行革推進事務局は、現在急ピッチで12月「大綱」策定に向けた作業を進めている。その作業スケジュールは、11月上旬頃に「新人事制度の具体案」を各府省や「対策本部」に提示して意見を聞きながら、12月に入って「大綱」原案を提示、12月中には「大綱」を決定するというもの。
行革推進事務局は、11月上旬の「新人事制度の具体案」の提示に先立って、9月20日、「新人事制度の基本構造」なる議論のたたき台を「対策本部」に提示し、意見を聞きたいとしてきた。この提示を受けて「対策本部」は10月12日に開いた書記長会議で、「基本構造」については、@「大綱原案」といった性格ではなく単なる作業の途中経過の報告資料であり、その位置づけが曖昧であることや賃金・労働条件決定制度の在り方や労働基本権問題についての考え方がまったく示されていないこと、などから、対策本部としては政府がILOの場で約束した「交渉・協議」の対象として位置づけることはできないことAしかし一方で、「大綱」作業は着々と進められており、これを全く無視することは行革推進事務局に一方的な作業を許すこととなり得策ではないことから、「大綱」原案作業に対する事前チッェクの意味も含め、「基本構造」については「意見交換」として対応すること、を確認した。
そして、「対策本部」に設置したプロジェクトを中心として、3回にわたって行革推進事務局との意見交換を行ってきた。
○第1回 10/9 「労働基本権問題と人事・給与制度との関わり」
○第2回 10/16 「能力等級制度と任用制度」
○第3回 10/24 「給与制度、評価制度等」
プロジェクトは、それぞれの課題ごとに疑問点・問題点を追及したが、推進事務局から納得行く見解表明は行われていない。また、行革推進事務局は、一方でこの「意見交換」とは関わりなく「新人事制度の具体案」作業を着々と進めており、その一方的な作業姿勢は厳しく批判されなければならない。
「対策本部」は24日に開いた書記長会議で、こうした経過を踏まえながら、これまでの既定方針を堅持して10月末に労働基本権問題の回答を求める取り組みを強めながら、「新人事制度の具体案」の提示を期に「交渉・協議」に移行していくことを確認している。
以下、「新人事制度の基本構造」をめぐる1〜3回の行革推進事務局との意見交換の経過を報告する。
行革推進事務局との意見交換要旨(No.1)
──「基本構造」と「大綱」の関係、基本権の取扱──
日 時 2001年10月9日(火)14時から15時30分
場 所 推進事務局会議室
出 席 者 組合側 対策本部プロジェクト
推進事務局側 高原参事官、他3名
※ ○下線が組合側発言
○「基本構造」の位置づけ等はどのようなものか。
「基本設計」では、能力等級制度や給与制度、評価制度など、各制度間の関係が不明確であったし、<検討項目>も羅列してあっただけだったので、「基本構造」はこれらについて、制度間の有機的関係など検討が進んだ者を示したものである。12月の「大綱」に結びつけて行くための議論のたたき台として、意見を聞くべく、各府省、組合に示したものである。
○ 「大綱」に向けた今後のスケジュールは。
「基本構造」は、その内容をそのまま「大綱」にストレートに持っていくという性格のものではなく、「大綱」の原案というものではない。さらに今後、いろいろな議論を踏まえて、もう少し細かいものを各府省、組合に示したい。時期は11月に入るか入らないかぐらいと考えており、デテイル(=細部)を詰めたものを示せるよう中で議論しているところである(人事、給与制度関係)。
この「具体案」(仮称)と「大綱」の関係だが、「大綱」の形をどうするかまだ決めていない。人事、給与制度以外の項目も含めて議論がどこまで詰まるか、それを踏まえて、「大綱」の中に入れるべき要素を確定して行かなければならないが、その中身は示したいと考えている。しかし、示すものと「大綱」の書式は異なるのではないかと思う。そういう意味で「具体案」は、「大綱」の原案・文案そのものではない。しかし、サブスタンス(=実質的な中身)は、同一となる。
そうした検討過程の最後の成果が「大綱」ということだ。
○ 「具体案」の細部について交渉・協議で個別具体的に詰めていく必要性が不明確だ。
交渉・協議をどう位置づけるかにも関わることであるが、推進事務局としては、真摯に議論していきたい。
○ 「基本構造」について議論する意味があるのかどうか。どこまで意見を反映してくれるのか。
みなさんがどういう意見を言われるのか、それを踏まえてということになる。
○ 「基本構造」に対する合意なしに、具体案を出すことはあり得るのかどうか。
各府省との関係も含めて、詰まらない限り出さない、合意しなければ出さないというものではない。
