3月11日、連合と連合官公部門連絡会の共催による中央行動が行われた。行動は、政府がILO勧告を無視し、今国会への公務員制度改革関連法案の国会提出にむけて、一方的に作業を進めていることに対し、@公務員制度改革大綱を見直し労働基本権を確立した改革案の策定、A労働組合との交渉・協議を抜きにした法案の閣議決定阻止、を目標に取り組まれた。与党3党と各国会議員への要請を行った後、午後6時から日比谷大音楽堂で中央集会を開催、連合及び連合民間の代表参加を含め、全国から2,000人が参加した。集会後、参加者は、寒風のなか国会に向け請願デモを行った。なお、この中央集会には、イラク情勢が緊迫度を増してきていることから、急遽、「イラクの大量破壊兵器の廃棄、国連決議無き武力攻撃反対」のスローガンが加わった。
集会は、連合官公部門対策本部の轆轤副事務局長の司会で始まり、北岡副本部長(自治労委員長)が議長の任についた。北岡副本部長は、「未だにILO勧告を受け入れようとしない政府に強い怒りをおぼえる。抗議の気持ちを込めて集会を成功させよう」と呼びかけた。
主催者を代表して笹森連合会長(連合公務員制度等改革対策本部本部長)が、2003春闘の取り組み、公務員制度改革、イラク問題をめぐる情勢と課題にふれ、以下のように決意を述べた。
@ 先月3野党によるILO調査団報告集会が開催された。公務員制度改革は日本の進路をも決めかねない国のベースにかかわるものである。3野党との連携を強化し本気で取り組んでいく。
A 1948年の現行制度発足以来50年。ILOのドライヤー報告をはじめ多くの勧告がありながら、政府が無視しつづけてきたところに今日の結果を招いた。今回のILO勧告をしっかり受けとめさせることが重要な課題である。政府・与党からは、ILO軽視の声を聞くが、断じて許してはならない。怒りをもって連合全体の課題として、先頭にたち要求を実現するまで闘い抜く。
B イラク問題をめぐり国連は最重要な局面を迎えている。不戦を誓った平和憲法、唯一の被爆国の労働運動として、戦争を放棄し世界平和に貢献することは運動の基本である。大国の覇権主義に荷担し、世界の世論に背を向け日本政府が独走する事態を許してはならない。18日に連合としての「イラク戦争反対集会」(明治公園)を予定しており、重要な課題として取り組む。
ついで、来賓として出席した3野党の代表から連帯の挨拶を受けた。
◆川端達夫・民主党公務員制度問題対策本部長
国の根幹をなす公務員制度をつくるのに、政府の改革案には官僚の思うままの内容が盛られた。国会では大臣の無責任答弁がつづいている。ILO勧告を無視し、労働基本権を先送りにしようという動きは、まさに政治が機能していないことを示している。これを変える最重要課題として、民主的な公務員制度改革へ力を合わせていきたい。
◆中西績介・社民党副党首・公務員問題対策特別委員長
この集会のアピール文にもあるように、3党は先の決起集会では「民主的で透明な手続きを経ないまま、今度の国会への公務員制度改革法案の提出に反対する」と明確にした。野党の結集、労働組合の結集が不可欠な時である。石原行革担当大臣が「外国の国際機関による拘束力のない勧告で、労働基本権を認めるのは乱暴な意見だ」などというほど、政府は民主主義をまったく理解していない。われわれの態勢を固め、本格的に追及をする決意だ。
◆山岡賢次・自由党政治行政改革推進本部長
こんなに景気の悪いときにも、政治家・官僚・業界の癒着がつづいている。「公務員制度改革大綱」でキャリア制度を温存しようとするのは、自民党政治そのものだ。これを変えずに、国民の生活はよくならない。石原大臣の頭はよほど狭いのか、無恥で厚かましいのか、皆さんの怒りはわかる。共に頑張りたい。
