みんなの力で労働基本権確立と民主的公務員制度改革を実現しよう

労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.113 2002年9月27日

連合官公部門連絡会


ILO理事や国際労働組合組織代表が参加して「国際シンポジウム」を開催
国際労働基準に基づき労働基本権確立求める

 9月25日、連合と連合官公部門「対策本部」の共催による「公務員の労働基本権確立・民主的な公務員制度改革をめざす国際シンポジウム」が東京・銀座ガスホールで開催され、連合官公部門構成組織と民間組合の役員など300人が参加した。このシンポジウムは、国際キャンペーンのため来日されたILO理事や共同提訴団体となったICFTU(国際自由労連)等の国際労働組合組織の代表5名の参加を得て持たれたもので、国際的観点からわが国の公務員の労働関係の問題点や公務員制度のあり方等について幅広く議論が行われた。
 このシンポジウムに先立ち、国際組織の代表は24日午後から25日午前中にかけて福田官房長官・石原行革担当大臣・坂口厚生労働大臣をそれぞれ訪ね、日本の公務員の労働基本権を確立するよう強く要請した。また、各政党の党首らにも同趣旨の要請を行った。なお、国際シンポジウムは、27日にも大阪に会場を移して開催している(大阪会場のシンポジウムについては、次号に掲載)。

《国際シンポジウム(東京会場)の概要》

 「公務員の労働基本権確立・民主的な公務員制度改革をめざす国際シンポジウム」(東京会場)は、25日午後1時30分から開催され、国際組織からの報告やパネルディスカッション、さらに共同提訴団体からの連帯メッセージが行われるなど、3時間にわたって真剣な論議が交わされた。
 シンポジウムは、連合官公部門「対策本部」の宮入副事務局長が司会にあたり、冒頭、主催者を代表して草野連合事務局長があいさつした。草野事務局長は、はじめに海外からシンポジウムに参加されたウルフ・エドストレームILO理事、ガイ・ライダーICFTU(国際自由労連)書記長、ハンス・エンゲルベルツPSI(国際公務労連)書記長、ロバート・ハリスEI(教育インターナショナル)事務局長上級顧問、デビット・コックロフトITF(国際運輸労連)書記長に感謝をのべ、次のように今シンポジウムの意義を訴えた。
@ 連合と連合官公部門は、6国際組織と共同で、政府の「公務員制度改革大綱」が国際労働基準に違反している、としてILO結社の自由委員会に提訴した。この提訴が11月の同委員会で、労働側の訴えが受け入れられるよう、国際的な働きかけを強めている。
A 国内的には、1千万署名に取り組み、民間組合や地方連合会の協力を得て、すでに目標を突破している。連合はじまって以来最高の署名人数となったが、これは、民主的な公務員制度改革を実現しようとしている公務員組合員の不退転の決意の表れでもある。
B このシンポジウムで、国際的観点から日本の公務員の労働基本権の問題点や、公務員制度のあり方を幅広く議論しよう。連合は、国際的にも国内的にも評価される民主的な公務員制度改革が実現できるよう、一層、運動を強化していく決意だ。

[ICFTU(国際自由労連)からの報告と問題提起]
 次いで、ガイ・ライダーICFTU書記長が登壇し、「1億5,700万人の加盟組合員を代表して、連帯の意を表します」と前置きして「国際組織からの報告と問題提起」を行った。その要旨は次の通り。
@ 日本政府に対する提訴は、11月のILO結社の自由委員会で審議され、裁定が下されるが、私たちの見解が認められることを強く確信している。基本的労働組合権を取り戻す皆さん方の闘いは、世界のすべての労働組合の闘いである。
A 労働における基本的権利は、その国の経済や社会の発展段階に関係なく、普遍的に尊重されるべきものだ。ILO総会の条約勧告適用委員会で、日本政府代表が「日本社会における公務員の地位の特殊性」を労働組合権侵害の言い訳にしていたことに驚きを禁じえなかった。
B 多くの途上国、特にアジアの途上国は日本の法制度を参考にして、自国の労働法制を起草しており、もしこれが労働権を侵害するために悪用されるのであれば、あまりにも理不尽で、多大なる被害を及ぼすものとなる。
C 労働条件は、使用者と労働組合による団体交渉を通して決定されるべきことが普遍的に認められている。日本は、団体交渉の代償として人事院を設置したが、これはILO基準に照らして不十分だ。公務員制度改革大綱は、この状況をさらに悪化させるものである。
D ICFTUは次のことを日本政府に要求し、労働基本権確立のため、ともに闘いぬく決意だ。
1) ILOが繰り返し勧告しているように、官公労働者の労働基本権を完全に回復すること。
2) 公務員制度改革大綱を取り下げること。
3) 国家公務員法、地方公務員法の改正案を国会に提出する前に、労働組合との有意義な真の協議・交渉を持つこと。