○ われわれとしては、「基本構造」は意見交換、「具体案」は交渉・協議という対応をする。
推進事務局としては、いずれも交渉・協議の一環として誠実に対応する。
○ 「人事、給与制度の細部を詰めていく中で、労働基本権を詰めていく」というのが、推進事務局の姿勢だが、10月中に人事、給与制度の細かいところまで出すということであれば、その段階で、基本権について示されると理解してよいか。
過日の大臣の回答の中で「10月中は難しい」と申し上げており、具体案の検討作業が特に進んでいるということではないので、大臣回答以上に早く示すというのは無理ではないか。基本設計にあるように「更に詳細な検討を進めていく中で、基本権の在り方を検討」するということだ。
○ 具体案を出す際には、当然、基本権、賃金決定制度を詰めておかないと人事、給与制度の設計ができないのではないか。「構造」は「基本設計」より検討が進んでいるので、それに合わせた形で労働基本権の制約の在り方を示すべきではないか。
「基本設計」では、労働基本権の問題について、「大綱」まで一切出さないということでもないし、いつ出すということを示したものでもない。「基本構造」は「基本設計」より進んだといっても、基本権は、法制度上、1か0の世界なので、そういう結論を出せるようなところまでの検討は進んでいない。
○ 人事、給与制度で検討している事項と基本権制約の代償性の関わりは、当然、検討されているはずだ。その論議がないといけない。
まだ、具体的検討は進んでいない。
3月のみなさんと自民党との話でも、国民の立場から、公務員制度をどう考えるかが先ではないかという議論があったように思う。いま、そこをやっているところ。それをまず確定してからでないと基本権をどうするかということにはならない。制度の在り方がまだ決着していない。
○ われわれの方は、どういう労働基本権、労働条件決定制度が示されるか、その下で、人事、給与制度はどうあるべきかというスタンスである。人事、給与制度の具体案を出すというのであれば、人事院の権限を含めて、基本権の論議がないというのはあり得ない。
基本権問題についても、「10月中に出すべき」というみなさんの要請があることは理解するが、労働基本権と勤務条件法定主義、財政民主主義など理論的取扱については、これから議論しなければならない。また、基本権制約と代償性の関係も一義的には決まらないので十分な検討が必要だ。
○ 細かいところはともかくとして、例えば、人事院勧告制度でいくのかどうかなど、勤務条件決定制度の考え方の基本は示すべきだ。人事、給与制度の議論が進んでいるのに、基本権の在り方をどうするかが示されていないということは、抵触しない範囲で作業していると理解してよいか。いじらないと受け止める以外にない。動かせばどうなるんだという議論はしていないのか。
全農林判決も限定的であり、代償性と労働基本権の関係については、法制局的にどうかということになっていない。中労委の花見会長も、「こういった場合には、基本権は渡すべきという固まった考え方はない」といっている。
○ 全農林判決は「立法政策」の問題であることを指摘している。そういう意味で、今回の改革は、どういう政策で行うのかという議論をすべきである。
公務員制度をどうしていくかということであれば、今の労使関係をどう評価するかも課題である。
○ 能力等級制度の評価基準の作成は誰が行うのか。作成主体によって、労働基本権の関わりは異なってくるし、それによってわれわれの人事、給与制度に対するスタンスも異なることにならざるを得ない。
基準の作成主体は、まだ決まっていない。具体案で書けるかどうかもわからない。しかし、いずれにせよ、意見を聞きながら誠実に対応したいと考えている。
○ 主体が書けないのであれば、「大綱」に能力等級制度は書けないと受け止めざるを得ない。
「大綱」にどこまでどう書くかという、「大綱」をどう位置づけるかに関わる問題であるが、誠実に対応したい。
「大綱」には、中身とスケジュールを入れたいと考えているが、「大綱」を決めたあとも議論は続けていきたいと考えている。
○ 公務員制度の憲法上の基本原則である「公正・中立性」については、それを踏まえた検討を行っているのかどうか。
訴訟を起こされない限り、公正・中立とは何かについて法的に確定的な定義は難しいが、「大枠」にその概念が入っているし、その範囲内で検討しているつもりであるが、個別具体的には「具体案」の段階で検証する必要があるものと考えている。
○ 「大枠」→「基本設計」→「大綱」という流れから見て、検討作業は「大綱」で一区切りと理解してよいか。
「大綱」の中身がどうなるかによるが、通常国会に関連法を出すといったことは不可能であり、引き続き検討を続けていかなければならないものと考えており、意見も伺っていくことになるのではないか。
