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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.62 2001年12月4日

連合官公部門連絡会


推進事務局が「内閣と人事院の機能整理」等を提示。「原案」の交渉再開へ
「『大綱』原案は来週中に示し、12月中にまとめる方向」の考え示す

 「対策本部」は、12月4日午前8時30分から行革推進事務局と交渉した。交渉では、11月22日の段階で交渉・協議が中断していたことに関連し、推進事務局から「内閣と第三者機関(人事院)の機能の整理」及び「人件費予算の決定の枠組みについて」とする資料に関し、この間の作業経過の説明を受けた。説明は、春田公務員制度等改革室長、高原参事官から行われ、「対策本部」は山本事務局長及び書記長クラス交渉委員が対応した。

 冒頭、春田室長が、以下の通りこの間の経緯を説明し、人事制度等に関する交渉・協議の再開を求めた。
(1) 11月22日にみなさんと協議を行ったが、「21日に自民党が中央人事行政機関の機能分担や人件費の取扱いを決めた」との新聞記事がでて、組合の方から推進事務局としての説明があってしかるべきだとの話があった。その際、推進事務局としては、あくまで自民党内の議論ということで、その資料の取扱いについては推進事務局からは説明できないことをお話ししながら、自民党とも相談して対応を検討したいと申し上げてきたが、その時点でみなさんとの協議は事実上中断することになった。
(2)その後、自民党のヒアリングが行われることとなった経過もあり、「内閣と人事院の機能の整理」「人件費の取扱い」の資料を提示することとした。
(3) 推進事務局としても、労働基本権の問題は大変重要と考えているが、自民党・与党の方で話を進める課題であると考えており、そうした議論の中で当方として資料を提出してきたところである。その過程でみなさんとの意思疎通がうまくいかなかったことについて申し訳なかったと思っている。「大綱」取りまとめに向けて、ぎりぎりの段階にきており、推進事務局としても結論をだすべく精力的に頑張って参りたい。「新人事制度の原案」については、引き続き協議して参りたいと考えているので、よろしくお願いしたい。

 これに対し「対策本部」は、「経過の説明をうけたが、われわれとしては、推進事務局の判断で正式な提示を行ったものと受け止める。しかし、前回の交渉・協議の場で提示されていれば、スムーズに進んだはずである。今後は、このようなことがないよう、信頼関係に十分配慮して対応していただきたい。そのうえで、人事制度をめぐる協議を再開したい」と協議再開に同意しながら、以下の通り、推進事務局の見解を質した。
(1) 本日提示された資料をみると、まだ内容が詰まっていない部分があるが、自民党としてはそういう枠の中で公務員制度改革を検討するということを決め、推進事務局もその枠組みの中で検討作業を進めているものと受け止めてよいか。
(2) 「機関の整理」や「人件費」も、「人事制度の原案」と同様に交渉・協議する事項として受け止めていいか。労働基本権を制約する場合だけの検討資料であり、他の選択肢が示されていないが、基本権の取扱いの方向がでた段階で、推進事務局としての提示がなされ協議を行うということであれば、それはいつごろになるのか。

 これらについて、春田室長は次の通り答えた。
(1) 資料は2つの部分からなっており、一つ目の「中立・公正な人事制度を仕組んでいく」という課題については、内閣や第三者機関のところがまだ詰まっていないが、概ね自民党の了解を得ている。もう一つの「労働基本権との関わりでの人件費の取扱い」の問題は、「労働基本権制約の下」という前提つきの話であり、その前提をどうするかは、まだ自民党としての判断がなされないもとでの議論にとどまっている。
(2) 人件費や中央人事行政機関をどう扱うかは、「人事制度の原案」に溶け込むようなものにはなっておらず、労働基本権をどう扱うかの議論のための参考資料という位置づけである。まだ決着が付いていないので、正式に意見をお聞きするというのではなくて、本日提示した資料の思想や中身はどうなっているんだということについて、意見交換したいと考えている。

 以上の質疑の後、「対策本部」が「『大綱』原案のスケジュールはどうか。いつ原案を提示するのか。そしていつまでに正式決定を行うのか。『大綱」の性格は固まりつつあるのか」と質したのに対し、春田室長は「『大綱」策定に向け残っていた課題については、本日自民党や各府省に提示するし、みなさんにもお示ししたいと考えている。『大綱』そのものがどうなるかについては、少なくとも年内にはまとめたいと考えており、来週中には原案を提示できるものと考えている。決定の形式については、閣議決定という形を目指したいが『政府行政改革推進本部決定』ということもあり得るし、検討中である。時期は予算の内示(20日頃)から決定(24日頃)の前後になるのではないかと思う」と答えた。
 最後に、山本事務局長が「労使関係の重要性を十分認識して対応していただきたいし、対策本部としては筋を通した論議をしたいので、誠意ある対応をお願いしたい」と強く要望し、今後、「人事制度の原案」にかかる協議を再開することを確認した。

 本日の推進事務局とのやりとりを踏まえ、中断していた「新人事制度の原案」をめぐる交渉・協議は再開されることとなる。次回は給与制度・評価制度に関して6日に行われる予定。



推進事務局が採用試験、官民交流など残された課題について考え方提示

行革推進事務局は、本日(4日)夕刻、「大綱」に盛り込むべき課題で、人事制度以外で残されていた課題(@採用試験A官民交流の推進B公募制の推進C自己啓発のための休業D留学費用の返還スキームE国家戦略スタッフ)についての考え方を「対策本部」に提示し、意見を求めてきた。
 「対策本部」としては、早急に内容を分析してわれわれの考え方をまとめ、これらの課題についても交渉・協議を行うこととしている。なお、天下り等の問題については、特殊法人改革との関連で自民党、行革推進本部の作業がなお遅れている模様。
 本日提示された各課題についての「対策本部」としての考え方は早急にまとめ作業を行うが、内容の特徴と主要な問題点については下記の通り。

