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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.102 2002年7月16日

連合官公部門連絡会


採用試験の見直し案、人事制度の基本的考え方について回答提示 7/15
行革推進事務局との交渉・協議再開(第5回)

 対策本部は、7月15日午後2時45分から行政改革推進事務局と交渉・協議を行い、「採用試験の抜本改革の在り方について(案)」の説明を受けるともに、国会で石原大臣が「大綱」に書かれた「天下り」の大臣承認制を見直す趣旨の答弁をした問題等について質した。さらに、「新人事制度の原案(2次)」をめぐる4回目の交渉・協議で要求した「能力等級・職・任用分限等の基本的考え方」の回答を示すよう迫った。推進事務局は、高原・井上参事官らが対応、対策本部から実務クラス交渉委員が参加した。
 採用試験の抜本改革については、公務員制度改革大綱で「平成14年前半に成案を得る」とされたことを踏まえ推進事務局で検討していたが先週各省に提示し意見を求めており、組合にも説明したもので、対策本部は次回交渉・協議で推進事務局に意見を提出することとした。また、新人事制度の「基本的考え方」については、4回にわたる交渉・協議で明確にならなかった新人事制度の根幹について回答を求めていたものであるが、本日の回答内容は依然としてあいまい、不明確なものであったことから、次回さらに明確な回答を示すよう強く求め、第5回の交渉・協議を打ち切った。
 交渉・協議の概要は以下のとおり。

<採用試験関係>
 推進事務局は「採用試験の抜本改革の在り方について(案)」について、「採用試験制度の企画立案については、内閣みずからが行う」ことを前提に、「行政ニーズに応じた人材を確保するという観点から、各府省による総合的な人物評価をより重視した形とする」として、@人事院が各府省統一的に実施する試験は、各府省の行う人物評価の対象となる一定規模の候補者を公務員として求められる一定の能力・適性に基づき選抜するためのものとし、その合格者の中から、各府省が総合的な人物評価に基づき採用を行う、A各府省が行う人物試験については、内閣において一定のルールを設定する、B試験区分はT・U・V種の区分を維持し、平成15年度のT種試験から、合格者数を採用予定数の概ね4倍程度を目途に増加させるよう人事院に求める、C「案」の取扱いについては、時期は未定だが「推進本部決定」としたい、と説明した。
 説明に対し対策本部は、@公正・中立性の確保の観点から見て内閣が企画立案するのは認められない、A現行のT・U・V種の試験区分を維持すること自体問題であるし、T種試験を2段階にして4倍の合格者を出すことは成績主義の原則を損ね情実採用の恐れがあり反対である、などと主張したが、推進本部は、@内閣が企画立案したから公正・中立性を確保できないということはないし、人事院もチェックすることにしている、A各府省の人物試験は十分時間をかけてやるので情実ということにはならない、との考え方を示した。これについて、対策本部は「今の説明では全く疑問は解消されないし、納得できないので、我々の意見を改めて提示する。とりまとめに当たっては意見を反映してほしい」と申し入れたの対し、推進本部は「意見はお伺いする」と応えたことから、後日改めて意見を提出することとした。

<「天下り」の大臣承認制に関わる石原大臣の国会答弁関係等>
 石原担当大臣はすでに推進事務局に対し「在職期間の長期化」を指示していたが(対策本部ニュースNo.92参照)、7月8日の参議院・行政監視委員会で公明党の続参議院議員の質問に対し、「勧奨退職というものは廃止、(中略)段階的に平均年齢を上げていくというような作業とあわせて、『天下り』の承認も大臣に任せるんじゃなくて、内閣が責任を持って行える仕組みを考えていきたい」と答弁し、「大綱」の大臣承認制を見直す趣旨の答弁をしたことについて、対策本部は「答弁の内容が『大綱』の中身を実質的に変えるものであればその影響は新人事制度全般に関わってくる」として、推進事務局の統一見解を示すよう求めた。
 これについて、推進事務局は「大臣は『大綱』は変えないということを明言しているし、『内閣が責任を持つ』という趣旨は『内閣が総合調整する』範疇の話であり、大臣承認制を変えるものではないと理解している」という見解を示し、あくまで「大臣承認制」は変わらないとの考えを示した。
これに対して対策本部側は「今の参事官見解は明らかに大臣の国会答弁のねじ曲げだ。大臣承認制を内閣承認制に見直す趣旨の発言だと理解している。行革推進事務局として統一見解を示せ」と強く求め、推進事務局側も検討したいと応じた。
 また、日曜日の新聞紙上で「在職期間の長期化に向けた指示が出された」との記事についてその真偽を質したところ、推進事務局は「報道されたような指示は聞いてない。推進事務局としては、従前の石原大臣指示に基づく検討作業はしているが、いろいろなことが関連するのですぐに答えを出せる状況にはない」と、報道内容についてコメントする立場にないとの見解を示した。
 さらに対策本部が、「われわれがこの問題について関係省庁と交渉・協議することについて、検討中の推進事務局として容認するか」と確認を求めたが、「かまわない」との見解を示し、推進事務局としては、「在職期間の長期化」に積極的に対応しないことが明らかとなった。

