連合と連合官公部門連絡会は、本日午後3時より共同記者会見を行い、連合は「『公務員制度改革大綱』の閣議決定に対する談話」(草野事務局長・別紙2)、連合官公部門連絡会は「『公務員制度改革大綱』の閣議決定強行に対する抗議声明」を発表した。
笹森会長は、「大綱」決定の問題として、@誠実に交渉・協議をするとしたILOでの公約を無視したものである、A労働基本権の制約を前提にしている、ことを指摘した。そして、今後の取り組みとして、@公務員制度改革を進めるためキャリア制度、天下り問題といった淀みにメスを入れることを求める、A公務員の労働基本権確立を求め、官公労・民間組合が一体となって取り組んでいく、BILO提訴など、国際的な場での闘いとして取り上げていく決意を述べた。
連合官公部門連絡会からは、丸山対策本部長、大原副本部長が出席し、丸山本部長が「抗議声明」の趣旨と第8回対策本部会議で確認した今後の取り組み(「対策本部ニュースNO73」で既報)について説明をした。
別紙1
石原伸晃行政改革担当大臣の交渉拒否に抗議する
石原大臣の交渉拒否と不誠実な態度に強く抗議する。
石原大臣は、公務員制度改革大綱が閣議決定された本日まで、労働基本権の取扱いについての回答をついに示さなかった。大綱では、先進国に例をみない労働基本権を制約する立法政策を変えないまま、新しい公務員制度を設計している。
われわれは、今回の公務員制度改革大綱にはいっさい合意できない。
われわれは、労働基本権の取扱いが提示されない中では公務員制度改革案に対する実質的な交渉・協議は成り立たないことを強く主張し、このことは行革推進事務局も同意を示していた。
だからこそ対策本部は、制度設計が具体化される以前から、労働基本権の取扱いを明示するよう石原大臣および行政改革推進事務局に強く求めてきたのである。しかし、この間、具体的回答は示されてこなかった。
石原大臣は、11月6日の交渉で、「大綱までの間、議論ができるように早急に結論を出す」と回答したが、結論は示さず、大綱決定前の最後の交渉となってしまった12月7日の交渉でも、12月大綱決定は不変だとしつつ、労働基本権の扱いについて「非常に重要な問題であり、人事制度とも密接に関係していることから早く固める必要がある」とし「できるだけ早く結論が出せるよう努力する」と、大綱までに回答を示すことは明言している。
こうした経緯があるにもかかわらず、約束は果たされなかった。
制度設計の担当大臣で、この問題に係る責任者である石原大臣が、労働側の当事者であるわれわれとの交渉・協議を抜きに公務員制度改革大綱の策定を強行したことは、無責任であるばかりか、ILO総会で日本政府が約束した「労働組合との誠実な交渉・協議」を反故にしたものであって、重大な背信行為として厳しく糾弾されなければならない。
こうした事態を引き起こした石原大臣に対して、改めて強く抗議するとともに、われわれへの謝罪とその責任を明らかにするよう求めるものである。
2001年12月25日
連合官公部門連絡会労働基本権確立・公務員制度改革対策本部
別紙2
2001年12月25日
「公務員制度改革大綱」の閣議決定に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 草野 忠義
1.政府は、本日、現行の公務員制度の見直し方向を示した「大綱」を閣議決定した。この「大綱」をもとに2002年中には、「改正法案要綱」をとりまとめるとしている。
「大綱」は、労働組合との交渉・協議も行わずに、人事院機能の縮小、内閣と各府省の人事管理権の強化、また、公務員の労働基本権の回復は行わないとしている。政府は、本年6月、ILO総会で「関係職員団体との誠実な交渉・協議に基づく検討」を公約した。これを反故にした今回の「大綱」決定は、到底認めることはできない。
2.連合は、公務員の労働三権の保障、労使協議に基づく公正・公平な新人事制度の確立、「キャリア制度、天下り廃止」等を求める「21世紀の公務員制度・労働基本権確立の基本要求」を本年5月にとりまとめ、「政労会見」、官房長要請、与野党への要請を通じ、労使協議による「民主的な公務員制度改革」の実現を求めてきた。
3.しかし、政府は、政府内での統一方針とりまとめを先行するとして、今回の「大綱」を労使協議なしに決定した。その内容は、労働基本権については「現行の制約を維持する」とする一方、代償制度である人事院の役割を大幅に縮小し、内閣と各府省の人事管理権限だけを強化する内容となっている。また、「信賞必罰」の考えに基づく能力・実績主義の新人事制度の導入をはかろうとしている。
このように「大綱」は、労働基本権を認めず、一方的に人事管理の権限を集中・強化するものであり、ILO条約違反ともいえる内容である。能力主義の新人事制度についても、労働組合の意見を聞くことなしに上から押しつける制度導入である。また、「キャリア制度」「天下り人事」の廃止には全く手をつけていない。これでは、国民が求める民主的な公務員制度改革とは、到底言えない。
4.今後、政府は、「大綱」に沿って2002年中に国家公務員法改正の「法案要綱」をとりまとめ、2003年中には国会提出を目標としている。連合は、今後、労働基本権の回復と今回の「大綱」について、ILO提訴に向けて準備を進める。また、2002年中の「法案要綱」策定において、必ず労働組合との協議を実現し、労働基本権の確立と労使合意に基づく人事・処遇制度の実現をはかっていく。
以上