○ 評価制度については、「14年から試行」ということだが、組合との議論や細部の提示もないまま、1月から行うというのは拙速ではないか。
「14年内に試行を始める」ということであり、すぐということではない。
行革推進事務局との意見交換要旨(No.2)
──任用、能力等級制度関係──
日 時 2001年10月16日(火)10時から11時15分
場 所 推進事務局会議室
出 席 者 組合側 対策本部・プロジェクト
推進事務局側 井上参事官、他3名
※ ○下線が組合側発言
○ 今回の公務員制度改革を貫く基本理念、そして人事制度の基本的考え方も示されていない。まず、そのあたりを説明してもらいたい。
個人的な意見も含めて申し上げれば、今回の改革の一番のポイントは、能力等級制度を導入して人事制度をトータルシステムとして構築することである。きちんとした評価に基づいてやっていこうということだ。
これまでは形式主義的な傾向が濃厚だった。一つには、職務の位階や組織上の段階、法令上の位置づけが中心で固定的硬直的であった。他方、人事の当てはめをみると、試験や年次という形式主義的な要素が濃厚にあった。
行政の複雑・多様化、成長率が低下するなど経済状況が変化する中で、行政はどう対応していくか。行政機構のあり方として、ライン官職だけではなく、スタッフ職も増えてきている。在職期間の長期化や定年の延長なども踏まえた仕組みにしていかなければならない。そうした中、年次主義でやっていくことに無理がでてきている。
形式主義に拘束されて身動きがとれなくなっている。それを実質的なものに改めていくということだ。仕事について、どういう能力が求められているのか、それを実質的に評価して、それにふさわしい人を当てはめて、能力に応じて処遇していく必要がある。
実質主義としてやっていくということ、もちろん、役職段階には対応させるが、職務内容を踏まえて弾力的に位置づけて、人を当てはめていきたいということである。
評価は、選抜や処遇に差を付けていくということもあるが、抽象的に「6級課長補佐」という評価をするのではなくて、求められる職務、役割、能力に応じて評価していく(実質的評価)ことが大事。組織編成の自由化ということもいわれており、各府省の主体性が高まってくる方向で議論が進められている。そうなれば、たとえばライン職について、係長であっても補佐並の仕事をしているのであれば、補佐のように格付ける必要があるし、補佐であっても補佐レベルの職務でない場合には係長並に評価する必要がある。
行(一)の1/3はスタッフ職であり、いわゆる役付きでは4割に達し、なお増える方向にある。これまではあまりにラインに翻訳された評価でしかなくて、専門職の専門性それ自体の評価がなかった。
要するに、これまでの組織の役職による硬直的形式的評価を改めて、能力等級による評価に置き換えること、すなわち、個々の職務の役割をきちんと分析し、評価していくことが重要と考えている。本当に働いている人、高い能力を求められる職務をきちんと果たしている人を処遇していくことで、全体として活力ある行政を進められるようにしたいということである。能力等級制度を入れることによって、実質主義に転換して全体の人事管理を再構築していきたい。
○ いまの説明では、どういう人事制度の原則に基づいて改革案が作られているのか不明である。職務・職階制度のもとで「仕事」中心という原則は維持したまま、能力という要素を入れて、弾力化しようということなのか、それとも職務・職階制をやめて、民間同様の「人」中心の能力評価制度にしようとしているのかがわからない。
これまでの総務省や人事院が進めてきた「能力・実績に基づいた人事管理への見直し」という方向は、現行制度の枠内での話であったが、なぜそれが全面的に否定され、今回のような制度が提案されることになったのか。現行制度のもとで、昇任・昇格基準にきちんとした評価制度を入れてやるということではどうしてだめなのか。転換の理由、理念はなんなのか。
人か仕事かということでなく、両方を見ている。
職務評価について、どういう能力が求められるかという観点から実質的な評価に基づいて行うということである。例えば、専門職については、在級年数とかでは実質的なものが出てこない。ポストそのものでなく、ポストに必要とされる能力を体系立てることで、人を当てはめ、処遇していくということだ。
○ 端的に言えば、「職務主義」と理解してよいか。
人か仕事かに分ける発想そのものを変える必要がある。
