2021年度公務労協情報 9 2020年12月23日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

2021年度基本要求に対する回答を引き出す−12/23


公務員連絡会は12月23日、幹事クラス交渉委員が内閣人事局、人事院との交渉を実施し、11月27日に提出した「2021年度の基本要求」に対する回答を引き出した。
公務員連絡会は、今回の回答を踏まえて、今後、2021春季生活闘争の取組を進めていく。
それぞれの交渉経過は次の通り。

<内閣人事局との交渉経過>
内閣人事局との交渉は、松本内閣審議官らが対応した。
冒頭、森永副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、松本審議官は「11月27日に提出のあった「2021年賃金・労働条件に関わる基本要求」について、この時期における回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。

1.雇用と賃金・労働条件について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
2.新型コロナウイルス感染症への対応について
「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)等を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対し感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。引き続き、関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。
また、在宅勤務やテレワークについては、
・テレワーク可能な端末などハード面での不足
・紙を前提とするなどテレワークしにくい業務環境
・出勤した職員に業務が偏るなどマネジメント面の問題
といった課題があると認識しており、これらの課題の解決に向け、端末等の環境整備、不要業務の廃止や業務のデジタル化といった業務見直し、職場のマネジメント改革を一体的に進めてまいりたい。
3.労働時間、休暇及び休業等について
長時間労働の是正については、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、これまでも、
・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や
・業務の見直し・効率化や、部下職員の超過勤務時間見込みの事前把握等、管理職のマネジメント改革による超過勤務の縮減
・テレワークやフレックスタイム制等による働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。
直近では、まずは「見える化」が必要という観点から、職員の勤務時間の実態を正確に把握するため、本省の在庁時間の実態調査を行った。
この結果を踏まえ、今後は、
・超過勤務について部下の事前・事後の申告を上司が確認する機能
・部下の在庁時間の客観的データを取り込んで管理する機能
等を備えた勤務時間管理のシステム化について各府省への展開を進めてまいりたい。
また、長時間労働是正だけでなく、職員のキャリア形成支援等により「やりがい」を高める取組も重要であると考えている。
引き続き、地方の現場の実情を含め、皆様方のご意見も伺いつつ、関係府省等と連携し、適切に対応してまいりたい。
4.女性公務員の労働権確立について
「男女共同参画基本計画」や、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等を踏まえ、男性職員の育休取得促進等の取組を進めているところ。引き続き、各府省の取組のフォローアップ等により、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
5.福利厚生施策等について
福利厚生施策等については、「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、職員の能率増進のため、ハラスメントに関する研修・啓発の確実な実施や相談体制の整備等の取組を進めているところ。
引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
なお、「国家公務員健康増進等基本計画」の改正については、皆様方の意見も踏まえ、作業を進めているところである。
6.人事評価制度について
人事評価制度については、評語区分の趣旨の徹底や、制度への信頼感の向上を図るとともに、人材育成等への一層の活用に向け、評価者訓練の充実等に取り組んでいるところ。
人事評価制度の改善については、必要な措置を順次実施してまいりたいと考えており、現在有識者検討会で検討が進められているところ、引き続き、皆様方のご意見も伺いつつ、取組を進めてまいりたい。
7.雇用と年金の接続について
雇用と年金の接続に関して、国家公務員の定年の引上げについては、いただいた様々なご意見も踏まえつつ、法案の提出について、改めて検討しているところ。
8.非常勤職員制度等について
非常勤職員の処遇改善については、重要な課題であり、これまでも、各府省に対し必要な予算が確保されるよう働きかけを実施してきたところ。
今後とも、非常勤職員の給与等に係る具体的な運用を定める人事院と連携し、各府省における非常勤職員の処遇改善に向けた必要な予算確保がしっかりと行われるよう、適切に働きかけを実施してまいりたい。
9.障害者雇用について
障害者雇用については、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害者の多様な任用形態の確保、障害者雇用マニュアルの作成などにより、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
また、職場実習の実施や講習会の開催など、障害のある職員を受け入れる側も含めた支援等にも努めている。
今後とも、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。
10.公務員制度改革について
これまで、勤務条件に関わる様々な課題について、ご意見を伺いつつ対応してきたところ、皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたいと考えているが、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、慎重に検討する必要があると考えている。

