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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.14 2001年5月17日

連合官公部門連絡会

連合が公務員制度改革の「基本要求」決定、記者会見で発表

「労働基本権の完全回復、自主的な労使関係の確立」求める



 連合は5月17日開催の第22回中央執行委員会で、「21世紀の公務員制度・労働基本権確立の基本要求について」(別紙)を決めた。
 この「基本要求」は、官民共通の課題として公務員制度改革に取り組む視点からとりまとめたもの。そのなかで、現行公務員制度の問題点として、@採用年次による公務員の縦割り行政、Aキャリア組中心の官僚主導行政による弊害、B労使交渉・労働協約の禁止による人材育成の遅れ、を指摘している。そして、新たな公務員制度として、@一般の公務員に労働基本権を保障、A公正・透明な基準による人事管理、BT種キャリア制度の廃止、C公務員の市民的自由の保障、D解雇制限の法制化、労働基準法の適用、E「天下り」の禁止、などの要求を掲げている。
 記者会見で、鷲尾会長は「公務員制度改革は公務員のみの問題ではないとの認識から、官民を含めた合意のなかで『基本要求』をまとめた。政府のすすめる改革に対して積極的に働きかけ、公務員の労働基本権の完全回復と自主的な労使関係の確立を全面に打ちだしている」とのべ、ILO総会対策を含めて、連合参加の全構成組織、地方連合会の協力を得ながら公務員の労働基本権の確立と国民が求める新たな公務員制度への改革に取り組む考えを示した。


第22回中央執行委員会/2001.5.17

21世紀の公務員制度・労働基本権確立の基本要求について


はじめに
 政府の行政改革推進本部は、この3月27日に「公務員制度改革の大枠」を確認し公表するととも、6月には「基本設計」を取りまとめ、その後法改正作業に早急に取りかかるとしている。
 連合は、「連合の進路」で「官公労働者および公益産業労働者の労働基本権の完全回復をめざす」を明示し、毎年「労働基本権の回復」を要求に掲げてきた。今回の政府の公務員制度改革に対し、連合としてこれまでの方針を踏まえつつ、国民の期待に応える21世紀の公務員制度のあり方についての基本要求を取りまとめた。この要求を政府に早急に要請し、その実現をめざす。
 なお、この基本要求は、一般の行政職員の公務員制度に対する改革方針を示しているが、国営企業についてもこの考えに準じて改革をはかる。地方公務員については地方自治を踏まえつつ、労働基本権と労使協議の確立を基本にした改革の実現をはかる。 

1.国民が求める新たな公務員制度

(1) 国民本位の行政に対応した公務員制度への改革
 わが国の戦後の行政は、一貫して官僚主導型の画一的・中央集権的行政が支配してきた。これからの少子高齢化、情報化、国際化の社会において国民が生き甲斐を持って活動できるためには、官僚主導を改め、国民の意見が行政に参加・反映されるものとしなければならない。そのためには、情報公開の推進、国民参加の行政・政策評価システムの確立、中央集権から地方分権への転換、内閣主導の行政など国民の知恵と創意が反映される行政への改革が重要となっている。
 以上のような新しい行政のあり方をつくり出すため、21世紀の公務員制度は以下(2)〜(4)の3課題を達成しなければならない。

(2) 国民の負託に応えた公正な公務員制度の確立
 国民は、憲法と法律に則り、国民と共に考え、国民のために解決策を企画し、行政事務・サービスなどの職務を公正に実行し、情報公開し、国民に説明する公務員を求めている。それは、憲法15条2項「すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」との定めについて、国民のために、国民の意見を聞きながら、公正、中立、透明に企画し、法律を執行していく公務員制度である。

(3) 仕事に責任を持った、労働3権が保障された公務員
 一般の公務員の労働条件や職務については、働く者と協議・交渉をしながら、その改善がはかられなければならない。公正で生き甲斐をもって行政職務を遂行できるためには、不法な上司の職務命令でも従わなければならない現行のあり方を改め、賃金、労働時間等の労働条件については、労働3権(団結権、交渉権、ストライキ権)を公務員に保障しなければならない。