<採用試験について>
 採用試験について、T・U・V種の現行試験区分を維持する一方で、「採用試験の別にとらわれない能力重視の人事管理を推進」するという指摘は、明らかに制度と理念が矛盾するものであり、能力本位の人事を実現しようとするのであれば採用試験区分を廃止すべきである。また、「合格者数を大幅に増加し、各府省の面接を通じて採用者を決定する」、「内閣を中心に採用試験の抜本改革を検討する」という提起は、まだ行革推進事務局と人事院の間で採用試験の企画立案をどこが担うのかについて調整中の課題であり、それを結論がでている形で制度設計するのは問題であり、内閣が企画立案することとなると、任免の根本規準としてのメリットシステムとの関わりにおいて問題があり、結果として平等取り扱いの原則にも抵触しかねないものである。
<官民交流の推進について>
 官民の人的交流の消極性の要因として、「過度に厳密な官民区分の考え方に根ざした諸規制(私企業からの隔離に基づく兼業規制)」や「人事院の事前承認・協議」にあることを指摘しているが、これは現行の諸規制・諸手続きが公務員制度の根本原理である「全体の奉仕者性」やメリットシステムに基づくものであることを軽視したものである。
 また、新たに「身分併有」を可能とする制度を提起していることについては、官民の人的交流の拡大のための環境整備のみに固執し、官民の労働関係の相違や営利従事の制限などの服務規程を全く考慮していないものであり極めて問題である。
<公募制の推進について>
 民間からの人材の登用は、基本的には「採用」行為であり、メリットシステムの原則が適用されなければならず、試験採用者に準じた「能力の実証」と中立・公正性、平等取扱いの原則を確保するための第三者機関の関与が前提となる必要がある。府省間、府省内の公募制についても、当然、メリットシステムの原則を踏まえるとともに、新たな行政事務への対応など公募にふさわしいポストを明確にした上で行うべきである。
<自己啓発のための休業について>
 自己啓発のための休業制度についての積極的な検討が必要である一方、公務における休業制度の導入については、職業生活と家族的責任との調和の観点からの総合的な検討を前提とすべきであり、具体的には、@資格取得や学位取得、専門知識の獲得などの自己啓発・職業能力開発、A国内外での長期ボランティア活動などの社会貢献、B介護・育児等の家庭と仕事の両立、C退職準備等の高齢化・少子化への対応など、幅広い目的に活用できる総合的な休業制度を確立すべきである。
<留学費用の償還スキームについて>
 留学派遣者が復帰後早期に退職し、公務全体の能率的な運営に十分寄与していない状況に対して、一定の費用の償還を義務付ける法制度を整備するという指摘は、「官民交流の推進について」における「従来の人事管理が内部育成重視型で閉鎖的であり、積極的に官民交流を進めるべき」という考え方との整合性が問われるものである。まさに、官民を含めた全体の人的資源を公務側からのみ一方的に活用しようという姿勢のあらわれであり、行政のとるべき立場としてふさわしいものか否か疑問である。なお、これらの措置は、退職及び職業選択における職員・個人の自由を規制するものとして問題があることが指摘される。
<国家戦略スタッフについて>
 今日の国民の行政に対する不信と不満は、官僚主導による行政の腐敗化、閉鎖化がその要因であり、そのことは政治の責任と果たすべき役割の重要性を指摘する。また、「常に国民の負託に基づく政治=国民主導」による行政運営の実現と、それを支えるための行政組織・機構の整備が必要であることは論を待たない。その意味で、抱えている課題の十分な検証を踏まえ、「政治=国民主導」の原則に基づき、「政党・政治家」による行政の閉鎖化・私物化を排除するシステムを行政の中立・公正性の確保として担保すべきである。
 そのため、政治主導による政策の立案を「国民の視点」から支え、導き、監視するための民間からの登用を含めたカテゴリーの創設を「国家戦略スタッフ」と位置付けるなら、その役割と基本的な性格を明確化し、一般職とは異なる区分のもとに、政治任用職として対応することも含め検討すべきである。



連合福井が「民主的な公務員制度改革を求める福井集会」開催
重大な、緊迫した局面に至っていることを確認!

 連合福井は、11月27日に「民主的な公務員制度改革を求める福井集会」を開催し、連合福井官公部門連絡会を中心に約200人か結集した。
 冒頭、主催者を代表して連合福井・森田会長は、「いま、日本の経済は大変厳しい状況にある。官民一体となってこの危機的状況を乗り越えなければならない。そのためには、公務員にも労働基本権が保障され、民主的な労使関係の構築が必要だ」と訴えた。
 次に、連合本部の須賀恭孝経済政策局長から、連合が取りまとめた「21世紀の公務員制度・労働基本権確立の基本要求」について、連合官公部門「対策本部」の岩本伸一事務局次長から「公務員制度改革をめぐる情勢と取り組み」について、それぞれ基調報告を受けた。
 集会では、国公総連、全郵政、自治労の仲間が決意表明を行い、最後に「労働基本権を確立し民主的な公務員制度改革を求める決議」を採択し、森田会長の団結がんばろうで閉会した。
 連合福井・官公部門連絡会は、12月の「大綱」に向け、公平・公正で透明な人事・給与制度、団体交渉に基づく賃金・労働条件の確立を実現するため、最後まで総力をあげて闘うことを確認した。

以上