 これに対して、公務員連絡会側は次の通り質すとともに重ねて要請をした。
(1) 給与については、公務員連絡会として当面は、勧告制度のもとでの給与・勤務条件決定システムを前提として、政府・人事院との交渉を通じた取組を進めていく。来年度の給与改定についても、人事院勧告の取扱いを含めて、われわれとの交渉・協議、合意による対応を求めておく。その上で、公務員給与に対する社会的な合意が確固たるものとなるよう、引き続き、使用者としての丁寧な説明責任を果たしていただきたい。
(2) 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の収束の兆しが見えないなかで、職員が不安なく職務に従事するための対策についてさらに拡充をはかる必要がある。公務労協が本年10月に実施した生活実態調査結果では、テレワークの課題として、@個人情報等機密情報の取扱が難しいこと(55.8%)、Aパソコンやネットの環境が不十分(34.7%)、B上司や同僚と対話が取りづらい(32.7%)、などの回答が多かった。また、今後のテレワークの活用希望については、約半数(45.1%)が「活用したい」と回答する一方で、「テレワーク可能な業務はない」との回答も約3割(28.3%)あった。引き続き、職場における業務の見直しをはじめ、指摘されている課題の解決に向けて、われわれとの協議を通じて改善をはかっていただきたい。
(3) 長時間労働の是正に向けては、回答にあった、本省の在庁時間の実態調査の状況については、公務員連絡会にも確実に情報提供をしていただきたい。その上で、われわれも、各府省の労使間において、超過勤務縮減に向けた取組状況を検証していくこととする。
われわれが要求してきた「ICTを活用した客観的な勤務時間管理」等の具体の施策について、今後、展開を進めていくとの回答であったが、引き続き、公務員連絡会と超過勤務縮減の実効性確保に向けて建設的な議論を行っていくよう強く求めておく。
(4) 定年の引上げについては、可及的速やかに結論を得て、国家公務員法改正法案の再提出を行うことを求めておく。 
別の課題となるが、21日に令和3年度の機構・定員等の審査結果が公表され、定員増は42年ぶりとの報道もなされたところ。
この間、定年引上げ実現までの間は、職員の希望通りの再任用を保障するため、必要な定員の確保を求め、また、長時間労働の是正が進まない理由として、業務に見合った定員が確保されていないことなどを指摘してきた。すべての課題に直結するのが定員問題、とくに、新型コロナウイルス感染症への対策は、まさに喫緊の最重要な課題であることから、要求提出の際にも、使用者として必要な定員を確実に確保するよう主張したところである。
今回の定員審査結果について、われわれの要求事項を踏まえ、どのような認識で受け止めているのか。
(5) 非常勤職員については、人事院と連携し、必要な予算確保が行われるよう適切に働きかけを実施するとのことだったが、是非、非常勤職員の待遇改善に向けた予算の確保等について、政府の責任において措置していただきたい。
(6) 公務員制度改革については、遅々として議論が進んでいない。われわれと十分に協議をすることは大前提として、自律的労使関係制度を措置することは政府の責務であることを強調しておく。
(7) 障害者雇用については、改めて、障害者に寄り添った勤務環境の整備とともに、各職場段階において、職員に対する一層の理解の促進に向けて、丁寧な対応をはかっていただきたい。
また、障害者雇用の所管省庁は厚労省だが、すべての職員にとって、より良い勤務環境となるように、障害者雇用に関わる職場実態の把握を、政府の責任において行うことを求めたいが、どのような認識か。