[連合官公部門「対策本部」からの報告と問題提起]
 これを受けて、日本側からの報告と問題提起を連合官公部門「対策本部」の山本事務局長が行った。そのなかで次の点を訴えた。
@ 日本政府の問題点は、1)公務員の労働基本権に関してILO国際基準から逸脱していること、2)わが国の憲法に違反し公務員の労働基本権を制限していること、3)公務労働組合を民主主義社会における有意義な社会勢力、パートナーとして認めてないこと、である。
A われわれは、大綱の撤回と労働基本権の確立を求め総力をあげて取り組んでいる。その基本スタンスとして、1)団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度の実現、2)新人事管理システム設計の前提として「4原則2要件」の確立、3)キャリア制度廃止、天下り禁止による民主的で国民に開かれた公務員制度の実現、を掲げている。
B 11月の結社の自由委員会での審議への対策を強めるとともに、1千万署名達成の成果を踏まえ、野党との連携を強めての国会対策や中央・地方での大衆行動、国民へのキャンペーンなどを精力的に進めていこう。今シンポジウムの理論的、実践的成果を確信している。

[パネルディスカッション]−「日本の公務員制度の現状とその進むべき途」
 両氏の報告と問題提起を踏まえ、パネルディスカッションが質疑を含め1時間40分にわたって行われた。パネリストとしてウルフ・エドストレームILO理事、ハンス・エンゲルベルツPSI書記長、毛塚勝利専修大学法学部教授が参加、中嶋連合総合国際局長をファシリテーターとして、3つのテーマをもとに進められた。
 まず、「現在の日本の公務員制度の問題点」について、3氏から次のような指摘がなされた。
毛塚専修大学教授 日本の公務員法制は、労働基本権を厳格に制限しており、ILO基準からはかなりかけ離れている。争議権を全面一律に禁止し、非現業職員には団体交渉権・協約締結権すら認めず、消防職員等の団結権を否認している。1973年の全農林警職法事件最高裁判決で、財政民主主義、代償措置論などを根拠とする合憲論が打ちだされ、望ましい労使関係をつくっていくための基盤を奪い去ってしまったことが最大の問題である。
エドストレームILO理事 ILOのドライヤー報告、結社の自由委報告、条約勧告適用専門家委報告などで指摘してきた日本の問題点は、@消防職員も団結権を持つべきであること、AILO条約を適用除外する範囲を広く解釈してストライキを全面一律的に禁止すべきでないこと、Bストライキに対して刑事罰を科すべきでないこと、C日本の代償措置は不十分であり団体交渉権を持つべきであること、などであるが、日本の公務員法制はなんら変わってこなかった。
エンゲルベルツPSI書記長 これまでは人事院勧告を享受すれば良い時代だったかもしれないが、もはや労働組合がもっと団体交渉に参加すべき段階にきている。アジア諸国の政府は、日本の公務員法制の状況を言い訳にして自国の労働権を侵害している。日本で国際労働基準が達成されれば、厳しい弾圧を受けている韓国やインドネシアなどの労働者がそれを手本とすることができる。日本で、労働基本権の確立のためにもっと世論を喚起することが必要だ。

