みんなの力で、労働基本権の確立と民主的な公務員制度改革を実現しよう

労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.37 2001年6月29日

連合官公部門連絡会

第4回対策本部会議を開催

12月「大綱」を焦点に7月以降の取組みを強化
「基本設計」に対する「見解」を発表し、厳しく批判



 政府の行政改革推進本部が「公務員制度改革の基本設計」を発表したことを受けて、連合官公部門連絡会は6月29日午後1時から、総評会館で第4回対策本部会議を開いた。会議では、「基本設計」に対する連合官公部門の「見解」(資料1)を確認するとともに、12月を目途とした政府の「公務員制度改革大綱」策定を焦点に、「7月以降内閣官房と本格的な交渉・協議に臨む」など今後の取り組み方針を決めた。
 会議は、対策本部の榎本本部長(自治労委員長)が座長に着き進められた。
 はじめに事務局から、対策本部を設置以降3カ月に及ぶ取り組みの経過を報告、そのうえで斎藤事務局長が、「7月以降の取り組み」方針と「公務員制度改革の基本設計」に対する見解(案)を提案した。そのなかで、「『基本設計』が当該労働組合との実質的な交渉がないまま一方的に決められたことは問題である。ただ、『大枠』公表以降3カ月にわたる闘いにより、政府のスケジュールを変えさせ『基本設計』を『新たな公務員制度の骨格と具体化にあたっての検討課題を示すもの』にまで後退させて、『今後、制度の具体化に向けて組合との交渉・協議によりその内容を決めていく』ことを約束させることができた」とのべ、構成組織の総力をあげた取り組みの成果として評価した。そして、7月以降の取り組み方針を次のように提起した。
@ 12月を目途とした政府の「公務員制度改革大綱」策定に焦点を合わせ、7月以降も取り組み態勢を継続する必要がある。このため対策本部を存続させ必要な対策に取り組む。
A 「基本設計」については、後日、使用者たる政府から正式に提案を受け、その後、内閣官房に対し、ILOでの日本政府見解に基づき「合意」をめざす交渉・協議を誠実に行うことを求める。その際の具体的なスタンス等については、7月6日に開く第8回書記長会議で協議する。
B 「公務員労働者の労働基本権確立」に向けて政党対策に取り組む。
C 「私たちの提言」についての組合員の理解を進めるため、引き続き地方での学習会・集会を連合官公部門レベル等で開催する。
D 「基本設計の問題点と解説」、「ILOの見解」を中心とした『討議資料bR』の作成をはじめ、「対策本部ニュース」の発行、ホームページの公開を行うなど、情報提供を行う。
 以上の方針提起のあと、「基本設計」に対する見解を説明し、@人事院など現行の人事行政の枠組みを根本から見直す方向を提起しながら、労働基本権問題の解決を先送りしたこと、推進事務局が現行法制度の枠組みを実質的に超えた作業を進め、交渉事項である賃金・労働条件に関わる制度内容を一方的に盛り込んだこと、などきわめて遺憾、Aまた、「入り口選別主義」を温存したまま評価に昇進や処遇を直結させる人事制度、理念なき能力等級・給与制度への切り替え、「天下り」容認の制度見直しなど、一部特権官僚の処遇改善を意図したもの、と指摘し、厳しく批判した。
 こうした取り組み方針と「見解」を全体で確認、労働基本権の確立と民主的な公務員制度改革の実現に向け取り組を一層強化していくことを意思統一して、対策本部会議を終了した。



連合が事務局長談話を発表

 連合は、29日午後4時からの定例記者会見で、「公務員制度改革の基本設計に対する見解」を笹森事務局長談話(資料2)として発表した。また、連合官公部門の対策本部会議で確認した「見解」についても発表し榎本連合会長代行が考え方を説明した。
 「事務局長談話」では、@推進本部が労働組合と協議しないまま一方的に決定・発表したことは極めて問題で、同意できないA第三者機関の人事院の役割を縮小するなら当然労働基本権を認め、賃金・労働条件は労使の団体交渉で決めるシステムに改めるべき、B「キヤリア制度」の改革に目を向けず、「天下り」事実上容認するなど特権的、排他的な官僚行政の改革を回避している、として、「基本設計」を批判した内容が盛り込まれている。



<資料1>

「公務員制度改革の基本設計」に対する見解


(1) 政府の行政改革推進本部は、本日、「公務員制度改革の基本設計」を決定した。この「基本設計」は、3月に公表された「公務員制度改革の大枠」に基づいて行政改革推進事務局が作業を進めてきたもので、新たな公務員制度改革の骨格と具体化に向けた検討課題を政府全体の共通認識として示したものとされている。行革推進事務局は、この「基本設計」に基づいて12月を目途に法制度の具体的内容やスケジュールなどを盛り込んだ「公務員制度改革の大綱」をまとめるべく引き続き作業を進めるとしている。

(2) 本日決定された「基本設計」では、@各府省ごとの人事管理体制を確立して人事院など中央人事行政機関の組織と役割を抜本的に見直す、として現行の人事行政の枠組みを根本から見直す方向を提起しながら、われわれが民主的公務員制度改革の前提として強く求めてきた労働基本権問題の解決をまたしても先送りしたことA行革推進事務局が現行の法制度の枠組みを実質的に超えた作業を進め、本来的に交渉事項である賃金・労働条件に関わる制度内容を一方的に盛り込んでいることなど、きわめて遺憾な内容となっている。
 また、提起されている個別的な公務員制度改革の内容についても、基本的な理念や全体像の提示なき「制度いじり」にすぎないものとなっており、「入り口選別主義」を温存したまま評価に昇進や処遇を直結させる人事制度や理念なき能力等級・給与制度への切り替え、天下り容認の制度見直しなど、霞ヶ関の一部特権官僚の処遇改善だけを意図したきわめて問題のある制度見直しだと批判せざるをえない。