 これに対し、松本審議官は次の通り答えた。
(1) テレワークについては、コロナ禍において実際に運用していく中で課題も明らかになった。回答した点だけでなく、人事評価の仕方や職員の孤立感の支援など、課題を踏まえた上でどう対応できるかを検討してまいりたい。
(2) 定員については所管外だが、報道にも「42年ぶり」とあるように、一つの転換点になるのではないか。長時間労働の課題とも関係するが、働き方改革を進めつつ、必要な人員について、査定当局がしっかりと判断をしたものと受け止めている。
(3) 障害者雇用については、職場での理解が重要であり、また、障害者の方が働きやすい職場は他の職員にとっても働きやすい職場になるので、そういう環境の実現にむけて取り組んでまいりたい。

続いて、交渉委員から、定年引上げの早期実現、客観的な勤務時間管理の手法等についての意見・要望が出された。
最後に、森永副事務局長が「本日の回答は、様々な課題に対する現時点における内閣人事局としての考え方が示されたものと受け止める。また、一部ではあるが、要求に対して前向きな回答がなされた点は評価したいが、引き続き、政府とわれわれとの間でこれまで以上に認識を共有しておく必要があることから、前広な情報提供と協議の場を設けることを求めておく。来年2月には、2021年の春季要求を提出する。常勤・非常勤に関わらず、すべての職員の賃金・労働条件をはじめとする、人事行政全般の改善に向け、引き続き、使用者としての責任において、努力することを強く求めておく」と重ねて要請し、回答交渉を終えた。


<人事院との交渉経過>
 人事院との交渉は練合職員団体審議官、好岡職員団体審議官付参事官が対応した。
 冒頭、森永副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、練合審議官は「11月27日に提出のあった「基本要求」については、今後引き続き検討すべき事項が多いが、主な要求事項について、現時点での検討状況等を申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。