 さらに「現在日本政府が進めている公務員制度改革の問題点」について、3氏からは次のような指摘がなされた。
エドストレームILO理事 大綱は手続き面で、ILOが強調している労使の対話、144号条約の3者協議の規定に準拠していない。労使の信頼をベースにした交渉が成立していなければ、公務での労使関係は継続、維持されない。内容的にも大綱はILOのこれまでのコメントを裏切っている。日本は先進国であるにもかかわらず、政府は日本の公務員が責任をもって行動できないと考えているかのようである。
毛塚専修大学教授 国際労働基準と日本の公務労働の現実との乖離は、全農林警職法事件最高裁判決の不幸な公務労働観にみてとれる。政府には公務における使用者としての責任意識が欠けている。政官業の癒着、高級官僚の閉鎖性、天下り、行政の不透明さなどをもたらしたものは何か、その分析を大綱はしていない。公務員制度改革といってもターゲットが不明だ。どのような労使関係をつくるか、そのあり方について合意するなかで、能力・実績主義の人事制度の改革も進められるべきだ。
エンゲルベルツPSI書記長 日本の「代償(措置)」という言葉は嫌いだ。「人勧(制度)」もなくなった方がよい。労使関係の責任はどこが負うのか、労使関係をきちんとする意思が政府にあるのか疑う。たしかに日本の文化はユニークだが、労使交渉で平等な交渉相手として尊重し、相手から学ぶ近代的な労使関係のシステムづくりが、求められている。

 最後に、「真に民主的な公務員制度を確立するため、制度の改革の方向」について、3氏は次のような考えを示した。
エンゲルベルツPSI書記長 (公務の社会的意義、民主的公務員制度改革のために踏まえるべきポイント】について、先にオタワで開催されたPSI世界大会での議論を紹介しながら、要旨以下のように提起) 新自由主義政策による富める者と貧しい者の格差が拡大している中にあって、公務労働、公共サービスの質を高めていくこと、同時に公務労働運動が「社会の中での肯定的力」、「平等のために闘っていく」ことが重要だ。そのためには労使協議、働く者の参加を実現させることが重要である。
エドストレームILO理事 (【日本の民主的公務員制度改革にあたり、変えてはならない国際基準】について) まず「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」(1998年)だ。普遍的権利としての強制労働、児童、男女差別の撲滅、また結社の自由、団体交渉権はこれらの権利実現のための基礎でありこの点で妥協はない。また87号条約にもとづく団結権、交渉権、スト権は官・民を問わずすべての労働者に与えるべきだ。刑事罰も科すべきではない。◆毛塚専修大学教授 (【公務員制度改革の方向、内容】について) ILOの水準を日本の常識にすべきだが、同時に組合として今後どのような労使関係をつくっていくか考える必要がある。その際、団体交渉とは異なる公務そのものについて協議する場の設置なども検討してみてはどうか。また国民、住民の視線をどの段階でどのように包み込んでいくのか、第三者的な関係、調整的なシステムがあってもいいのでは。そうした議論の中から「新しい公務員制度」についての進展があるだろうと思う。

 こうしたパネリストの発言に対し、会場からいくつかの質問がなされ、各パネリストから見解が示された。
 −ILO条約批准及び勧告の権限について、その当該政府が勧告を受け、それについて何の対策も行わなかった場合、ILOとして何らかの制裁を当該国に対して行うことがあるのか。
ウルフ・エドストレームILO理事
 条約を批准してるにもかかわらずそれが履行されない場合、ILOは、条約勧告委員会に政労使を呼んで理由を尋ね、また機会ある毎に不履行の国としてブラックリストに載せるなどしている。制裁までは行わないが、民主国家として世界に知名度がある国にはかなり効果がある。

