連合官公部門連絡会は9月17日、第4次中央行動を実施した。この中央行動は、行革推進事務局が人事院から新たにスタッフを入れて具体的な制度設計の検討作業を進めていることから、12月の「公務員制度改革大綱」の策定に向けて「労働基本権の確立」等の要求実現を目指した取り組みとして行ったもの。東京・社会文化会館での「労働基本権を確立し民主的な公務員制度改革を求める中央集会」には800人の組合員が参加した。中央集会に先立ち、対策本部の企画委員が行革推進事務局長と交渉し、「今後の交渉・協議のルール」について推進事務局の見解を求めた。なお、連合官公部門連絡会の中央集会の前段に、公務員連絡会として中央集会を開き、公務員賃金の確定と民主的な公務員制度改革の実現に向け取り組むことを意思統一した。
【9.17中央集会の概要】
中央集会は、午後3時から宮入副事務局長の司会で開会され、集会議長に大原代表委員(自治労委員長)を選出した。
大原代表委員は、集会議長就任にあたって、「本日の集会は、民主的な公務員制度改革を求める取り組みの、基本スタンスを確認するとともに、闘争開始宣言の意味を持っている。意思統一を行い、政府が12月に取りまとめようとしている『大綱』に対して、しっかりと闘っていきたい」とあいさつした。
主催者としてあいさつに立った榊原代表委員(日教組委員長)は、まず、政府が6月に「基本設計」をとりまとめ、12月にむけて「大綱」を策定しようとしていることなど、現在の情勢を確認したうえで、「基本設計」と政府の姿勢の問題点について、以下のとおり指摘した。
@ 制度改革の前提であるべきはずの労働基本権確立の課題を先延ばししている。
A 行革推進事務局が示している改革の内容は、一部の官僚の処遇、省益が優先されており、全体がどうあるべきなのかなどの理念が明確にされていない。このような改革は国民が求めているものからはかけ離れている。
B 本来中立であるべき人事院の職員が、大量に行革推進事務局に任命されて、作業を進めており公平性を欠いている。
続いて、政府の「基本設計」に対する連合官公部門のたたかいの到達点として、@ILO闘争に取り組み、「制度の具体的内容については、今後、誠実に交渉・協議を行うなかで決まるもの」と約束させたこと、A3回におよぶ中央行動、シンポジウム、170万人の緊急署名集約など、組織をあげた取り組みを行ったこと、B連合本部として「基本要求」を確認し、連合加盟の全民間構成組織から団体署名と協力を得ることができたこと、をあげ、これらの取り組みによって「基本設計」の性格とスケジュールを変更させたことを評価した。
そして、このような取り組みの経過を踏まえたうえで、以下のように訴えた。
「9月11日、石原行革担当大臣と交渉して、@「大綱」の性格や位置付け、法制度見直しまでの基本的なスケジュールを示すこと、A10月末までに労働基本権のあり方について考え方を示すこと、B今後の交渉を進めるにあたってのルールを確認すること、などについて回答をするよう申し入れた。
運動は、これから正念場をむかえる。情勢は非常に厳しいが、21世紀にふさわしい民主的で国民に開かれた公務員制度の確立に向けて、政府の引き伸ばしやまやかしを許さず、抜本改革を目指していく。」
続いて、斎藤事務局長が、以下の通り経過の報告と基調を提起した。
@ 1月に行革推進事務局が設置されたことに対応して、連合官公部門連絡会も3月に対策本部を設置し、各種の取り組みを行ってきた。
A 9月11日、石原行革担当大臣と交渉を行ったが、今後のスケジュールについて明確にしない、労働基本権の確立については、10月末に明確にするのは困難である、と回答するなど、政府の態度は不誠実で、誠意が感じられない。
B 9月17日に行革推進事務局と交渉を行った(詳細については、交渉の概要に掲載)。
C 今後、10月末を回答期限として、11月5日に東京・明治公園で1万人中央集会を配置し、全国的なたたかいを展開する。また、10月に開催される連合大会においても、アピール文の採択を要請している。地方においては、地方連合会、民間労働組合と連携・協力して、学習会などを開催して、幅広く国民と連携したたたかいを追求したい。
その後、各産別からの決意表明が行われ、国税労組の萩原執行委員、都市交の染谷書記次長、全林野の河田書記長が、それぞれの職場の現状を報告し、労働基本権の確立にむけて、全力をあげて取り組むことを表明した。
最後に、全郵政の増田中執が集会決議(別記)を読み上げ、全体で確認。
閉会挨拶で、丸山代表委員(国公総連委員長)は、「私たちが危機意識を持ち、公務員制度を考えることが必要だ。12月まで、もう一度、腹を据えて取り組んでいきたい。また、もう一方で、政府が進めている政府特殊法人の廃止・民営化についても、重要な課題である。連合官公部門連絡会に加盟する政労連の仲間を支援し取り組んでいく必要がある。市場万能の社会、競争社会ではなく、安心・公正の社会にむけて取り組んでいこう」と訴え、団結ガンバローで締めくくった。
(別記)
集 会 決 議
去る6月29日に公表された「公務員制度改革の基本設計」について、政府・行革推進事務局は、その性格を「新たな公務員制度の骨格とこれを具体化するに当たって必要となる検討課題を使用者の立場から示すもの」とし、本年12月を目途に「公務員制度改革大綱」を策定するとしている。しかし、「基本設計」の内容は、複雑・高度化する行政と公共サービスに適切に対応するための公務員制度の改革という基本的な理念が欠落している小手先の検討であるとともに、霞ヶ関のごく一部の特権的なキャリア官僚の処遇の改善を目的としたものに他ならない。