ここで、海外から本集会に参加した、フィンランドKTV(自治体労働組合)のテイヤ・アサラ・ラークネソン執行委員会議長ら代表団4人が紹介された。
山本連合官公部門対策本部事務局長が基調を提案した。山本事務局長は、昨年11月のILO勧告以降の経過として、「3野党ILO調査団報告集会で、3党の結束は一層固まり、国会での政府追及が続いている。また、構成組織の3万カ所職場集会の開催による運動の盛り上がりによって、3月中旬の公務員法改正法案の閣議決定は阻止できる状況となった」とのべ、当面の目標であった「3月中旬の閣議決定を阻止」しえたことを運動の成果と評価した。そのうえで、政府の対応について、「官房長官交渉で、『強行せず、話し合いを行う』という確認があるにもかかわらず、石原行革担当大臣が国会答弁で、ILOという国際機関を軽視、ILO勧告を無視し基本権問題を先送りして大綱に基づく法改正を行う考えを示したことことは、暴論で認められない。石原発言の撤回を求め、職場から抗議と発言撤回の取り組みを強めよう」と訴えた。
ついで、構成組織を代表して全逓・菰田書記長、国公総連・宮崎副委員長、都市交・古後副委員長から闘う決意表明がなされた。
集会は、最後にアピール(別紙1)を全郵政・太田中央執行委員が提案、満場の拍手で確認。宮入連合官公部門対策本部副事務局長が閉会挨拶し、丸山連合官公部門対策本部本部長の音頭で団結がんばろうを三唱して、集会を終えた。
この後、参加者は、国会に向け請願デモ行進を行い、公務員の労働基本権の確立を訴えた。
(別紙1)
アピール
透明で民主的な公務員制度改革を求める闘いは、2年に及ぶ取り組みのなかで、いま、最大のヤマ場を迎えようとしている。
昨年11月のILO勧告は、「公務員制度改革大綱」の見直しと国際労働基準に基づく制度改正、そのための労使協議を日本政府に求めた。
しかし、政府は今日に至るも、勧告を受け入れる姿勢を示さず、われわれが強く求めている「労使協議の場」も設けようとしていない。そればかりか、「大綱」に基づいた公務員法改正にむけた作業を一方的に進め、今国会に改正法案を提出しようとしている。
国会答弁で石原行革担当大臣は、「外国の国際機関による拘束力なき勧告で労働基本権を認めるのは乱暴な意見」と述べ、労働基本権問題を先送りする見解を示した。このようなILO勧告軽視の暴論は容認できない。石原発言の撤回を強く求める。
こうしたILO勧告を無視し、労働組合との交渉・協議もないまま、改正法案を一方的に閣議決定することを、われわれは到底認めることはできない。
国会では、民主・自由・社民の3野党は共闘態勢を固め、2月25日に決起集会を開催し、「民主的で透明な手続きを経ないまま、今通常国会への法案提出に強く反対する」ことを確認して、連日国会審議のなかで、ILO勧告無視の政府の姿勢を厳しく追及している。さらに共同の対案提出の準備に入っている。
一方、連合官公部門の構成組織は、全国3万カ所の職場で全組合員参加の職場集会を開催し、「改正法案の一方的な閣議決定に反対する決議」を採択した。さらに、地方連合会の協力のもと、3月下旬から4月上旬にかけて、再び全国からのキャンペーン行動に取り組む。
われわれは、こうした国会内外の取り組みのうえにたって、3月下旬には、政府にILO勧告に基づく公務員制度改革を求め、その実現を強く迫る。
ILO勧告を踏まえた公務員の労働基本権の確立と、透明で民主的な公務員制度改革を実現するため、総力をあげる決意をここに表明するものである。
2003年3月11日
連合・連合官公部門連絡会
透明で民主的な公務員制度改革を求める3.11中央集会
