対策本部は、9月13日午前10時30分から行政改革推進事務局と9回目の交渉・協議を行い、推進事務局は、高原・鈴木参事官らが対応、対策本部から実務クラス交渉委員が参加した。
9日に引き続き評価制度について交渉・協議を行い、対策本部側は前回不十分だった事項について次の通り指摘し、推進事務局としての考え方を示すよう求めた。
(1) 評価結果を本人に開示することは、評価制度に対する透明性・納得性を確保するために不可欠だということが民間企業における経験の到達点である。評価基準の公表、結果の本人開示について、推進事務局としてどう考えているのか。
(2) 業績評価の対象外となる職員も設けるということだが、全員(全俸給表・全職種)を対象とする前提で対象外となる者も位置づけるということか。
(3) 能力評価については基準が示されておりイメージできるが、業績評価についてはどういう目標にするのか一切示されていないのでイメージできない。具体的に作業しているものがあれば示していただきたい。
(4) 評価結果の基本給の加算額(勘案要素)や業績手当(重要な参考資料)への反映については、枠や原資の問題があるので、評価が優秀であっても処遇に結びつかない場合が出てくる。それを説明する理由が必要になる。どういう要素によって決まるのか明確にしていただきたい。また、評価者による評価の仕方がどうであったかという問題も出てくるが、どう対処するつもりか。
(5) 府省間も問題だが、府省内でも地域や機関、職種間でバランスをどう取っていくつもりか。
(6) 第2次原案がいう「苦情対応」はそもそも「苦情処理」とは考え方が違っている。国営企業並みの「苦情処理共同調整会議」を設けたらどうか。また具体的対応を各府省に委ねたのでは、府省によって異なる体制・対応となるのではないか。人事管理権者だけが対応するということではなく、労働組合あるいは職員代表を含む委員会のような仕組みを作って、現場で苦情を処理していくべきである。
(7) 新評価制度は今の勤評より重い制度になり手続きの重要性が高まるが、苦情の範囲はどうなるのか。また、評価結果は行政措置要求の対象となるのか。苦情処理をどうするかも試行の対象と考えていいか。
これに対し推進事務局は次の通り見解を示した。
(1) 等級別の能力基準は書いてあるので、それに基づいて能力開発に結びつけていく。自己評価し、面談を通じてフィードバックしていく。本人に評価結果を開示するかどうかについては、最初からどうするということを決めつけるのではなく、能力評価、業績評価それぞれの趣旨を踏まえて必要な範囲で示すことにしたい。フィードバックの範囲は引き続き検討したい。
(2) 2次原案では行政職を対象にしているが、基本的には広くやるということである。広くやるためには目標管理を具体的にどうやるかが重要となるが、たとえば数値目標にしても全ての職種で行うのは無理であり、どういう目標を立てるかということになる。仕事の内容に合わせて考えていかなければならない。具体的に対象外となるのは管区機関の長など大きな機関の長で上司と相談して目標を定めることがなじまない者を想定している。
(3) 目標は組織目標があってそれを個別具体的な職務の目標にブレークダウンしていくことになるので、組織目標も定まらない中では、まだ具体的目標をどうするかの検討は行っていない。
(4) たとえば加算額は2次原案に書いてあるように一回限りの評価だけでなく、過去の実績やその他の要素で判断していくことになる。業績手当は評価が重い位置を占めている。評価者の問題は、評価の識別力の問題として考えていきたい。
(5) 評価は各省共通の基準で行うので、それによってバランスを取ることになるし、職種間の問題は給与の配分ということになると考えている。
(6) われわれも苦情処理制度を整備しなければならないことは認めて、いろいろ検討しているところであるし、まず各府省に責任があることを強調したものである。今日は皆さんの意見を伺った。労使関係の実質化は進めたいと思っているので、今後いろいろ話しをしていきたい。
(7) 苦情・不満の範囲は評価にかかわるすべてである。行政措置要求の問題は今日は見解を保留する。苦情対応も、試行の中で各府省に体制を作って進めることになる。
このように本日の交渉・協議の中で、「評価基準の公開、評価結果の本人開示」「評価結果と処遇との関わり」などについては、総務省・人事院の検討内容や対策本部の考え方とも大きく隔たりがあり、第2次原案で示されている「フィードバック」は文字通り人事管理権者の都合で「面談」等を行うものにすぎず、評価基準の公開はおろか、評価結果の本人開示さえ明確でないことが明らかとなった。行革推進事務局は対策本部の「フィードバックではだめだ。開示と明記せよ」との追及に答えられず、「必要な範囲」について検討中であると答えるに止まったため、次回までにその検討内容を提示するよう求めた。
また、第2次原案の「苦情対応の仕組み」についても、われわれが求める苦情処理制度とはまったく異質なものであることが明らかとなった。対策本部の「そもそも苦情処理システムとは異質なものであり、これで新たな評価制度を導入したら現場は大混乱だ。人事管理権者サイドだけで苦情相談するという安易な発想ではなく、きちっと組合代表も参加する現場の処理機関を設置するよう再考せよ」との追及に正面から答えられず、「救済制度を含め整理したい」と筋違いの答弁を繰り返したり、「今日は皆さんの意見を伺った」とするのみで、行革推進事務局が評価システムの勉強さえまともに行っているかさえ疑わせる答弁に終わっている。
さらに、対策本部が新たな評価の結果は勤務条件に密接に関連することから、行政措置要求の対象とするのかどうか尋ねたことについても答弁を「保留」しており、交渉・協議の当事者として無責任な姿勢に終始した。
こうしたやりとりを踏まえ、最後に対策本部は「本日の行革推進事務局の答弁は全く不十分で納得のいくものではない。われわれが今日主張した点を反映した評価制度に作り直すべきだ」としたうえで、「新しい評価制度を導入していくためには、労使の意思疎通が極めて重要であり、解散した公務員制度調査会の労使関係グループでは問題意識を持って検討していた。こうした点が2次原案に一切入っていないことは問題である。是非検討してほしい。本日も試行の考え方が提示されていないが、どんなに短くとも最低半年間は試行の枠組みについての話し合いは必要だ。強く要請する」と強く求めたのに対し、推進事務局が「労働組合の関わり方については、基本権制約に代わる相応の措置も遠からずまとまってくるので、その際論議したい。半年前という要望は聞いた」と答え、本日の交渉・協議を終えた。
以上