 −地方自治体で労働条件(賃金等)について労使で合意しても、その後議会で修正が行われたり、否決されたりする。他の先進国ではどういう状況か教えてほしい。また、労使合意によるものを議会が否定することについて、労働基本権はどうなるのか。
ハンス・エンゲルベルツPSI書記長
 民主的な労使関係を築くことが重要である。議会で予算を審議する前に交渉を行う必要がある。仲裁制度などを設ける必要がある。交渉に参加しない議会が否決するというルールは良くないことだ。。
ウルフ・エドストレームILO理事
 これまで官公労の組合と政府の間で合意があっても議会で駄目になってしまうケースがたくさんあったと思う。すべてを議会にかけなくてもよい、そういうシステムに変えていく必要がある。また労使交渉で決めたことは遵守するというルールをつくる必要がある。政府はILO勧告に従う義務がある。しかし、たとえばカナダなどは連邦政府なので、国としては批准しても州として受け入れないところもあり、問題を抱えている。
毛塚専修大学教授
 組合と議会の関係は難しい。議会を株主総会に例えると、経営者と労働者が約束したことを株主総会にいちいちかけたりはしない。議会は確かに住民の総意だが、パイの分け方については議会にはからなければならないが、パイの作り方や食べ方まで議会にかける必要はないのではないか。システムを変えていくべきである。

[共同提訴団体からの連帯メッセージ]
 この後、共同提訴団体である3国際労働組合組織の書記長らが登壇し、連帯メッセージが発せられた。
ロバート・ハリスEI事務局長上級顧問
 私たちは何年もの間、日本の公務員労働者、教員の権利をめぐる状況を見守ってきた。日本はなぜこの問題で遅れているのか、と。もはや過去に決別すべき時だ。質の高い公共サービスの提供のためにも、公務員労働者を完全なパートナーシップとする労使関係が求められている。日本がその改革に進めば、他国にも大きな意義をもたらすだろう。
フィリップ・ジェニングスUNI書記長
(代読・UNI日本加盟組織連絡協議会・伊藤栄一事務局長)
 日本の労働基本権問題は懸案であり、ILO提訴も過去を引きずっている。日本の公共部門の(労使関係の)現実には驚く。日本は民主主義の国かと。そして、こんどの大綱だ。政府の意識水準には驚いたが、誠実な交渉がされてこなかったことには、もう驚かない。これが日本政府の水準なのだ。UNIは人間的な社会経済改革をめざしている。改革は公共、私的の両部門のバランスが大切だが、その前提には公共部門の労働基本権確立が必要だ。
コックロフトITF書記長
 私たちはどこで働いていようと、組合を結成し、団結する権利、団体交渉権、そして争議権を持つ。できればストはどこも避けたい。そこで話し合う用意ができる。しかし、どうあっても団結権、団体交渉権は譲れない。日本はILOの諸条約を批准している。公務員制度の改革は必要だろうが、G8のリーダー国なのに、その手順、内容ともILO基準を満たしていない。他の諸外国、とりわけアジアに人権遵守の姿勢を示さなければならない。

 以上の論議で、3時間に及ぶシンポジウムを閉じたが、その閉会あいさつで、成川連合総合政策局長は、「大変充実したシンポジウムだった。貴重なご意見をいただいたと思う」とシンポジウムの成功を評価した。そのうえで、@ILO87、98号条約の規定する権利は普遍的なもので、国際的な価値がある、地球的規模で確立すべき課題だと印象づけられた。アジアなどの諸国へのメッセージにもなった、A日本の公務員の労働基本権確立にとって、1970年代にスト権確立を訴えて、実現したオランダや団体交渉にいたるスウェーデンの様々な工夫の例などは参考になった、B公務員制度改革は公共サービスで働く人々の参加があってこそ、充実し、国民生活に安心をもたらす。その中身について国民的な論議が必要だ。労働基本権の確立なくして、公共サービスは充実しないことを確認することができた、と集約した。
 最後に、「11月にはILO結社の自由委員会で政府を厳しく追及したい。民主的な制度改革につなげ、法改正では国民生活を安定させる制度を追求していきたい」と決意をのべ、東京での国際シンポジウムを締めくくった。

《 政府・政党要請行動の概要 》
国際労組代表が「国際労働基準に沿った改革」を要請

 国際キャンペーンのため9月24日に来日したILO理事と国際労働組合組織の代表5人は、同日午後から25日午前中にかけて、政府・政党への要請を精力的に行った。海外の代表団は、要請先で「改革は国際労働基準に沿った内容で民主的な形で行うべきだ」と熱っぽく訴えた。この要請行動には、榊原連合会長代行(「対策本部」副本部長)、丸山連合副会長(「対策本部」本部長)、中嶋連合総合国際局長、山本「対策本部」事務局長が参加した。要請行動の概要は次の通り。

