対策本部は、6月12日午後3時30分から、「新人事制度の原案(2次)」をめぐる行政改革推進事務局と4回目の交渉・協議を行い、推進事務局は井上参事官らが対応、対策本部から実務クラス交渉委員が参加した。
対策本部が、前回交渉の際、「免職・降格の基準・手続き」について、次の通り疑問点を提起し回答を求めていたのに対し、推進事務局が見解を示した。
<対策本部の質問>
(1) 免職・降格とは、現行制度でいう分限処分(免職=官職を失うこと、降任=下位官職に就けること)と同じ概念か違う概念か。また、身分保障の考え方は残るのか。
(2) 仮に免職・降格が分限=身分保障上の制度であるとすれば、第三者機関の意見の申し出等を経ないで、人事管理権者の側である推進事務局が一方的に制度設計できるのか。
(3) これまでの分限の「基準」は公平性の観点から法律・人規で定めているが、処分権は人事管理権者にあるとしても、第三者機関の関与なしに法律で基準を定めるだけでは公平性が担保されないのではないか。現行でも分限・懲戒処分の規定は抽象的で使用者の裁量範囲が広すぎるという問題があり、仮に法律で定めるとなると、いまの人規よりさらに詳細な規定が必要ではないか。
(4) 「手続き」の規定についても、同様に第三者機関の関与が必要ではないか。また、提示されている手続きは、あまりに一方的ではないか。
(5) 「評価制度の整備も踏まえ」とはどのような意味か。分限に関わる評価は別途行うのか、通常の評価か。公平性はどう担保するのか。
(6) 分限処分となると、休職はどうなるのか。
(7) 労働基準法第19、20条や判例の趣旨に従い、「解雇規制=雇用保障」の規定を新たに設けるべきではないか。
<推進事務局の見解>
(1) 職と任用の関係については前回もお話したように、推進事務局として完全に整理していない。今の分限制度は官職を前提として、身分を変更することを分限といっている。この職階制を前提とする官職概念はなくなるが、新たな「職」を国公法に規定するかどうかは部内で検討中である。厳密に今の分限と同じかと言えば、必ずしも同じとは言えない。「分限」という表現も新国公法に入れるかどうか検討しているところである。
「免職・降格」も職員の重大な利益の変更に当たるので、いわゆる身分保障の考え方に含まれるものと考えており、法令の定めに従って行うこととし、その場合の基準・手続きを明確化しようというものである。
(2) 「免職・降格」は職員の重大な利益に関わる事項なので、ご指摘の懸念については理解する。しかし、第三者機関の関わりは、全体の機能分担との関係があるので、私からは申し上げられない。なお、2次原案をまとめる際には、人事院の意見を聞いている。
(3) 「免職・降格」も能力の減退や低下などが基準になってくるので、能力・実績評価と密接に関わるものであり、中身についても評価との関わりを記述している。
(4) 病気休職や研究休職など、現在の休職事由を変更することは考えていないが、自己啓発のための長期休業は「大綱」にも書かれており、検討したい。
(5) 労働契約説に立てば、労基法並みの解雇等に関する規定を適用するといったことも考えられるが、新人事制度でも法令上の基準に基づいて採用し身分保障していくことになるので、労基法上の規定の仕方はなじまない。
これについて対策本部は、「職、身分保障、分限の概念が未整理では、これらを前提とする『免職・降格』の検討はできないのではないか」「『分限』『身分保障』は『官職』に対する概念であり、『官職』概念が変わるのであれば、『分限』『身分保障』も当然変わるのではないか」「能力等級制度を新人事制度の柱とすることによって、『職』概念がどうなるのか明確にすべきだ」「今の身分保障は『中立公正性』を担保するための仕組みであるが、今度は降任は位置づけないということであるから、何を持って行政執行の『中立公正性』を担保するのか」「上級幹部職員は能力等級制度を適用しないので、『降格』がなくて『降任』となっているが、同じ一般職の中で別の仕組みにするのはダブルスタンダードでおかしい。また、行政職以外の職種は一体どうするのか」など、「免職・降格」の前提となる考え方を明確にするよう質した。さらに、「(2)について責任を持って回答できるものを出席させよ」と追及した。
これに対し推進事務局は、「職階制の下での『官職』概念は維持されないが、『職』が溶けてなくなるわけではないので、そういう『職』を改めて定義し直して新国公法に位置づけるということもあり得る」「職の概念が変わるとしても、公務員として相応しくない職員、あるいは能力を発揮していない職員が現実にいるとすれば、それを処断する仕組みは作る必要があることから、『免職・降格』を検討したものである」「能力等級制度に基づいて配置し降格も能力に基づいて行うので、成績主義はこれまでより強化されると考えており、それにより『中立公正性』は確保されると考える」「一般と上級幹部で『基本職位』の意味が異なることも踏まえ、一般は『降格』、上級幹部は『降任』とし、それぞれ基準を定めることになる」などと答えたが、その見解は対策本部の追及に正面から応えたものではなかった。
このように、前回から残されていた「能力等級、職、任用の関係」という公務員制度の基本がいまだに定まらず、公務の中立公正性を担保するものとしての分限や身分保障概念も明確にされず、職員の利益保護のための第三者機関の関わり方に責任ある回答が示されなかった。このため対策本部は、「公務員制度の根幹に関わる事項が未整理なまま、どうして人事制度の第2次原案や 国公法改正作業が出来るのか。行革推進事務局の姿勢はあまりに不誠実であり、無責任きわまりない」と、行革推進事務局の姿勢を糾弾。@『能力等級、職、任用、分限のそれぞれの基本的な考え方と相互の関係整理』について、推進事務局としての見解を文書で示すこと、A機能分担を含めた第三者機関の関与の仕方について、責任を持って答弁できる者を出席させること、などを改めて要求し、「これらが実現されない限り、2次原案の中身についてこれ以上実りある交渉・協議は継続できない」と追及、行革推進事務局もこれに基本的に同意したことからこの日の交渉・協議を打ち切った。
佐賀では1千人参加して総決起集会,7都市で街頭宣伝・署名活動
佐賀県官公労協(牛島孝一全農林九州地本佐賀県担当執行委員・大串賢治自治労県本部委員長共同代表委員、9産別・16,000人)による「民主的な公務員制度改革の実現を求める総決起集会」が6月7日、佐賀市役所前公園で開かれ、1,038人が参加した。
冒頭、集会主催者の牛島代表委員があいさつし、「公務員制度改革大綱は、特定政治家と一部官僚が密室で作り上げたもの」とのべて批判、来賓の連合佐賀・坂口事務局長が連帯のあいさつをした。
連合官公部門「対策本部」から集会に参加した足立全水道委員長が情勢報告を行った。そのなかで、4月末に行革推進事務局が提示した「新人事制度の2次原案」をめぐる交渉の状況にふれ、また、総力をあげて取り組んでいる1千万署名運動について、第1次集約が370万を超し、この日、国会に提出したことを報告。「これを足がかりに、さらに取り組みを強めよう」と呼びかけた。
黒木県官公労協事務局長が、6月中の取り組みとして、連合構成組織と民主団体の40団体・24,000人に対して署名の要請行動を行う考えを提起した。集会は、「労働基本権を確立した民主的な公務員制度改革の実現に向けて全力をあげる」との集会決議を採択、大串自治労県本部委員長の音頭による「団結がんばろう」で締めくくった。
なお、佐賀県官公労協では、5月末から7月上旬にかけて、県内主要都市7カ所で街頭署名行動・主要団地でのチラシ配布行動に取り組んでいる。
以上