一、賃金に関する事項
(1) 給与水準について
公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立った上で、職員団体の皆さんの意見も聴きながら適切に対処していきたいと考えており、引き続き、春闘における民間の動き等を注視してまいりたい。
(2) 官民の給与の比較方法について
官民給与の比較方法については、公務と民間で同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間準拠方式の下、民間企業従業員の給与をより広く把握し国家公務員の給与に反映させるため、必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
(3) 諸手当について
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行ってまいりたい。
(4) 再任用職員について
再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまでも見直しを行ってきているところであるが、引き続き民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。
二、新型コロナウイルス感染症に関わる事項
新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、職場における感染拡大防止対策の周知などの対策を講じてきたところである。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行ってまいりたい。
人事院の措置した新型コロナウイルス感染症に関する施策の実施状況については、各府省担当者の負担なども考慮しつつ、必要なフォローを行っていきたい。
三、労働時間、休暇、休業に関する事項
(1) 超過勤務の縮減について
国家公務員の超過勤務については、平成31年4月から、超過勤務命令を行うことができる上限を人事院規則で設定した。
その中で、勤務時間管理については、超過勤務の適正な運用を図るため、課室長等による超過勤務予定の事前確認や、所要見込時間と異なる場合の課室長等への事後報告を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は、課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできる旨を職員福祉局長通知で規定したところである。
各府省において、上限を超えて超過勤務を命ぜられた者がいた場合には、その要因の整理、分析及び検証を行わなければならないとしており、人事院としても、現在、各府省から提出された整理、分析及び検証の状況に関する報告を分析するとともに、その報告に基づいて、各府省における実情を聴取し、改善方策について指導、意見交換を行っているところである。
引き続き、制度の適切な運用が図られるよう、必要な指導等を行ってまいりたい。
なお、取りまとめた状況については、職員団体の皆さんにも適切に情報提供することとしたい。
(2) 休暇、休業制度について
職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
ご要求のうち、不妊治療の支援については、本年の勧告時報告において、民間の状況を注視しつつ、不妊治療と仕事の両立に関する実態や職場環境の課題等を把握し、必要な取組の検討を進めていく旨言及したところであり、具体的には、職員向けの、不妊治療と仕事の両立のための職場環境に関するアンケート調査を今年度実施すべく準備を進めている。その結果やその結果に関する有識者ヒアリング等を踏まえ、必要な取組の検討を進めてまいりたい。
(3) 勤務時間制度について
勤務間インターバル制については、公務においては、公務の特殊性に応じた様々な勤務形態があることから、一律に連続勤務時間を短縮したり、勤務間隔の基準を示したりすることには様々な課題がある。このため、民間労働法制の改正を踏まえた議論や民間企業における導入状況等について注視していくこととしている。
もっとも、勤務時間の割振りに当たっては、各省各庁の長が公務の円滑な運営に配慮するとともに、職員の健康及び福祉を考慮して職員の適正な勤務条件の確保に努めるべきこととされており、まずは、各職場において連続勤務を避ける運用に努めることが肝要と考えている。
人事院においても、職員の疲労蓄積の防止のため、早出・遅出勤務について各府省にモデル例を示して活用を促してきているところである。
四、女性公務員の労働権確立に関する事項
人事院としては、女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、女性の採用・登用の拡大や両立支援等の拡充など様々な施策を行ってきているところである。
今後とも、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援施策等により、次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法等に基づく各府省の取組を支援してまいりたい。
さらに、現在、検討が進められている第5次男女共同参画基本計画の内容も踏まえつつ、今後も引き続き、職員が働きやすい勤務環境の整備や女性の採用・登用の拡大に向けた様々な施策について、所要の検討を進めてまいりたい。
五、福利厚生施策に関する事項
(1) 心の健康づくり対策について
心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として様々な施策を展開しているところであり、引き続きそれらの取組を進めてまいりたい。
また、平成28年度より、各省各庁の長に対して、職員に医師等によるストレスチェックの受検機会を付与すること及び職員からの申出に応じて面接指導を実施することを義務付けることなどを内容とするストレスチェック制度が実施されているところである。
今後は、より相談しやすい環境の整備やストレスチェックの結果の効果的な活用の方策を検討してまいりたい。
(2) ハラスメント対策について
ハラスメントの防止については、本年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定し、あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行ったところであり、これらは、本年6月から施行している。各種ハラスメントの防止等のため、人事院規則において各省各庁の長は、研修の実施、苦情相談体制の整備等の措置を講じなければならないこととされており、人事院としては、各府省における取組状況を把握しながら、研修で活用するための教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催などにより、各府省を支援するとともに制度の適切かつ円滑な運用に向けて指導を行ってまいりたい。
また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を適切に果たしてまいりたい。
六、非常勤職員制度に関する事項
非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律、人事院規則等に規定しており、期間業務職員制度、育児休業など、これまで職員団体の皆さんの意見も聴きながら見直しを行ってきたところである。
非常勤職員の給与については、平成20年8月に発出した非常勤職員の給与に関する指針について、平成29年7月、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなどの指針の改正を行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
非常勤職員の休暇については、これまで、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を踏まえ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行ってきているところである。
今後も引き続き民間の状況等を適切に把握し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。
また、非常勤職員の休暇に関して検証する場に関する要求については、公務員連絡会に対して、人事院から現状について説明を行い、質疑等をお受けする場を設けるという形で対応させていただきたい。
七、障害者雇用に関する事項
障害者雇用に関しては、障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を行い、平成31年1月から施行するとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っている。今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