○ どうしてこのような民間にもない「能力等級制度」を発明したのか。われわれが、この制度を理解するためには、相当説明してもらわないといけない。公務員の仕事は、国民に対して説明できるものでなければならない。人を中心とした能力主義ではどうしても、不透明なものが入ってくる。したがって、職務中心でやった方が国民に対する説明責任を果たせる。そのうえでの職務評価の弾力化というのであれば理解できる。透明性という点では、職務であり、仕事基準でやるべきではないか。
また、今の公務員制度は、戦前の身分制的な官吏制度の反省の上に立って、「職務」を分類し、職務に人をつけるという考え方に転換したものでもある。その点で、人か仕事かに、こだわるべきだ。「官職への任用」という原則は変えるのか、変えないのか。
能力等級制度は、職務の実質的評価ができるようにするため設けるものである。職の秩序に中身を与えようというものである。公務員制度の中にある「能力主義」を実質化しようというものだ。「官職への任用」という考え方は変えないつもりだ。そういう意味では、民間のように、職務とは全く別個の体系をつくって処遇するという、いわゆる「職能資格制度」ではないので、能力を満たせば、自動的に昇格させるといった仕組みではない。
○ キャリア制度はまさに、入り口段階での形式主義であるが、なぜそうなったのか説明すべきだ。そして単なる年次主義ではなく、なぜ、試験別、機関別の年次主義になってしまったのか。そういった点の説明がないと現場の組合員の理解が得られない。
年次主義になったのは、職務に必要な能力が明示されなかったことが原因である。今回の改革では、能力基準を設けてそれをきちんと評価していきたいということである。
○ 能力等級制度は、あくまでも職務基準のもとでの補助的な手段という位置づけであるとすれば、「能力等級制度」という名称は不適当であり、職場を混乱させるだけだ。また、能力を客観的基準として明示することが大事だが、提案されている内容がそういうものになっているかどうか、はなはだ疑問だ。
現行の基本的な役職段階を念頭に置いた能力基準を考えなければならない。そういう意味での客観性はあると考えている。ただ、専門職の能力は問題になろう。能力のレベルそのものをどう評価するかということになってくるからだ。
○ そういうことであれば、評価に年功要素も入ってこざるを得ないのではないか。
それは基準ではなく、運用、評価の話になってくる。
○ 能力評価は本来絶対評価でなければならないが、人件費枠に縛りがあるのであれば、評価自体に限界を生じる。
提案している能力評価は、能力を活用しているかどうかなので、絶対評価の世界ではないと考えている。
○ キャリアシステムの見直しでは、「本府省幹部職員の早期集中育成」を提案しているが、能力等級制度の理念に反するものではないか。なぜ、T種制度を残しておくのか全く理解できない。どうして特別に育成制度を作らなければならないのか。これでは、能力に基づいた任用ができない。T種を特別扱いするのでは、U・V種はT種と競争しようがなく、全体が能力・実績主義に貫かれているとはいえない。T種試験は廃止すべきだ。T種とU・V種の間に壁があるのが、公務に活力を生まない原因である。T種採用者をどうするかではなく、U・V種採用者が意欲を持って働けるよう制度を改善していくことが課題であるべきだ。この、提案は受け入れられないことを明言しておく。
T種は、合格したことで将来の幹部候補として能力の実証がされたものとして育成していく必要があると考えている。年次主義ではなくて、従来以上に厳しくやることを提案しているつもりだ。組合の意見は承っておく。
○ 組織編成の自由化に関わって、各府省の自由度が高まった場合、国公全体の均衡、バランスはどう確保するのか。
勝手にやってもいいということではなくて、係長でも実質が補佐であれば補佐にすればいいということだ。はじめから、職務を詳細に分類し、整然としたものを作るのは難しいと考えている。職位を基本としながら、能力基準を入れていく、そのことによって中身を伴う方向に動かしていくということだ。
行革推進事務局との意見交換要旨(No.3)
──給与、評価、人材育成、組織目標等関係──
日 時 2001年10月24日(火)17時から18時35分
場 所 推進事務局会議室
出 席 者 組合側 対策本部プロジェクト
推進事務局側 森永企画官、他2名
※ ○下線が組合側発言
○ 「基本構造」では給与を3つに区分しているが、その基本となる「能力給」とは、一体何か説明せよ。
仕事に対して払っている面も半分ぐらいあるかもしれないが、「発揮した能力に対して給与を払う」のが能力給である。純粋賃金論として、能力資格に対する賃金という位置づけの能力給ではなく、どちらかと言えば職務職能給に近いのではないか。この能力給がどういう性格を持つことになるのかや名称をどうするかについては、今、掘り下げて検討しているところである。