しかも、最大の問題は、各府省の人事・組織管理体制を強化し、労働基本権の代償機能としての人事院の役割を大きく後退させる考えを打ちだしながら、その一方で公務員労働者の労働基本権問題については、結論を先送りしていることである。
政府・行革推進事務局は、労使関係の一方の当事者である使用者としての政府の作業に中立・第三者機関である人事院から大量のスタッフを入れ、新たな人事・給与制度の設計に向け急ピッチで作業を進めている。
一方、私たち連合官公部門連絡会は、「基本設計」に対するこれまでの取り組みを踏まえ、「大綱」に向けた公務員制度改革についての実質的な交渉・協議の開始にあたり、石原担当大臣に対して「今後の交渉・協議を進めるに当たっての申入れ」を実施した。
その第一は、「大綱」の性格・位置付け、法制度見直しまでの基本的なスケジュールを早期に明らかにさせること。
第二に、労働基本権のあり方は、公務員制度の基本的課題であり、具体的な制度設計の前提となるべき事項であることから、10月末までにその考え方を示させること。
第三に、今後の交渉・協議のルールを確認させ、合意事項については誠意を持って実行させることである。
私たちは、本日の中央集会を皮切りに連合の仲間とともに全国から運動に取り組み、11月5日には1万人中央集会を軸とした全国統一行動を配置する。
公務員制度改革は、すでに12月の「大綱」策定に向けて正念場を迎えている。私たちは、より一層の態勢強化をはかり、最後まで総力を挙げた取り組みを展開し、「運動の目標」である、@労働基本権を確立し団体交渉による賃金・労働条件決定制度の実現、A新たな人事管理システム設計の前提としての評価制度に係る「4原則2要件」の確立、Bキャリア制度を廃止し「天下り」を禁止した民主的で国民に開かれた公務員制度改革の実現、を目指すものである。
以上、決議する。
2001年9月17日
連合官公部門連絡会
労働基本権を確立し民主的な公務員制度改革を求める9.17中央集会
【行革推進事務局長交渉の概要】
中央集会に先立ち、行革推進事務局との交渉が17日午前9時30分から行われた。11日の大臣交渉で石原行革担当大臣から、「今後の交渉・協議のルールの在り方等については事務局とよく相談してほしい」の見解表明があり、これを受けて推進事務局の考えを質すため持たれたもの。
交渉には、行革推進事務局側から西村事務局長、春田公務員制度等改革推進室長、高原参事官らが対応、対策本部側からは、福山(自治労)・戸田(日教組)・村瀬(国公総連)各企画委員と斉藤事務局長、宮入副事務局長らが参加した。
冒頭、組合側は、「先の申入れ事項のうち、今後の交渉・協議を進めるに当たってのルール等を確認したい」として、@公務員制度改革の取り組みの現状と今後の作業スケジュール、A交渉・協議の対応体制、メンバーの相互確認、B賃金・労働条件に関わる交渉事項とそれ以外の協議事項の整理及び政府として約束した「誠意ある交渉・協議」の履行、C交渉・協議の議事録確認と両者の合意事項の文書確認、について見解を求めた。
これに対し推進事務局側は、次のような見解を示した。
@ 公務員制度改革については、6月29日に「基本設計」を行革推進本部として決定した。先般、行革推進事務局の組織・人員の強化をはかったところで、今後、「基本設計」にしたがってさらに詳細な検討を行い、12月を目途に「公務員制度改革大綱(仮称)」を策定し、改革に向けた内容等を明らかにしていくことにしている。
なお、当面の予定としては、9月中に人事制度についての基本的な考えのたたき台として「新人事制度の基本構造」(議論のたたき台)をまとめて、職員団体を含め関係者に提示し議論の出発点としたいと考えている。
A 交渉・協議の対応体制、メンバーについては、双方円滑に進められるよう担当レベルでよく相談して確認したい。
B 今後の検討作業を進めるに当たっては、できるだけ幅広く提示して職員団体と誠実に交渉・協議してまいりたい。
C 交渉・協議の確認については、要望の主旨を踏まえ、職員団体への提案についてはなるべく文書で提案することを考えている。したがって、さらに文書で確認する必要は生じないと考えているが、これからの交渉・協議の過程で特に確認の必要が生じたときには、その案件に応じどのように対処するかよく相談したい。
こうした見解に対し組合側は、@12月の「大綱」は閣議決定とする内容になるのか、A交渉と協議の課題を整理して提示すべきだ、Bこの間の経緯から交渉・協議の意味合いについては、国公法108条の5にとらわれずに行うものと理解しているがどうか。交渉・協議の節々で合意したものについてはきちんと文書確認すべきだ、と重ねて見解を求めた。
これについて行革推進事務局側は、@「大綱」の性格については、まだ内容が固まっていないので閣議決定とすべきかどうかいえる段階にない。「大綱」に制度改革のすべてを盛り込むことは難しいと考えている、A交渉課題の区分けについては、それぞれの課題は密接に関連しているので、しぼらずに公務員制度改革の全般にわたって幅広く誠実に交渉・協議を行いたいと考えている、B公務員制度改革については、この間、推進事務局が交渉当事者として対応しており、国法法上の交渉の性格とは異なるものと理解している。合意事項の扱いについては、交渉・協議の過程で特に確認が必要が生じたときにどう対処すべきか相談したい、との考えを示した。
組合側は、こうした見解について不満を表明、今後さらに事務レベルで「交渉・協議のルール」について詰めることにし、交渉を終えた。
以上