【福田官房長官への要請】
 福田官房長官への要請は、24日16時45分から首相官邸で行われた。
 要請団は、「日本の公務員制度への国際的な関心は高い。それは、日本がILOの中心的な役割を果たしており、諸外国へ与える影響が大きいからだ。しかし、日本政府が決めた公務員制度改革大綱は、労働基本権問題をはじめ、これまでILOが指摘してきた問題点をさらに悪化させるものであると懸念している。そのため、連合と共同提訴することにした。改革は国際労働基準に沿った内容で、民主的な形で行われるべきである」などと述べ、見解を質した。
 これに対し福田官房長官は、「公務員制度改革に当たっては、能力、業績を反映した人事行政をめざして、意識と制度の改革を進めている。経済情勢は、今は順調とはいえないが、これまでのわが国の成長の原動力は官民問わず、安定した雇用関係と労使関係にある。今後とも安定した労使関係はわが国の社会経済にとって重要であり、従来にも増して努力してまいりたい。小泉内閣は改革を基本方針に掲げているが、経済改革などとともに労使関係も改革の検討対象である。公務員制度改革の検討を進めるに当たっては、職員団体との話し合いに十分に誠実に対応してきており、今後とも誠実に対応していく。改革の実行に当たっては、ILOにおける議論や国際的な議論も参考にしていきたい。そういう意味で今回の国際シンポジウムは時宜を得たものと思っている」との見解を示した。

【石原行革担当大臣への要請】
 要請は25日9時15分から内閣府の大臣室で行われた。冒頭、石原大臣から「海外の労働組合組織の代表が来日されたことを歓迎する」との表明があり、懇談に入った。まず、ガイ・ライダーICFTU書記長が「改革は必要であるが、それは、労働者が参加した民主的なものでなければならない」として、次の3点が必要と訴えた。
@ 日本においては、長い間、公務員の労働基本権が制限され、団体交渉権が無視されてきた。公務員制度改革大綱に、この団体交渉権が反映されていないのは残念なことである。むしろ、人事院の機能が弱まり労働組合の諸権利が一層制限されているのは問題だ。
A 制度の設計にあたっては、労働組合の参加が必要だ。改革を成功させ、効果的で質の高い公的サービスを提供するには、その改革のプロセスに労働組合を参加させることが重要だ。
B 日本は国際社会で重要な位置を占めており、公務員制度においても日本の制度をまねる国々がでており影響が大きい。
 ついで、ハンス・エンゲルベルツPSI書記長は、「公務員の労働基本権を制限する理由に、特殊事情をあげる日本政府の姿勢に驚いている」としたうえで、ドイツにおける労使の共同決定主義を引用し、円滑な労使関係が維持されている実情を披露して、公務サービスを提供するパートナーとして、労働組合の参加の必要性を強く訴えた。
 これに対し、石原大臣は、@改革に当たっては労使間の信頼関係が必要であり、改革のプロセスで労働組合と十分意見交換していくことが大切なことだと考えている、A団体交渉権については、独立行政法人化により、国家公務員の適用範囲は拡大してきており、国立大学の法人化でさらに広がっていく、B大綱のとりまとめ過程では、与党の自民党内でも基本権問題に踏み込むべきとの意見もあったが、「制約の維持」という結論となった、とのべた。
 
【坂口厚生労働大臣への要請】
 坂口厚生労働大臣に対する要請行動は、9月24日14時15分から行われた。
 最初に、ガイ・ライダーICFTU書記長が発言し、「私たち国際労働団体は、日本の公務員制度改革に大きな関心を持っている。日本政府が労働組合と十分な話し合いを行うことなく、一方的に改革を推し進めることによって、日本の違反状況をさらに悪化させることを懸念している」と表明した。そして、日本政府が大綱を撤回し、労働基本権の確立を前提とした改革を行うよう要請した。
 続いて、ウルフ・エドストレートILO理事が発言し、「ILO条約は先進国においても、途上国においても普遍的に適用される必要があると考えている。ILOの中で、日本の役割は大きく、期待も高まっている。それだけに日本がILO条約を正確に適用するよう期待している」と述べた。
 これに対して、坂口大臣は、「それぞれの国には、それぞれの歴史があり、それを踏まえつつ共通項目を探ることが必要である。その意味では皆さんのご苦労は大変なものだと思う。日本も最大限の努力をし、できる限りのことを考えたい」と答えた。