<能力等級・職・任用分限等の基本的考え方>
 推進事務局は、「2次原案をまとめる段階までに明確になっていなかったことについて、皆さんとの話し合いを通じて固まってきたことを示したい。新しい制度の下で『職』を明確に位置づけるものとするが、法制局との協議がまだなので、法制的に詰めたものではなくあくまで事務局の考えをまとめたものである」として、宿題となっていた新人事制度のもとでの能力等級と官職・任用・分限等のそれぞれの考え方と関連性について、次の通り説明した。

(1) 職、官職の在り方に関連して、採用の在り方が関わるのでそこから説明したい。
 国公法上の採用は、職がまずあって欠員を補充するというものであり、そこは変えない。欠員について公務外から人を充てることを採用という。任官補職のような2段構えのことは考えていない。採用が行政行為であるということも変わらない。職に欠員補充することを採用と定義するので、採用を含めた任用は欠員補充である。したがって、公務員は職員である限り特定の官職に就いていることになる。なお、今、国公法では「官職」と呼んでいる(給与法は「職務」)が、そう呼ぶかどうかは未定である。休職発令の場合にも現行と同じで職についたまま休職という形を取る。「待命」ということは考えていない。新しい制度でも職が根っこにある。能力等級制度が職に取って代わることはない。
(2) 現在の制度と同じじゃないかという疑問であるが、現在は職責に応じて職を分類整理し(=職階制の考え方)、人事、任用、給与制度を組んでいる。まず、職を分類整理するという考え方である。
 これに対し今回は、職は確かにあるが、職は職としておいて、その職を参考として新たに能力基準を内容とする能力等級制度を設け、そのツールとして、職責ではなく求められる能力のレベルで設定される「基本職位」によって、職を「職務分類」する。職と能力等級の関係は別次元の話ということだ。
 従来は、(職責で分類していたので)昇任・降任ということになっていたが、今回は職はあるが職責で仕切られていないのっぺらぼうの世界なので、「配置」ということになる。能力等級と基本職位との対応関係によって個別の職に配置する。能力等級が変わらなければ求められる能力も同じなので、職が変わっても昇任・降任とはならない。能力等級の関係を維持し、能力のある人にそれを発揮してもらうために基本職位がある。
(3) @求められる能力のレベルに応じた職務の区分(基本職位)に、A欠員がある場合、Bそこに新たな能力ニーズが発生するので、C能力等級制度の能力基準に基づいて能力の実証を行い、D欠員を補充(採用・任用)するものであり、Eそれにより職員としての身分を取得(常に特定の職にある)することになり、F能力等級表によって格付け・評価され、給与を支給される、という関係である。
(4) 分限免職は採用の裏返しなので、ある特定の職を持っていることが前提になる。しかし、現行国公法は部内の職員配置を念頭に置いておらず、スポット的に考えている。したがって、特定の官職の適格性を欠けば免職できるが、運用上、解釈上も判例上でも、まず下位の官職に就けることにしている。それを今回は、適任者を配置していく中で、どこに就けても適格性がない場合には免職という考えを採ろうとしている。2次原案に書いているように就きうるどの職を想定しても堪えられない場合に免職に当たるということだ。
(5) 降任は降格とセットであり独立した行為にはならない。新しい分限処分がどういう仕組みになるかということだが、前に官職という関係に変化を来すことだと申し上げたが、必ずしもそれだけではないようだ。休職や(今は運用していないが)降給も処分に当たる。公務員の身分について、官側の一方的な命により不利益をもたらすことが分限処分である。今回は、降格と免職が該当することになる。分限という言葉が新国公法に入るかどうか決めていないが、分限処分は明確な基準に従わなければできないということで、降格・免職の明確な基準を設けることにしている。新法に「身分保障」が出てくるかどうかはまだこれからの検討事項である。

 説明に対し、対策本部は、@同じ公務員の中に能力等級制度が適用される者(一般の職員)とそうでない者(上級幹部職員)がいるのはおかしい、A降任は分限処分でないとしているが不利益処分に当たるのではないか、B分類されない「職」の公務員制度上の意味は何か、C能力等級の人員枠と職の不整合の問題、D配置ということであるのなら、「任用」と位置づけて行政行為にこだわることの意味がわからない、E身分保障されているのは能力等級という給与上の話なのか職なのか、などと疑問点を質したが明確な見解は示されなかった。
 このため、対策本部が「文書で示してもらわないと十分理解できない。次回は何らかの形で文書で示してほしい」と強く要望したのに対し、推進本部は「皆さんが理解できるようワークシートなどの形で工夫して説明することを検討したい」と答えたことから、これを確認し、次回はさらに明確な説明をするよう求め、第5回交渉・協議を打ち切った。

以上