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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.72 2001年12月18日

連合官公部門連絡会


自民党行革推進本部が「労働基本権は現行のまま」との見解提示
対策本部は「現行の制約維持のままの『大綱』策定に反対」を表明

 連合官公部門の対策本部は、12月18日午後4時40分から1時間にわたって、自民党行革推進本部と意見交換を行った。このなかで自民党側は、公務員制度改革の最重要課題である「労働基本権のあり方」について、「党として現行の制約を維持する」との結論を得たとの見解を示した。
 自民党との意見交換は、今年3月23日を皮切りにはじまった公務員制度改革に関する一連の意見交換の一つの締めくくりの場として行ったもので、自民党から行革推進本部の橋本最高顧問、太田本部長、熊代事務局長、茂木・林両事務局次長が参加、対策本部からは、丸山本部長(国公連合委員長)、榊原副本部長(日教組委員長)、山本事務局長、宮入副事務局長らが出席した。
 冒頭、自民党行革推進本部の太田本部長から、「これまで検討してきた課題で結論がでていなかった労働基本権のあり方等について、昨日(17日)、党としての考えがまとまったので説明したい」として、次のような見解が示された。
@ 労働基本権のあり方については、「現行の制約を維持することとした。昨年12月の行革大綱の閣議決定前後には、党として基本権の回復も視野に入れて検討してきたが、今年に入ってからは、基本権の見直しに触れないという考えのもとで、新しい時代に対応する人事・組織を設計できないか、検討してきた。その結果、基本権制約のもとでも、憲法に抵触しない範囲でのぎりぎりの制度設計が可能となった。
A こうした労働基本権の制約のもとでは、公務員の処遇を適切に確保するための枠組みが必要と考えている。
B 「大綱」が決まった以降についても、関係者すなわちみなさん方との意見交換は必要であるとの考えを「大綱」に盛り込ませることにした。今後も公務員制度改革の具体化に向けてみなさん方とは、意見交換していきたい。

 こうした「現行の基本権制約を維持する」との見解に対し、丸山本部長は、「党としての労働基本権の扱いを含めた公務員制度改革に関する方針を承った。私どもの基本的な考え方を申し上げたい」として次のように反論し、「大綱」策定の延期を求めた。
@ 3月23日に貴党からの提起を受けて、200万組合員が結集する連合官公部門としては、これを真摯に受け止め、労働基本権の回復を前提とした「公務員制度の民主的で抜本的な改革に向けた私たちの提言」を取りまとめ、貴党に対しても示して、その実現をめざして取り組みを進めてきた。
A 今般の改革方針について率直に申し上げたい。一つは作業の進め方についてである。貴党との話し合いは別として、政府部内における作業の進め方は極めて誠実さを欠き労使間での交渉・協議は、未だ労働基本権の扱いに対する回答さえない。組合としての改革案に対する賛否の立場も決められず中味のある交渉・協議はなされていないと言わざるを得ず、強い不満を持っている。
 次に内容についてであるが、使用者に権限と責任を持たせた人事管理システムを構築する方向が提起されている一方で、それに照応した労働基本権の扱いは現行のまま、引き続き労働基本権を制約するとの立法政策を堅持する、という見解については、働くものの立場だけが一方的に弱められることになり到底容認できず反対せざるを得ない。賃金・労働条件決定制度が変わること、また新たな能力等級制度の導入が提案されており、労使関係は個別化することにもなる。にもかかわらず、決定制度への労働組合の具体的関与のあり方は不明確で、現行と変わらないならばILO提訴を含め重大な決意を持って反対運動を進めざるを得ない。
B 組合としては、基本権を前提とした制度改革を引き続き求めていきたい。しかし、使用者としての政府からは基本権の扱いに対する結論の提示を受けた交渉・協議は一回も行われていないことから、25日の「大綱」決定を延期し、十分な交渉・協議を求めたい。

 これらのやりとりの後、意見交換に入り、対策本部側は、「自民党としてどのような議論を行って基本権は現行のままとすることとしたのか説明してもらいたい。経過から見ればその点について真剣な議論をやったとは思えないし、そもそも時代の変化に対応した公務員制度改革を行うのであれば、現行の基本権制約の立法政策がそのままでいいということにはならない」と質した。
 これに対して自民党行革推進本部側は、「そもそも基本権を変えない範囲で制度設計を行うという方向で検討してきたのが経緯だ。政府の行革推進事務局から、これだったらぎりぎりやれるというものができてたので、これでともかくやってみようということになった。「大綱」の中に、今後も皆さんの意見を十分聞くことを書くこととした。皆さんの求めるものをやれば、そもそも党がまとまらない」と、苦しい見解に終始した。これに対し対策本部側は、「自民党の回答は本日聞いたが、政府の回答は未だ聞いていない。これではわれわれは大綱原案に対して賛否の態度を決められないまま閣議決定を迎えることになる。あまりに時間がない。是非、25日の閣議決定の延期をするよう自民党としても努力してもらいたい」と、重ねて閣議決定の延期を求めたが、自民党側からの明確な見解は示されなかった。
 そのため最後に、丸山対策本部長は「対策本部としては、労働基本権を現行のままとする大綱にはあくまで反対であることを改めて申し上げる。また、いまのままでは、到底交渉・協議が尽くされたとは言えず、きわめて遺憾である。われわれとしては、あくまで政府がILOの場で約束した十分な交渉・協議を経て大綱を決めることを求める。自民党としても、政府に対して交渉・協議を尽くして決定するよう働きかけてもらいたい」と、強く要請し、意見交換を締めくくった。
 なお、意見交換の中で、対策本部側が、公務員制度改革のプログラム等を盛り込んだ「基本法」等を制定する考え方はあるのかと質問したことに対し、「原案ではそこまで触れていないが、その点も含めこれから検討する」との考え方を示した。また、今後の法案要綱等の作成過程で、政府側の交渉・協議の明確な窓口を設けることについても検討していることを明らかにした。

 本日、自民党行革推進本部が「労働基本権は現行のまま」動かさないで大綱を決定する考え方を示したことにより、焦点は政府・行革推進事務局との労働基本権をめぐるやりとりに移行する。12月4日に行われた対策本部と石原行革担当相との交渉では、政府側は「検討中であり、もう少し待ってほしい」としており、労働基本権問題についての見解は石原大臣が直接われわれに回答することが当然の経過となっている。対策本部としてはあくまで石原大臣との交渉の場で政府から明確な見解を示すことを求めるとともに、十分な交渉・協議を経ず大綱を決定することに強く反対し、その延期を求めることとしている。また、仮に政府が25日に閣議決定を強行した場合は、@当日抗議集会を実施しA26日には抗議の職場集会と抗議打電の行動、などを予定している。

以上