「対策本部」は、11月19日午後1時30分から行革推進事務局との間で、「新人事制度の原案」について3回目の交渉を実施した。今回の交渉は、「行政職に関する新人事制度の原案」のうち、「任用制度」について行われ、「対策本部」から山本事務局長及び公務員連絡会書記長クラスが参加、行革推進事務局側は、春田公務員制度等改革推進室長、井上参事官らが対応した。
「原案」では、「新任用制度」を導入する趣旨として、@任用資格基準が存在しない下で、画一的、硬直的な人事管理が行われ、また、降任・免職処分が明確でないことから不適格者の厳正な排除が十分でない、ことを理由にあげ、「新たな評価制度の整備の下で、能力等級制度を中心とした能力本位の任用制度」を提起している。
冒頭、山本事務局長から、「現行制度では、職階制を踏まえて『官職への任用』という考え方を取っているが、この考え方を維持するのかどうか。基本職位という大ぐくりの職務分類への任用ということになれば、『官職への任用』ということが曖昧になり、『公務員に任官され、職務を与えられる』という任官補職の考え方となって、戦前の身分制に逆戻りすることにならないか」と、任用制度の基本的考え方を示すよう求めた。
これに対し、春田室長は、次のとおり見解を示した。
国公法は、職階制を導入することを前提として任用制度を組み立てている。上位の官職への任用は、下位の官職にある者の競争試験によって行うものとされているが、新規学卒者等を除いて、任命権者が定める基準に基づいた選考によって行われている実態にある。その中で職員の納得性を得る必要から、年次的運用になっている。能力等級制度を導入することにしたのは、公務に健全な競争原理を入れて、年次ではなく能力によって任用を行おうとするものである。職員の納得を得るために、職務遂行能力を定めて、これをベースとした能力等級制度を設けて、仕事に一番適している人材をその能力を評価して任用していくという考え方である。「官職に任用する」ということは当然であり、変わらない。
以降、任用制度全般について、協議を行ったがその概要は次のとおり。
組合 「官職への任用」が基本職位に就けることになると、基本職位が大ぐくりになっていることから、官職に空きがあったとき競争試験で任用するという現在のメリットシステムに基づく考え方とは大きく違うことになるのではないか。
推進事務局 現在の仕組みでは昇任や降任の基準は定められていないので、それについて、どこに就いたら昇任か、どういう条件で昇任できるのか、できるだけ具体的な基準で明らかにしようとするものである。今はそうした基準がないために年次的任用となっている。欠員補充としての任用を変えるつもりもないし、発令行為も変わらない。成績主義をやっていくために現行制度で不十分なところをきちんとしたいということである。
組合 職階制をなくして能力等級制度を設けるということだが、聞けば聞くほど、基本職位や代表職務による職務分類がまずあって、それを前提として初めて求められる職務遂行能力が決まり能力等級制度となると理解できるが、そうではないのか。
推進事務局 仕事の「複雑困難、責任の度合い」は当然あり得るものであり、そうした仕事に適材を充てるという基本原則は変わるものではない。「基本職位」とは、職の役回り、すなわち「複雑困難、責任」の括りであり、その役回りをこなせるだけの能力が備わっているかどうかに基づいてクラス分けする。それによって適切な人を充てようとするのが、能力等級制度に基づく任用の考え方である。今までは、仕事だけで任用を見てきたため、本当に適切な人を当てはめることができなかった。そこで、今回の改革案では、人の能力を能力等級制度に基づいてきちんと見極めて任用しようとするものである。
組合 まず、職の見極めがないとそれに相応しい能力を規定できないのではないか。今の職務給を原則とする仕組みの中で、能力・業績評価制度をきちんと整備していくということとどう違うのか。一方で、職階制を廃止するといいながら、能力等級制度はその前提として職務分類がないと成立しないのであるから、考え方が全く理解できない。
推進事務局 今までは職の分類だけであったので、誰が適任であるかを判定し得なかった。それについて、職務遂行能力としてきちんと評価して能力に基づいてやっていこうというものであり、職階制とは異なるものである。
組合 基本職位の分類基準は、誰が決め、どのように定めるのか。また、各府省ができることとされている細分化の基準や代表官職の分類、組織段階の区分はどうか。これらは、労働基本権に関わる勤務条件性があるのではないか。