中央集会に先立ち、対策本部は11日、自民・公明・保守新党の与党3党に対する要請を行うとともに、公務員連絡会規模で、与野党の700人にのぼる議員に対し要請行動に取り組んだ。要請では、@ILO勧告を全面的に受け入れ、「公務員制度改革大綱」を見直し、労働基本権を確立した改革案をとりまとめること、A国際労働基準に沿った公務員制度改革案取りまとめのため、労使協議の場を直ちに設けること。また、交渉協議・合意抜きに「国公法・地公法」等公務員制度改革関連法案の一方的な閣議決定を行わないこと、の2点(別紙2)について、特段の尽力を求めた。
このうち、議員要請行動は、午後3時から社会文化会館で開かれた公務員連絡会の中央集会の後、参加者が直接各議員を訪ね、要請書を手渡した。
各与党に対する要請の概要は、次の通り。
【自民党】
要請は10時から自民党本部で行われ、対策本部から丸山本部長が参加。自民党は、太田誠一衆議院議員(党行政改革推進本部長)、林芳正衆議院議員(同事務局長)が対応した。
組合側が要請書の内容を説明し、「公務員制度改革と労働基本権の確立を切り分けようとの考え方が示されていることについて危惧している。そのようなことのないよう労使協議の場を設けてほしい」と強調した。これに対し太田本部長は、「公務員制度改革については、労働側とも話し合いたい。そして、枝葉の部分はともかく、できるだけ理解をいただけるようにしていきたい」と答えた。
【公明党】
要請は14時30分から行われ、対策本部の山田国税労組委員長、池田日教組副委員長が参加。公明党は、桝屋敬悟衆議院議員(党団体渉外副委員長)が対応した。
桝屋議員は、「公務員制度改革問題は、党として議論しており、要請にある皆さんの気持ちについては、代表に伝える。制度改正に当たっては、労使の話し合いが必要と考えている」との考えを示した。
【保守新党】
要請は13時30分から院内で行われ、対策本部の足立全水道委員長、久保国公総連副委員長が参加、保守新党は、井上喜一衆議院議員(党政調会長)、金子善次郎衆議院議員(党総務部会長)が対応した。
要請に対し、「ILO勧告については日本の実情に応じ検討した方がよい。基本権問題は、どういう団体交渉権の在り方がよいか議論すればよい」などの考えが示された。
(別紙2)
2003年3月11日
〈 各 議 員 〉 様
連合官公部門連絡会
代表委員 北岡 勝征
代表委員 榊原 長一
代表委員 石川 正幸
代表委員 橋爪利昭紀
代表委員 丸山 建藏
公正・透明で民主的な公務員制度改革を求める要請書
日頃より、私たちの運動にご理解ご協力を頂き、心から感謝申し上げます。
ILOは、昨年11月の理事会で日本政府に対し、公務員の労働基本権の制約を維持するとの考えを再検討すべきであるとして、「公務員制度改革大綱」を見直し、公務員制度をILO条約に適合したものとすべく、法改正に向け労働組合を含む関係者との実効ある協議を直ちに実施するよう勧告を行いました。
連合は、働く者の共通の問題であるとの認識に立ち、笹森会長を本部長に公務員制度等改革対策本部を設置し取り組んでいます。また、民主党・自由党・社会民主党は連合と共に、党首が参加した3野党議員決起集会を開催し、ILO国際労働基準を満たした公務員制度改革実現に向けたアピールを採択し、対案作成など共同の取り組みを強めています。
政府は、今国会への提出に向けて「国公法・地公法」等公務員制度改革関連法案の策定作業を進めていますが、ILO勧告を無視し、労働組合との交渉・協議なしの法案提出を、私たちは決して認めることはできません。
下記事項の実現に向け、特段のご尽力を頂きますようお願い申し上げます。
記
1.政府は、ILO勧告を全面的に受け入れ、「公務員制度改革大綱」を見直し、公務員労働者に労働基本権を確立した改革案をとりまとめること。
2.国際労働基準に沿った公務員制度改革案取りまとめのため、労使協議の場を直ちに設けること。また、交渉協議・合意抜きに「国公法・地公法」等公務員制度改革関連法案の一方的な閣議決定を行わないこと。
以上