6月5日からスイス・ジュネーブで開催されていた第89回ILO総会が、21日閉会した。閉会にあたって、連合官公部門連絡会は、「ILO総会閉幕にあたっての見解」(資料1)、連合は、「ILO総会における公務員制度改革・労働基本権保障問題の審議結果について」(資料2)を発表した。
今回のILO総会・条約勧告適用委員会では、連合、連合官公部門の取り組みもあり、日本政府の一方的な公務員制度改革が、ILO87号条約違反として個別審査の対象に取り上げられた。
6月12日、条約勧告適用委員会では、冒頭の日本政府代表の発言に対して、労働側代表のコートベックス・スポークスマンが経過と見解を表明、日本の労働側委員の主張に続いて、フランス、パキスタン、アメリカ、スウェーデン、ドイツ、シンガポールの労働側代表も、日本政府の87号条約適用状況について、批判の発言を行った。
その結果、日本政府から、@閣議決定や「大枠」は、単なる政府の検討方向を示したものであり、公務員制度改革の具体的内容を示したものではないこと、A従って、それらの内容は、今後の交渉・協議を制約するものではないこと。制度の具体的内容は関係職員団体との交渉・協議で決定していくこと、B6月末の「基本設計」も制度の具体的内容を決定するものではなく、「基本設計」後も関係職員団体と誠意ある交渉・協議を行っていくこと、C日本政府はILOがこれまで示してきた国際基準や見解を充分認識し、ILOには今後も公務員制度改革の状況を適宜情報提供していくこと、などの見解を引き出すことができた。
この条約勧告適用委員会の審議状況については、条約勧告適用委員会の議長報告(資料3)として、6月21日の全体会議で採択された。
資料1
2001年6月22日
ILO総会閉幕にあたっての見解
連合官公部門連絡会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部
1.6月5日に開会された第89回ILO総会は、条約勧告適用委員会が87号条約の日本の適用状況と今回の公務員制度改革に関わる問題を個別審査案件として取り上げ、日本政府の見解と併せて日本の条約違反状況を指摘し日本政府に対し誠実な政労交渉に基づく改善を求めた議長報告などを採択し、21日、閉幕した。
2.連合は、このことに関わって「官民全体で公務員制度改革・労働基本権保障を実現する取り組みを強化する。今回のILO条約勧告適用委員会で明らかにされた日本政府の見解を、国際公約として重く受け止め、それに沿って問題解決が早期に図られるよう最大限の取り組みを行う」との見解を発表した。
連合官公部門連絡会は連合見解を積極的に支持し、この問題の直接の当事者として引き続き連合と共に、ILOが指摘した国際労働基準の実現のために、公務における労働基本権確立と民主的公務員制度改革のために全力を傾けて取り組みを進めるものである。
3.連合官公部門連絡会は、日本政府が今回の公務員制度改革に関わってわれわれとの交渉・協議を通じて決定していくとの見解をILOの場において表明したことを重視し、その誠実な履行を求めるものである。
日本政府は、直ちにあらゆるレベルでわれわれとの交渉・協議のテーブルにつき、政府見解を実際の行動によって示し、公務における対等・平等な労使関係の構築に努めるべきである。
4.公務員制度改革を巡る取り組みの局面は、今後、労働基本権確立の取り組みとあわせ、人事・給与制度、評価制度などの各論にわたる交渉・協議の段階にはいることとなる。
連合官公部門連絡会は、交渉・協議と合意に基づいた公務員制度改革を進めるためには、全国の職場を基礎とした中央地方の連携した取り組み、連合に結集する民間の仲間、幅広い社会的支持が不可欠であることを改めて認識し、引き続き全力を挙げて取り組みを進めるものである。
資料2
2001年6月22日
ILO総会における公務員制度改革・労働基本権保障問題の審議結果について
日本労働組合総連合会
1.6月5日から21日の会期で開催された第89回ILO総会の条約勧告適用委員会で第87号条約の適用に関して日本の公務員制度・労働基本権問題が個別審査に取り上げられた。日本の政・労代表の委員を始め多くの委員が議論に参加した結果を集約した委員会議長の見解は、日本の条約違反の状況を指摘し、誠実な政労交渉に基づき早急な改善を日本政府に求めるものとなった。
2.日本の労働側委員は、連合の公務員制度改革・労働基本権保障に関する基本的考え方を基礎に、@消防職員の団結権否認やスト権の一律全面禁止に見られるように日本の公務員関係の法制度は第87号条約に明らかに違反していること、Aこの点につき長年ILO条約勧告適用専門家委員会から指摘を受けているにもかかわらず改善されておらず早急に具体的な改善措置を取るべきこと、B現在、日本政府によって一方的に進められようとしている公務員制度改革に関して、関係組合との交渉・協議がなされていないこと、C賃金・労働条件決定システムの変更という重大事項に関してすら交渉・協議がないことなど、ILOの原則・条約に違反していることを指摘した上で、次の3点について明確な見解を総会委員会として示すことを求めた。
@現在進められている公務員制度改革で、現行の公務員法制の違反状況の解消を含め、日本政府はILO基準の実現に最大限の努力をすること。
A日本政府は、誠実な交渉・協議、合意に基づき公務員制度改革の成案を決定すべきこと。
Bこれまでの閣議決定や「大枠」は、今後の交渉・協議を一切制約するものではないこと。
3.労働側の議論に対する日本政府代表の見解は、以下の内容であった。
@閣議決定や「大枠」は、単なる政府の検討方向を示したものであり、公務員制度改革の具体的内容を示したものではないこと。
A従って、それらの内容は、今後の交渉・協議を制約するものではないこと。制度の具体的内容は関係職員団体との交渉・協議で決定していくこと。
B6月末の「基本設計」も制度の具体的内容を決定するものではなく、「基本設計」後も関係職員団体と誠意ある交渉・協議を行っていくこと。
C日本政府はILOがこれまで示してきた国際基準や見解を充分認識し、ILOには今後も公務員制度改革の状況を適宜情報提供していくこと。
4.連合は、官民全体で公務員制度改革・労働基本権保障を実現する取り組みを強化することを確認している。今回のILO条約勧告適用委員会で明らかにされた日本政府の見解を、国際公約として重く受け止め、それに沿って問題解決が早期に図られるよう、最大限の取り組みを行う。
資料3
ILO条約勧告適用委員会議長報告(抜粋・仮訳)
本委員会は、日本政府代表の陳述とそれに続いた議論に留意する。本委員会は更に、専門家委員会が消防職員の結社の自由権、公務員の団結権、病院職員の状況など、種々の側面に言及してきたことに留意する。
本委員会は、いくつかの労働組合団体が、消防職員に対する結社の自由権の否定に関して意見書を提出したことを考慮する。
本委員会は、政府が関係労働組合との誠意ある対話に入ること、そしてできるだけ早急に職員の結社の自由権を保障する措置をとることを希望する。
本委員会は、日本政府に対して、関連事項に関して関係公共部門労働組合と社会的対話を確立するための努力を行うことを強く主張する。
本委員会は、日本政府が次期報告書の中で詳細な情報を提供して、専門家委員会がこれらの状況が改善したことを確認するために本件を詳細に検討できるようにすることを希望する。そして近い将来本条約の適用において実際に進歩があったかどうかを本委員会が審議する状況になることを望む。
以上