推進事務局 基本職位については、係員、係長、補佐、課長の定義はしたいし、ベースは法律で決めることになると思う。また基本職位分類の基準や代表職務の分類は管理運営事項であると考えるが、勤務条件に関わりがあるかどうかは検討したい。勤務条件性は帯びないということになる可能性も含めて、労働基本権の検討とあわせ、これから詰めていかなければならないと考えている。
具体的な話をすれば、現実的、実効的な能力基準を定めようとするのだから、今、実態的にある課長とか課長補佐とかという職に応じたものを基本職位として当てはめていくことになる。現在の組織では、ラインの官職以外の職名が全体の3分の1以上(役職級である4級以上では4割超)あるが、標準職務表はライン官職中心で書かれており、これら専門職がきちんと位置づけられていない。そこで、基本職位への代表職務の当てはめについては、専門職もきちんと書き込んで、仕事の実質を基準とした任用・昇任ができるようにするものである。
組合 まず職務分類をするというのであれば、客観的な昇任・昇格基準をつくって、そこに能力基準を入れた評価制度を作れば、年次主義という問題は解消されるのではないか。どうして、基本理念も曖昧な能力等級制度を導入して、混乱させようとするのか理解できない。
推進事務局 それでは年次主義を解決できない。今までは能力を測る物差しがなかったから新たに能力等級制度を入れなければならない。仕事の方を分類するのではなく、それに必要な能力を基準とするのでなければならない。
組合 基本職位の中では官職に上下はないと理解してよいか。その場合、どうして複数の能力等級が対応することになるのか。職位と能力等級は同じでなければおかしいのではないか。別だというのであれば、むしろ能力等級制度ではなく、職務分類と矛盾しない能力「資格」制度を導入すべきではないか。
推進事務局 基本職位は例えば係長とか補佐という役回りは同じでありその意味で上下はないが、たとえば、初任の補佐と調整を行う筆頭補佐では必要とされる職務遂行能力が異なることになるので2つの等級を対応させ、時々の仕事の重さに応じて相応しい人を充てようという仕組みである。
組合 基本職位の中では、降任ではないから「配置換」だけで処遇が大きく変わるし、人事管理権者の裁量だけで行われるとすれば、不透明であり職場に混乱を招くだけではないか。本府省の3級係長から「昇任」せずに「配置換」「転任」を繰り返すだけで、本府省の課長になることやその逆も可能であり、問題である。職務の分類の基準が明確にならないまま、当局の裁量だけで弾力的運用が行えることにするのは反対である。国民に対しても説明できないのではないか。
推進事務局 昇任なしで課長になれるとしても、昇任行為がなくても昇格というハードルがあるので問題はないのではないか。ポストの数は、等級別人員枠や職責手当の枠で決まってくるので、裁量といってもそんなに勝手にやるということにはならないのではないか。
組合 上位の等級に対する「期待」能力で昇格させるのは矛盾である。人員枠の関係から能力評価は「重要な参考資料」とされ、「その他の事情を総合的に考慮」することになっているが、これでは客観性に欠け、当局の恣意的判断による昇格が可能になってしまう。これでは、現行制度が年次主義になってしまったのと同じことになってしまうのではないか。
推進事務局 今までと比べて、能力に基づく仕組みとなっており、相当良くなると考えている。そうした能力主義の上に立って、いろいろ事情がある。総合評価に至る過程の評価項目を吟味して、当該官職にもっとも適任な人をつけるための総合的な考慮である。できるだけ明確にしたいが、全部基準化できるわけではない。
組合 当局の裁量や恣意性が強まることを「良くなる」」というのでは話にならない。そんなことをすれば、個別紛争が相当増えることになる。組合との集団的労使関係の中にしっかり位置づけるべきではないか。
推進事務局 評価の過程で自己評価、面談やフィードバックを盛り込んでいるので、その過程を通じて納得してもらえるのではないか。
以上のように多岐にわたる協議を行ったが、制度の理念や基準設定の具体的内容など根本的な課題が全く示されなかったことから、最後に山本事務局長が「本日のような協議を繰り返したのでは、『交渉・協議に基づいて大綱に結びついた』ということにはならないのではないか。基本権以外にも、制度の根本に関わる検討中の課題が多すぎる。その結論次第では、今、示されている制度設計にも大きく影響してくる。交渉・協議は引き続き続けるが、十分な時間を確保していただきたい」と、検討事項を早急に示すよう求めるとともに一方的に「大綱」を決めないよう釘をさした。
これに対し、春田室長は「今、残された問題について作業を鋭意進めているところである。みなさんの問題意識については十分承ったし、今後も十分意見を聞いて参りたい」と約束したことから、本日の交渉を終えた。次回は、22日午前中に「給与制度」等について交渉する。
以上