官民交流からの採用について言及しているが、俸給表間交流の場合を含めて、これまでのように俸給表があり、俸給月額がある方式でなく、昇給テーブル方式だと具体的にどうしたらよいか難しい。加算額については4段階で支給する方向だが、おおざっぱに言えば、標準はこれまでの普通昇給に相当し、標準の2倍など標準を超えるものは普通昇給と特別昇給が一体となったイメージである。
○ 定額・加算額の能力発揮度合いはどう測るのか。
能力は、係長とか、課長とかいう官職に必要とされる職務遂行能力をどう発揮したかを基準に基づいて測ることになるが、定額部分はそれぞれの官職の役割に通常期待されている能力に対応するものである。
○ 能力給の基礎になっている能力等級制度もよくわからない制度である。官職へ任用するということが変わらないとすれば、能力給の定額部分は官職への任用に見合った給与ということになり、現在の職務給の考え方と異ならないのではないか。われわれは、今の給与法でいう職務給の在り方は見直すべきと考えているが、その場合でも「仕事」基準を中心に考えるべきである。
能力等級に応じて、能力の発揮度に応じて支払うという点では、能力に対して払うことが基本である。また、給与が直接つながっているのは能力の体系であり、官職は能力等級制度を通じて間接的につながる関係にある。
○ 加算額は、純粋に業績評価で決定するのか。
業績評価は絶対評価なので、予算枠の中でやらなければならないということや評価は「重要な参考資料」という位置づけであることから、評価結果そのもので加算額を直接決定するものではなく、もう一回引き直すことになる。なお、業績評価は能力給の加算額(効果の継続性あり)と業績給(効果は一回限り)に関わることになるので、それぞれどういう評価要素で行うかなどその調整も検討しているところである。
○ 職責給の性格はどういうものか。現在の特別調整額とはどういう関係にあるのか。特別調整額は、労基法の管理監督者の位置づけとも関わっているが、その点はどうか。職責の変化は誰が判断するのか。職責給が属人的になって、業績給と変わらないものにならないか。
管理職は、能力の発揮はもちろんであるが仕事の要素が増してくるので、それぞれの職責で処遇していこうというものである。企画官と課長は官職としては同じ分類に入っているが、職責は異なるのでそれに応じた処遇をしていこうというものである。また、例えば本省課長をみると、重要法案を抱えたときとそうでないときでは職責が異なることになるので、変動可能なものとしていきたいということである。
特別調整額の振り替えという要素が強いが、管理監督(時間管理がなじまない、超勤の代替)に対する評価と職責の変動に対応することという2つの側面があると考えており、そこはきちんと整理しなければいけないと思っている。特別調整額は労基法の管理監督との関わりについては、勤務時間管理になじむかどうかということであり、そこのところは変えていないつもりである。
職責の変化は、基準の下、各府省が予算の範囲内で決定するものである。また、職責給は職務そのものがどうかということであり、業績給は業績評価の結果に基づくものである。
○ 業績給はどういう性格のものか説明されたし。
業績給は今の一時金と同じであり、いわば期末手当が安定的支給部分に、勤勉手当が業績反映部分に相当することになる。名称は仮のものであり、どうするか検討しているところである。また、基本構造には明示されていないが、今より業績反映部分の割合を増やすことや、上の方はその割合を高めること、上の方は大きく差を付けることを考えている。
○ 総人件費の適正な管理ということが指摘され、級別定数は廃止することになっているが、労働基本権制約との関わりが生じてくるのではないか。また、「各給与項目ごとに」というのはどういう意味か。
級別定数は廃止し、能力等級ごとに人員枠を設定することになるが、少なくとも各府省ごとにはやらなければならない。それ以下の機関別であるとか、会計別であるとかはどうするか検討中である。誰が人員枠を作るかは議論しているところであり、労働基本権の制約との関わりや行政機関の役割に関わってくるだけに難しい問題である。
「各給与項目ごとに」というのは、能力給、職責給、業績給ごとに積算ルールを作って決めるという意味である。人件費予算は、各府省が要求して財務省が査定して決めるということになろうが、「人員枠」というのは、給与制度上の範疇なのか、予算上のものなのか、今のところまだはっきりしていない。また、人件費に関わる最大の問題は、どういう水準にしていくかであると認識している。