これに対して、公務員連絡会側は、次の通り質すとともに重ねて要請をした。
(1) 2021年度の人事院勧告に向けては、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大変厳しい環境のもとでの春季生活闘争期からの取組になると認識しているが、現場で奮闘する職員のためにも、人事院としての積極的な対応を求めておく。
なお、官民の給与の比較方法については、現行の枠組みと変わらないと確認する。
(2) 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の収束が見通せないもと、感染防止をはじめとする勤務環境の整備について、引き続き、公務員連絡会としても職場実態を把握した上で必要な改善等を求めていくので、人事院の役割を適切に果たしていただきたい。 
(3) 超過勤務の縮減については、現在、政府において取りまとめている、在庁時間の調査結果等も踏まえ、ICT等を活用した客観的で厳格な勤務時間管理を直ちに行うことを改めて求めておく。
また、上限時間を超えて超過勤務を命ぜられた者がいる場合の各府省による整理・分析・検証の状況に関して、人事院としての分析状況等については、まとまりしだい、情報提供していただきたい。また、それを踏まえ、超過勤務縮減の実効性確保に向けた前広な協議を改めて求めておく。
(4) 公務労協が10月に実施した生活実態調査の結果によれば、今年6月に人事院規則が施行されて以降のパワハラ防止のための取組の変化についてきいたところ、「これまで以上の防止策がとられるようになった」との回答は約1割(9.7%)、「これまでと変わらない」が約6割弱(56.1%)、一方で、「防止策は何もとられていない」が約1割(11.8%)、「防止策があるかわからない」が約2割(21.3%)となった。人事院においては、職員周知に向けて様々に取り組んでいるが、職場段階での受け止めをみると心配な状況だ。
また、職場でパワハラと思われる行為を見たり、聞いたりすることがあるかの問いには、「重大なパワハラがある」との回答が5.6%、「重大かどうかはわからないがパワハラはある」が37.1%、「パワハラはない」が56.2%となり、約4割の組合員が職場でパワハラを見聞きしていることになる。
これらの結果も踏まえて、人事院には、ハラスメント防止に向けたさらなる周知をはじめ、とくに、苦情相談・紛争解決に向けて万全の体制で臨むよう改めて強く求めておく。
職場からあらゆるハラスメントを根絶し、だれもが生き生きと働き続けられる勤務環境の整備に向けて、われわれの立場でも努力をするが人事院としても更なる努力をしていただきたい。
(5) 公務員連絡会の要求に応えて、非常勤職員の休暇に関して検証する場が設けられたことから、今後、具体的な対応について整理をしていきたい。いずれにせよ、公務職場を支えている非常勤職員のさらなる待遇改善に向けて、引き続き、人事院として前向きに対応していただきたい。

 これに対し、練合審議官は次の通り答えた。
(1) 来年の人事院勧告に向けては、回答したとおり、官民比較をしっかりと行っていくということで、官民給与の比較方法は、ラスパイレス比較も含め、現行方法を維持する。なお、具体的な調査手法については、オンラインツールの活用など、今年の調査を踏まえてより効率的なものとなるよう検討してまいりたい。
(2) 新型コロナウイルス感染症への対応については、引き続き人事院の役割を適切に果たしてまいりたい。
(3) 超過勤務の分析結果については、現在各府省からのヒアリングを行っており、1月中旬までかかることを想定している。まとまり次第情報提供をしてまいりたい。
(4) パワーハラスメントについては、引き続き防止に向けた周知や啓発に取り組んでまいりたい。また、公務労協の調査結果で約4割が「パワハラを見聞きしたことがある」ということだが、周知パンフレット等にもあるように、見聞きした方は是非信頼できる上司や人事当局などに相談していただきたい。職員団体を通じて伝えることも有効だと思う。パワーハラスメントを職場から無くすためには、職員一人ひとりの意識と行動が重要と考えている。

 最後に、森永副事務局長が「本日の回答については、今後に向けての現時点における人事院としての考え方が示されたものと受け止めておく。引き続き、様々な課題に関する現状認識について、人事院と公務員連絡会との間で共有するため、前広に意見交換を含め協議をしていきたい。来年2月に改めて春季要求書を提出する。常勤・非常勤に関わらず、すべての職員の賃金・労働条件が改善されるよう、労働基本権制約の代償措置としての人事院の役割を踏まえ、引き続き努力することを強く求めておく」と重ねて要請し、回答交渉を終えた。