勧告に則り、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員制度改革関連四法案(2011年6月3日国会提出)における措置について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)に基づく、公務員連絡会との合意により実現すること。

11.その他
 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

以上





資料2.人事院への基本要求書

2020年11月27日


人事院総裁
 一宮 なほみ 様

公務員労働組合連絡会
議長  武 藤 公 明


2021年度賃金・労働条件に関わる基本要求について


 新型コロナウイルス感染症は、いまだに収束の兆しを見せないもと、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた取組が進められていますが、今後、雇用や所得の環境がさらに悪化していくことが懸念されます。
 このような中で、新型コロナウイルス感染症対策や近年多発する大規模な自然災害への対応など、国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの現場では、職員の高い使命感と責任をもった懸命の奮闘が続いています。一方、職場では、テレワークの推進をはじめとする働き方改革にも積極的に取り組んでいるものの、長時間労働の蔓延など厳しい勤務環境は改善されておらず、必要な要員と適切な労働条件等の確保が不可欠です。その意味で、人事院が、労働基本権制約の代償機関であることを含め職員の利益保護に向けた役割を十全に果たすことが求められています。
 さて、2021年度の基本要求事項においては、新型コロナウイルス感染症に関する勤務条件の改善、真に実効性のある超過勤務の縮減対策、非常勤職員の待遇改善などを重点課題としています。
 貴職におかれましては、こうした点を十分認識され、下記の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、賃金に関わる事項
1.給与水準及び配分等について
(1) 給与水準の確保
 @ 職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な月例給与水準を確保することとし、職員のゆとり・豊かな生活を保障すること。
 2021年度の給与勧告においては、民間実勢を踏まえ、職員の賃金水準を維持・改善すること。
 A 期末・勤勉手当については、民間実態を精確に把握するとともに、支給月数を確保すること。
(2) 公正・公平な配分
  配分については、別途人事院勧告期に提出する要求も含め、公務員連絡会と十分交渉し、合意に基づき行うこと。
(3) 社会的に公正な官民給与比較方法の確立
  当面、現行の比較企業規模を堅持することとし、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。

2.諸手当について
(1) 諸手当について、社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえて改善することとし、公務員連絡会と十分、交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する手当の割増率の引上げを行うこと。なお、超過勤務手当の全額支給の徹底について必要な対応をはかること。

3.再任用職員について
再任用職員の給与制度等については、その経済的負担、定年前職員との均衡を 考慮して改善することとし、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて進めること。

二、新型コロナウイルス感染症に関わる事項
  今後の感染状況等の推移を注視し、職員の感染防止、健康確保のため、公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて、適宜、必要な措置を講じること。なお、「妊娠している職員に対する措置の実施状況のフォロー」を確実に実施すること。

三、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
 ワークライフバランスを実現するため、公務職場における「働き方改革」等を次の通り進めること。
1.年間労働時間の着実な短縮について
 公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、次の事項を実現すること。
(1) 使用者の責務としてICT等を活用した客観的で厳格な勤務時間管理を直ちに行うよう措置すること。また、本府省における在庁時間削減の取組についても、人事院として積極的役割を果たすこと。
(2)超過勤務命令の上限を超えた場合における各府省による要因の整理・分析・検証の状況を把握した上で、各府省を適時適切に指導すること。また、当該各府省の状況等について、公務員連絡会と協議すること。

2.休暇・休業制度の拡充等について
 ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の拡充などについて、次の事項を実現すること。
(1) 夏季休暇の日数を増やすこと。
(2) リフレッシュ休暇を新設すること。
(3) 産前休暇を8週間、多胎妊娠の場合の産後休暇を10週間に延長すること。また、妊娠障害休暇を新設すること。
(4) 不妊治療のための休暇を新設すること。
(5) 育児や介護に関わる両立支援制度の円滑な活用を図るとともに、育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和し、その在り方を改善すること。
(6) 必要な休暇・休業制度が、非常勤職員を含め、男女ともにより活用できるよう、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(7) 休暇の取得手続きについて、公務員の休暇権をより明確にする形で抜本的に改善すること。

3.勤務時間制度等の見直しについて
(1) 公務における本格的な短時間勤務制度の導入に向けて、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(2) 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。

四、女性公務員の労働権確立に関わる事項
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題と位置づけ、人事院としての役割を果たすこと。
(2) 次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法及び「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための指針」等に基づく各府省の「行動計画」「取組計画」等の着実な実行に向け、積極的な役割を果たすこと。
(3) 新たな男女共同参画基本計画が年内にも策定されるもと、女性が働き続けるための職場環境の整備に努め、女性の採用・登用・職域拡大を図るとともに、メンター制度の実効性を確保すること。

五、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3) 「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康づくり、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進をはかること。
(4) ハラスメントの防止について、一層有効な対策を着実に実施すること。なお、パワー・ハラスメントの防止対策については、人事院規則10-16等に基づいた各府省の取組状況を把握し、必要な指導を行うこと。また、苦情相談、紛争解決における人事院の役割を着実に果たすための体制整備等をはかること。

六、人事評価制度に関わる事項
 中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、人事評価制度の実施状況及び評価結果の活用状況を随時検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じること。

七、非常勤職員制度等に関わる事項
 非常勤職員制度等の抜本的改善をめざし、同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇の原則を一層推進するとともに、国に採用される当該職員の給与水準等の統一性・公平性の確保をはかるため、次の事項を実現すること。
(1) 非常勤職員を法律上明確に位置付け、勤務条件等について常勤職員に適用している法令、規則等を適用すること。
(2) 「非常勤職員給与決定指針」等に基づく、各府省の取組状況を踏まえ、現行指針のさらなる改善に向けて公務員連絡会と協議を行い、非常勤職員の着実な待遇の改善について一層努力すること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(4) 非常勤職員の休暇制度等の改善について、無給休暇の有給化等を進めること。なお、個々の休暇について検証する場を速やかに設置し、公務員連絡会と検証・検討の作業を行うこと。

八、障害者雇用に関わる事項
 公務職場における障害者雇用について、引き続き、雇用される障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、人事院としての役割を適切に果たすこと。

九、その他の事項
 公務遂行中の事故等の事案に関わる分限については、欠格による失職等に対する特例規定を設けること。

以上