○ 仕事、能力、給与の関係がよくわからない。定額部分は職務の役割に対応した最低額ということになれば、まさにそれは職務給ではないのか。他方で、職務分類は大ぐくりとなってくるので、仕事との関係が曖昧になってくる。これらは相互に矛盾しているのではないか。
今は、10級と11級の仕事は違うということになっているが、今回の仕組みでは仕事の面ではこれを一緒にして、ポストではなく能力等級の方でより実質的に分けようというものである。今のような職務分類に基づいて、仕事が変わったから給与を上げるということではない。したがって、能力給は仕事に関わって支払うものではない。
○ 官民比較はどうするつもりか。能力等級を給与に反映するという方式は、任用の弾力化とあいまって、国公を基準としたラス比較はできないのではないか。
給与制度を先に決めて、そのうえで官民比較の問題ということになる。いずれにしても、どういう属性の人がどういう給与をもらっているかを調査し、比較することになるのではないか。
○ これまでの説明を聞いた限りではとうてい納得がいく説明ということにはならない。逆に疑問が深まるばかりだ。給与については、「基本構造」のようなイメージではだめだ。決定制度や水準の問題を含め、具体的に示されないと議論できない面を持っているので、具体案を早急に示すべきだ。
できるだけ具体的に示していきたいと考えている。性格論も含めて制度設計をやらないといけないということを認識しながら作業を進めているところである。
○ 全体として改革の基本理念が不明であり、制度の整合性にも欠けているのではないか。いろいろ検討したら、今の制度とあまり変わらないということでは、何のためにやっているのかということになる。
組織の体系があり、それに基づいた能力の体系を作り、任用を行い、発揮した能力に対して給与を払うという基本的枠組みは整合性を持たせたつもりである。
○ 評価についても、もう少し具体化されないと「基本構造」レベルでは議論ができない。評価は絶対評価でやるのかどうか。であるとすれば、いい評価を得たもの全員を給与上処遇するのでなければ意味がないが、総人件費や人員枠との関わりはどうなるのか。
がんばってもいい評価がつかないということでは問題があるので、評価は絶対評価で行いたい。しかし、評価と給与はそれぞれ完結するものである。評価は「加算額」や「業績給」決定、昇任・昇格決定の「重要な参考資料」であるから、評価だけで決まるわけではない。
○ 評価以外の要素も含めて総合的に決まるということでは、極めて不透明な今と変わらないのではないか。評価が「重要な参考資料」という位置づけであれば、別途、客観的な昇任・昇格基準を作るべきだ。そうでなければ当局の恣意性は排除できない。
評価の方が基準を満たしていても、「人員枠」がなければ上がれないということもあるので、「重要な参考資料」ということにしている。しかし、評価が重要な要素であることは間違いない。
いま、規則8−12(職員の任免)があるが、それと同じ内容になる。
○ 「苦情等の相談窓口」とあるが、労働組合が関与する「苦情処理システム」をきちんと作らなければ納得できない。今の人事管理体制の中で、当局に相談しても問題は解決されない。評価が任用、給与に直接連動する仕組みを作るのであれば、苦情相談というレベルのものではなく、しっかりした苦情処理システムが不可欠だ。
意見として承る。
○ 組織目標・行動基準は意味が分からない。国家公務員の行動について、当たり前のことを行動基準に定めて、それに基づいて業績評価を行うということか。また、行動基準と服務、倫理の関係を整理すべきだ。
今の服務規律は、抽象的なので行動基準を具体的に定めようというものであるが、「べからず集」にするつもりはない。また、懲戒処分で担保するつもりもない。行動基準についても、業績評価で正しいこと、ふさわしいことをやったものとして、評価するということである。
○ 仕事のやり方をどう変えるかがポイントではないか。そういうものに組織目標がどう関わるのかが重要であって、形式張ってやっても意味はないし、実現可能性もないのではないか。
今、管理職は部下に対して何をやるべきか示していない。示されないと何をやっていいかわからないので、組織目標として示そうというものである。
○ 本府省幹部候補職員の集中育成コースを設けるというが、制度化するのは絶対に反対である。評価を入れるのに、この人たちは別扱いということで、ローテーション人事を行って能力評価ではなく昇任・昇格・異動させていくというのでは納得できない。まず、T種が必要かどうかという、公務員制度の基本を議論すべきだ。入口で選別するのではなく、平等に競争させるべきだ。
幹部候補の選抜は相当厳しいものを想定している。能力のない者は外していくということである。
以上