(3) とはいえ本日の「基本設計」において、推進事務局が当初想定した性格や作業スケジュールを大きく変更させたことや具体的な制度設計に踏み込ませなかったことなどは、3月以降のわれわれの組織の全力を挙げた取り組みの成果として確認できるものである。
 連合官公部門連絡会は、3月末に「大枠」が公表されると同時に「労働基本権確立・公務員制度改革対策本部」を設置して、行革推進事務局に交渉・協議と合意に基づく公務員制度改革を強く求めるとともに、連合とともに3次にわたる中央行動や地方行動、緊急署名行動(約170万人分を集約)などさまざまな取り組みを進めてきた。また、労働基本権確立と公務員制度の抜本改革に向けたわれわれの基本姿勢を明確にした「提言」をとりまとめ、連合の「基本要求」とともに連合加盟全民間構成組織からの支持署名を得るなど、国民的な取り組み課題に相応しい運動の広がりを追求してきた。
 これらの運動と併行して、6月5日から開催された第89回ILO総会・条約勧告適 用委員会で連合・連合官公部門連絡会は、公務における労働基本権の現状や今回の公務 員制度改革の進め方が87号条約に違反している点を追及し、日本政府から@閣議決定や「大枠」は政府(使用者側)の検討状況を提示したものにすぎず、今後の交渉・協議を 制約するものではなく、制度の具体的な内容は交渉・協議を通じて決定していくことA 今後も関係職員団体と誠意ある交渉・協議を行っていくこと、などの見解を引き出した。
 この見解は、今回の公務員制度改革に関わって日本政府がこれまでの一方的な検討姿勢を改め、われわれとの交渉・協議を通じて制度内容を決定していくとの姿勢を国際公約として示したものとして受け止めることができる。
 以上のような取り組みの経過にたち、連合官公部門連絡会は26日に石原行革担当相と交渉を持ち、今後われわれとの交渉・協議を通じて制度内容を決定していくとの政府の基本姿勢を確認し、今後の取り組みの足がかりを確保した。

(4) 本日の「基本設計」を経て公務員制度改革をめぐる取り組みは、今後、12月に予定される「大綱」に向けて、先送りされた労働基本権問題の決着を求める取り組みが山場を迎えるとともに具体的な制度設計をめぐる交渉・協議の局面に移行していくこととなる。われわれは、まず政府・内閣官房との間で交渉・協議の基本的な性格やルールを改めて確立し、交渉・協議と合意に基づく公務員制度改革を進めていかなければならない。
 連合官公部門連絡会は、当面する参議院選挙への取り組みや人事院勧告に向けた取り組みと併せ、引き続き労働基本権の全面的な確立と公務員制度の民主的で抜本的な改革とわれわれの「提言」の実現に向けて、広く国民と連携しながら、連合の仲間とともに全力で取り組みを進めていくことを宣言する。

 2001年6月29日

連合官公部門連絡会労働基本権確立・公務員制度改革対策本部

<資料2>


2001年6月29日

「公務員制度改革の基本設計」に対する談話

日本労働組合総連合会
事務局長 笹森  清


1.本日6月29日、政府の行政改革推進本部は、新たな公務員制度の骨格とその具体化への検討課題を示した「公務員制度改革の基本設計」を決定し、本年12月を目途に、具体化の検討を進め、「大綱」を策定すると公表した。その内容は、「能力等級制度」の導入等を柱とした新たな人事管理システムの確立、、「国家戦略スタッフ」の創設などが掲げられ、「引き続き労働基本権の制約の在り方との関係を十分検討する」としている。
 この「設計」に対し、連合は連合官公部門連絡会とともに、推進本部が労働組合と協議してまとめるよう強く求めたが、それが行われないまま一方的に「基本設計」を決定・公表したことは極めて問題であり、同意できない。

2.「基本設計」では、各府省の人事・組織管理体制を各大臣中心に強化し、人事院など中央人事行政機関の役割を「事後的チェック」に後退させる考えを打ちだしている。その一方で、公務員労働者の労働基本権の保障については、「引き続き検討」として先送りした。労働基本権制約の代償機能として存置されている第三者機関の人事院の役割を縮小するのであれば、当然のこと公務員に労働基本権を認め、賃金など労働条件は労使の団体交渉で決めるシステムに改めるべきである。
 また、キャリア中心の官僚主導行政の弊害が批判されているにもかかわらず、T種採用試験制度を存続させるなど「キャリア制度」の改革に目を向けようとしていない。また、官僚の「天下り」については、各府省の大臣承認制に改めるとし事実上容認している。これらは国民が強く批判している特権的、排他的な官僚行政を改革することを回避しているものであり、認められない。

3.この6月開催の第89回ILO総会で、連合は、日本政府が労働組合と協議することなく一方的に公務員制度の見直しを進めていることを厳しく追及した。その結果、日本政府代表から「今後は関係職員団体との誠実な交渉・協議に基づき検討を行う」との見解を引きだした。政府はこの国際公約を守り、今後の検討においては、労働組合と「誠実な交渉・協議」を行わなければならない。

4.連合は、21世紀の公務員制度については、「基本要求」で示したように公務部門における労働基本権の確立、交渉・協議による人事管理、評価システムの確立、公務員への労働基準法の適用などを求める。これは、国民本位の行政に対応し仕事のあり方については労使交渉で決める民主的な公務員制度への改革をめざすものである。この「基本要求」の実現をめざし、連合は構成組織と連携し、労働組合との交渉・協議により公務員制度の改革を進めるよう全力をあげて取り組む。

以上