【民主党への要請】
 民主党への要請は24日15時50分から民主党本部で行われ、羽田特別代表が応対した。羽田特別代表は要請団に対し、「未だに労働基本権を付与しない我が国の現状は、国際的にみて恥ずかしい。世界のモデルになるような公務員制度を作るべきだと考えている。政府の検討は労働基本権問題が抜けている。公務員労働者に労働基本権が付与されていないことで、多くの問題で支障をきたすことがある。労使の話し合いができるようにはなってきているが、本質的な解決にはなっていない」との考えを明らかにし、「本日の要請は鳩山代表に良く報告しておく」と述べた。

【社民党への要請】
 社民党への要請は24日15時から社民党本部で行われ、土井党首、福島幹事長、日森衆
議院議員が応対した。土井党首は要請団に対し、「日本の今の公務員制度と政府の対応が今のままで良いと思っている人は少ない。国際シンポジウムにはたいへん期待しており、シンポジウムの成果を共有していきたい。人権、福祉、教育、環境は人間が生きていくための基本的な政策であり、この分野で質の高い公務サービスを提供することと、民主的な公務員制度のあり方は表裏一体の関係にある。皆さんの要請はしっかり受けとめて、これからも主張していきたい」との考えを述べた。

【自由党への要請】
 自由党への要請は、24日17時30分から自由党本部で行われ、小沢党首、中井組織委員長が応対した。
 小沢党首は、「私どもは、公務員制度も含む政治、行政のあり方、経済社会の活動のあり方について過激な改革を主張している政党である。連合とは、お互いに謙虚に新しい改革に向けて取り組んでいかなければならない。勤労者の生活向上につながる改革の実現に全力をあげたい。政府の公務員制度改革に問題があるとすれば、皆さんとは一生懸命に協力させて頂きたいと思っている。連合の改革案については基本的に支持しており、労働三権についても認めるものは認めるべきだと考えている」との見解を述べた。

【自民党への要請】
 自民党への要請は、25日11時から12時過ぎまで自民党本部で行われ、甘利筆頭副幹事長(労政担当)、太田党行政改革推進本部長、林同事務局長、茂木同事務局次長、長勢労政局長が対応した。要請に対し自民党側は、「連合・連合官公部門は合意を形成しながら進めていこうとの立場であると聞いている。昨年末に大綱を決めたが、その際、政府は十分意見を聞かなかった印象を与えたようであり、反省すべき点があればしなければばらない。党としては、皆さんといろいろと話しあってきたところだ。今後、公務員制度改革の詳細設計を行っていくにあたっては、関係者、特に労働組合の皆さんと話し合いながら進めていくことを強調しておきたい」との考えを表明した。

【公明党への要請】
 公明党への要請は25日11時から参議院公明党控室で行われ、草川副代表、江田労働局次長が対応した。要請に対し公明党側は、@労働に対する国際的な規範がなければ世界平和もないと承知している、A労働慣行は国により歴史的な経緯があるとする政府との間に意見の相違があることも事実と認識しており、法制化の段階で意見反映させたい、B公務員制度改革については江田次長はじめ衆参の担当議員が、「人事院の権能を守るべき」との発言をしてきた、Cしかし労働三権についての議論はでていない、D今後みなさんの立場からの見直しも考えなければと思う。地公のみなさんの諸要求もあわせ努力させていただきたい、との見解を示した。
 最後に丸山「対策本部」本部長から「大綱作成の過程では与党の中にも 団体交渉権・協約締結権は必要との意見があったとも聞いている。現行制度は国際基準にあっていないことは事実であり、ぜひ修正いただけるよう法制化の段階での努力をお願いしたい」旨要請し終了した。

以上