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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.118 2002年10月31日

連合官公部門連絡会


「主語入れ文書」で2回目の行革推進事務局交渉実施
室長が労働基本権制約の明確な根拠示せず、再度文書回答を要求

 連合官公部門連絡会対策本部書記長クラス交渉委員らは、31日、行革推進事務局春田公務員制度等改革推進室長と交渉を持ち、前回の交渉で文書回答を要求した「公務員の労働基本権制約を維持することとした理由」を提示するよう求めた。室長は「文書回答はできない」とし、大綱決定の経過と大綱の記載内容を繰り返すばかりで、基本権を制約する根拠について何一つ見解を示せなかった。このため、対策本部側は、「本日の室長の満足な答弁もできない事態は、労働基本権問題について行革推進事務局が何一つ検討してこなかったことの証明だ。これでは到底先の議論はできない。労働基本権問題について明確な回答を示せ」と求め、見解が示されるまで「主語入れ文書」の交渉・協議を中断することとし、本日の交渉・協議を打ち切った。

 交渉は11時から行われ、対策本部は山本事務局長以下書記長クラス交渉委員が参加し、推進事務局は春田室長、高原参事官らが対応した。
 冒頭、山本事務局長が「前回確認したように、大綱、2次原案には『基本権の制約を維持する』ことは書かれているが、なぜ制約するのか、その明確な根拠を文書で回答するよう求めておいたので、本日は憲法28条と公務員の関係の説明を含めそれを示してほしい」と文書回答を求めたのに対し、室長は「文書回答はご勘弁願いたい」として、口頭で大綱決定の経過を説明し、大綱本文の基本権制約に係る部分を引用したほか、次のとおりの見解を示した。

(1) 労働基本権の憲法上の扱いであるが、労働基本権は労働者と使用者の間での団結権、団体交渉権、団体行動権として基本的役割を果たすものと位置づけられていることは承知している。公務の世界で制約されているが、それは公務の性格を踏まえたもの(=大綱の記述の趣旨)であるが合理的なものでなければならないことから、全農林警職法事件最高裁判決を踏まえたものでなければならないと認識している。
 なお、憲法28条の規定は公務員を除外していないので、公務員は「勤労者」に含まれていると理解している。
(2) 私企業では、労使対等の立場で団体交渉し協約を締結することで、集団的に賃金・労働条件を決めることとし、合意できない場合は同盟罷業ということがある。これに対し公務員の場合は、私企業とは異なるので、合理的、社会的、民主的に決定されなければならず、立法府において決めることにならざるを得ない。公務員には私企業の仕組みをそのまま当てはめることができない。もちろん、それに代わる代償が必要であり、法定する給与準則(給与法)やその他法定された勤務条件を定めているところである。個別の課題についての行政措置要求や不服審査請求制度も設けてある。
(3) 公務員の給与財源は税収で払っており、賃金・勤務条件をどう決めるかは民主国家の中で政治的、財政的、民主的など諸般の事情の中で合理的に決定されなければならない。そういう意味で公務員は、法律で定められる給与その他の勤務条件を享受するということになっている。国民が求める行政サービスなどを提供するために公務員の処遇をどうするかは、議会制民主主義を通じて律せられるものと考えている。

 これに対し対策本部は、「大綱の表現ではなぜ制約するのか明確になっていないし、今の説明でも、制約した状態がどういうものかの説明はあっても、どうして制約するのかの説明にはなっていない。財政民主主義のコントロールというのはよく聞くが、税金だから制約されるという珍説ははじめて聞いた。では、税金が給与原資でない公共部門労働者には労働基本権を保障するのか」と重ねて見解を質した。
 しかし室長は、「税収は制約の一つのメルクマールであって、税収が給与原資でなくても、料金等が法律で規制されているなど市場競争にさらされていない場合には制約されることになる。基本権制約の理由について、われわれとしては『公務の安定的・継続的な運営の確保の観点、国民生活へ与える影響の観点などを総合的に勘案し、公務員の労働基本権の制約については、今後もこれに代わる相応の措置を確保しつつ、現行の制約を維持することとする』という『大綱』の表現で尽きていると考えており、これをさらに分解して説明しろと言われても難しいものがある」などと繰り返すばかりで、満足な回答ができなかった。そのため対策本部側は、「税金で給与を支給される場合は労働基本権が制約されるという珍説を含め、いまの室長のこれ以上説明できないという見解が政府の公式見解として受け止め、ILOにも報告するが、それでいいか」と迫ったところ、結局最後に室長は「基本権そのものの制約の話ではなく、制約していることを前提に全農林警職法事件判決を踏まえてお話しした」として、対策本部が求める制約する根拠を説明したものではないことを認めた。
 このため対策本部は、「われわれは行革推進事務局が公務員制度の大改革をやるということなので、労働基本権のあり方も当然正面から議論されるものと考えてきたが、大綱では『制約』との結論しか示されなかった。したがって、労働基本権をどのような根拠で制約したのか、それをきちんと説明してほしいと求めているし、政府もその説明責任がある。本日の交渉では経過が述べられただけで、明確に答弁さえできていないので、どうして制約することにしたのかについて再度明確な見解を示してもらいたい。誤解の余地なく議論するために、その見解は文書で示してもらいたい。『主語入れ文書』の交渉・協議は、それが示されるまで中断したい」と強く要求、室長が「混同するといけないのであらためて整理したい」と答えたことから、これを確認し本日の交渉を打ち切った。

以上