(4) 国民のニーズに従い、職務を改め執行する公務員制度への改革
 行政職務の内容は、国民と社会のニーズに対応して、国民のために見直し、国民の求める質に不断に応えていく必要がある。この仕組みを創るため、国民参加の行政(政策)評価制度を創設するとともに、行政職務を見直す制度を確立する必要がある。またこれと対応し労働組合が基準設定に参加した公正かつ納得的な人事評価制度に改めるべきである。さらに職務能力を計画的に高める能力開発・人材育成の制度を整える必要がある。

(5) 現行の公務員制度の問題点
@ 採用年次人事による公務員の縦割り行政
 現行の公務員制度には、行政各局・課等の「職務」をチェック・見直す制度が確立されていない。そのため、人事の配置、昇進などの人事管理は、職務から切り離され、採用年次中心の曖昧な人事管理となり、それが各府省・局・課中心の縦割で閉鎖的な行政を生み出している。
A キャリア組中心の官僚主導行政による弊害
 現行の行政は、T種キャリア組中心の人事が軸となり、「お上」意識が蔓延し、特権的、排他的な行政がまかり通っている。このため、一部政治家、高級官僚、特定業界との癒着行政が生み出され、官僚の「天下り」や「不祥事」問題が発生している。
B 労使交渉・労働協約の禁止による人材育成の遅れ
非現業公務員は、労働協約を締結すること、争議行為を行うことが禁じられ、その代りに人事院による賃金、労働時間等の民間準拠による改訂の仕組みが制度化されているが、この代償措置は、ILO結社の自由委員会が指摘(1983年)しているように、ア)労働者の参加が許されていない、イ)政府に勧告遵守の義務がないなど大きな欠陥がある。このため、一般の公務員の職務改善の提案が排除され、行政職務の改善が遅れ、一般の公務員の職務能力向上の意欲を殺いでいる。

2.21世紀の新公務員制度への基本要求
 国民の行政ニーズに対応して行政職務を見直していくとともに、一般の公務員には労働基本権を保障する公務員制度を構築する。

(1) 一般の公務員に労働3権を保障する
 一般の公務員には、労働3権を保障し、労働条件の決定と職務遂行のあり方を団体交渉・労働協約の対象とする。
 一部の人事執行を担う管理職および統治権に伴う直接公権力の行使にあたる職務(警察職員等)については、団結権を認めたうえで、ストライキ権の制約の条件を明らかにする。
 また、職務・定員、賃金、労働時間などの一般の公務員の労働条件決定において予算に定められていない場合には、内閣または立法府・議会の承認をうるとのルールを定めて公務における労働基本権のあり方を示す。

(2) 公務員の人事管理は、公正・透明な基準により職務・職責で処遇する
 一般の公務員(含む管理職)の人事処遇は、職務・職責に応じて処遇するものとし、その職務・職責に対応する処遇基準を労働組合参加のなかで定めて適用する。また、行政の職務・職責は、国民のニーズや社会情勢の変化に対応して見直す制度とする。
 人事管理制度に適用する人事評価制度は、公平・公正性、透明性、納得性、客観性のある基準を定めて、評価するものとする。また人事管理の適用について労働組合が参加した苦情処理制度を設ける。
 さらに、全ての公務員を対象とした教育訓練・人材育成プログラムを備える。

(3) T種キャリア制度を廃止し、一般の公務員から管理職に登用する
 T種試験制度とその採用者を幹部候補生として扱う「キャリア制度」を廃止し、採用試験制度については現行制度を大卒、高卒程度の制度に改める。
「管理職」への登用については、一般の公務員から能力と実績による選抜方式で登用するものとする。
 この選抜制度は、「能力・実績による管理職登用の評価基準」を定め、この基準に則り登用を行う。

(4) 内閣主導の行政を確立するため政治任用職を法定する
 内閣総理大臣および各府省大臣が直接任命する政治任用職を設ける。その人数は法定して明示するとともに、その就任期間については任命権者の在職内とし、その処遇は職務・職責に対応して一般の公務員に準じるものとする。

(5) 一般の公務員に市民的自由を保障する
@ 不法、不当な職務命令を排除する不利益取り扱い禁止を法定する。
A 公務員の厳しい政治的行為の制限規定については、一般の公務員(除く管理職)の場合には一定条件の政治活動は行いうるものに改める。
B 無限定の「官職全体の不名誉となる」信用失墜行為に関する服務規定については社会常識に則った基準を示す。

(6) 公務労働委員会の設置、解雇制限の法制化、労働基準法適用などを整備する
@ 不当解雇を防止するため、解雇権濫用法理、整理解雇の4要件の法制化をはかる。また労働組合との事前協議を定める。
A 賃金など官公部門の団体交渉が不調に終わった場合には、行政組織から独立した公労使3者構成の公務労働委員会が斡旋、調停、仲裁を行う制度とする。
B 一般の公務員に対し、労働組合法、労働基準法を適用する。また雇用保険の適用について検討を行う。
C 団体交渉になじまない管理運営等の方針について労使が意思疎通を深めるために労使協議制度を設ける。

(7) 省庁間、官民の人事交流の制度化と各省共通適用の人事処遇基準を定める
@ 1府12省庁の縦割り行政を廃して職務・職責に必要な人材を配置・育成するため、各府省間の人事交流、配置転換、関係団体への出向措置に関わるルールを定め、積極的に人事交流をはかる。
A官民の人事交流を促すため、民間人を公務員に採用する際には、能力と実績による採用基準を明示した公募採用とする。また、公務員の一定期間の民間企業派遣については労働組合参加で派遣基準を定めることとする。
B 各府省から独立した専門的な「人事行政機関」を置き、労働協約を踏まえつつ中立、公正な職務執行を確保するため、全省庁に共通適用される「公務員人事処遇基準」を定める。

(8) 公務員の「天下り」を禁止する。
高級官僚のみならず公務員の「天下り」は禁止する。公務員の民間企業への転職(転職に関わる離職を含む)については、第3者機関が厳格な基準により審査を行うものとする。

以 上  


第22回中央執行委員会/2001.5.17

公務員制度改革・労働基本権確立の実現の取り組みについて


 第22回中央執行委員会決定(5月17日)の「21世紀の公務員制度・労働基本権確立の基本要求について」にもとづき、連合は、構成組織、地方連合会の協力を得ながら、官公部門における労働基本権の確立の実現をめざす。

1. 連合の取り組み

(1) 連合は、上記の「基本要求」について、早急に政府に要請するとともに、その実現に取り組む。

(2) 連合は、連合官公部門連絡会と連携をとりながら、「基本要求」の実現に向けた取り組み行動を企画し、実施する。

(3) 連合は公務員制度をILO87号条約などの国際労働基準と適合させるため、ILO総会の基準適用委員会等に積極的に対応していく。

2.構成組織、地方連合会の取り組み

(1) 構成組織、地方連合会は、連合の「基本要求」についての学習会などを開催し、その要求内容について理解を深める。

(2) 連合本部が企画、決定した実現の取り組み行動に積極的に参加するとともに、労働基本権確立の取り組みを進める。

3. 当面の要求実現の取り組み

(1)「21世紀の公務員制度のあり方を考えるシンポジュウム」の開催
 @ 主催者:連合と連合官公部門連絡会の共催
 A 開催日時と場所:5月22日(火)13時00分〜16時30分 
 B 場所 : 東京・「田町交通ビル」6階ホール(田町駅下車)芝浦3-2-22
 C 規模 : 310名(官公部門連絡会250名、民間構成組織50名)
D 次第  ア)講演 「公務員制度の改革課題(仮題)」佐藤英善早稲田大学教授
       イ)パネルディスカッション: パネラー・学者、マスコミ、労働組合等。

(2) 地方連合会による「労働基本権確立学習会」の開催(5月中旬から6月)。

(3)「労働基本権確立・公務員制度改革を求める中央集会」の開催
 @主催者:連合と連合官公部門連絡会の共催
 A日時:6月14日(木)18:30〜
 B場所:日比谷野外音楽堂

以上