対策本部は3月31日、午後4時から内閣府大臣室で石原行革担当大臣に会い、ILO勧告の尊重と民主的公務員制度確立に向けた申入書(別紙)を提出して交渉した。交渉には、対策本部側から丸山本部長(国公総連委員長)、北岡(自治労委員長)・榊原(日教組委員長)・橋爪(全郵政委員長)各副本部長、山本事務局長らが参加、行革推進事務局側から堀江事務局長、春田公務員制度等改革推進室長、高原参事官が同席した。
この日の交渉は、3月28日に行革推進事務局が、国公法改正案など公務員制度改革関連法案を各府省・組合に提示したことを受け、@交渉・協議、合意抜きの関連法案の閣議決定を行わないこと、A労働基本権の扱いを今次の公務員制度改革と切り離すとした石原大臣の国会答弁の撤回、B信頼関係を回復し仕切直しのためにも事務局体制の人心一新、を課題に行われた。
冒頭、丸山本部長は、「労働組合との交渉・協議がまったくなされていないにも関わらず、非公式とはいえ、各府省に法案を提示したことは、大変遺憾なことである」と強く抗議した。そのうえで、「われわれとの交渉・協議、合意が整うまでは法案の閣議決定は行わないと約束されたい」と迫り、石原大臣の見解を求めた。
これに対し石原大臣は、「2月24日の連合に対する官房長官の見解表明で、対決という形は取りたくない。強行したくない、という趣旨を述べており、同じ気持ちである。組合との交渉・協議により、一致点をみいだせるようぎりぎりまで努力したい」と釈明した。組合側から、「われわれは、法案が各省に提示されたことで、すでに閣議決定という出口の時期を決め、そのもとで作業を進めている、との判断にたっている」として、強い不満を表明、重ねて見解を求めた。 石原大臣は、「閣議決定に向けたスケジュールは検討中、決定時期は全く決めていない。強行しないという発言を信用して貰いたい」と述べた。これに対し組合側は、「大臣発言は、強行はしない、スケジュールを決める際には組合に事前に話し合うこと」と念を押し確認した。また、官房長官発言の労働基本権問題の「協議の場の検討」ついて、石原大臣は、「どのような仕組みが可能なのか、検討している」と述べた。この問題については、ボールは政府側にあることを確認し、連合と官房長官、連合官公部門と石原大臣のレベルでそれぞれ協議が行われることを確認。また、政府側の直接の当事者は石原大臣であることも確認した。
法案の扱いに関連して、「制度改正には、人事院の意見の申出が必要ではないか」と質したのに対し、「意見の申出をするかどうかは、あくまで人事院の判断であるが、その判断ができるまでの必要な期間は、取りたい」との考えを示した。
ついで、石原大臣の国会答弁の撤回を求めた。組合側は、「労働基本権の扱いは今次の公務員制度改革と切り離して扱う」とした問題について、「ILO勧告は大綱を見直して基本権を付与するよう求めており、切り離しは認められない。また、大綱のいう『相応の措置』との関係からも基本権問題は一体として同時決着をはかるべきだ」として、発言の撤回を求めた。この国会答弁について石原大臣は、「ILOを軽視したり、基本権問題を議論することは否定していない。今回の改革と基本権問題を切り離す、とも言っていない。基本権問題は、議論する場をつくって、検討したらどうか」との見解を示した。
さらに、組合側は、「能力等級制度における昇任・昇格基準は勤務条件であり、決定制度が変わるのだから、労働基本権を合わせて議論する必要がある」として、大臣の見解を質した。これに対して石原大臣は、「まず法律がある。昇任・昇格基準は『勤務条件的』ではあるが、勤務条件ではない。そこは、法律の下位の問題として組合と話し合っていきたい」との考えを示した。
これに対し組合側は、「法律案をだすことと、労働基本権問題を含めて一体でわれわれと交渉・協議することでよいか」と質した。この点について石原大臣は、「そこは明確に言われると詰まらないが、皆さん方との信頼関係にたって、あうんの呼吸で進めたい」との見解を示した。
最後に、組合側は、「この間の推進事務局の対応には不信感を強く持っている。この際、信頼関係を回復するうえでも、公務員制度等改革推進室の人心を一新すべきだ」と求めた。大臣は、「大変重い課題として受け止める」と述べた。
このように、法案の閣議決定の日程は決まっておらず、スケジュールは事前に組合に示し、一方的に見切り発車は行わないことを明らかにしたが、今回の公務員制度改革のなかで労働基本権問題を一体のものとして検討していくかどうかについては、明確にされなかった。このため、この問題は、連合と官房長官との間で、「協議の場」の設置と、そこでのILO勧告に基づく労働基本権の取り扱いを含めた交渉・協議を行い、合意のもとで作業させていくことが課題となっている。
(別紙)
2003年3月31日
行政改革担当大臣
石 原 伸 晃 殿
連合官公部門連絡会
代表委員 北岡 勝征
代表委員 榊原 長一
代表委員 石川 正幸
代表委員 橋爪利昭紀
代表委員 丸山 建藏
ILO勧告の尊重と民主的公務員制度確立に向けた申入れ
日頃より官公労働者の勤務条件向上にご尽力いただいている貴職に敬意を表します。
さて、50年ぶりの大改革を唱えた政府の公務員制度改革は、ILO勧告が出されたことによって、国内問題に止まらず国際的意義をもつ課題となっており、国連中心主義を外交の基本とする我が国外交政策のあり方が問われることともなってきました。
政府が閣議決定した「大綱」によって、公務員の使用者たる政府の権限が強まり、代償措置たる人事院の権限が縮小されることにより、労働基本権制約政策のあり方自体を根本から問い直す必要があるということは、我々のみならず、有識者やマスコミも主張し、ILO勧告においても疑問の余地なく指摘されているところです。
私たちは、ILO勧告を誠実に受け容れ国際労働基準を満たした透明で民主的な公務員制度の確立を繰り返し求めてきたところです。そしてその実現に向けて、貴職に対し法制度の改善に向けた「労使協議の場」の設置などを申し入れてきましたが、その考え方に基づき、今後とも引き続き相互の信頼を醸成しつつ実効ある交渉・協議を確保する努力をしていく所存です。
つきましては、連合官公部門連絡会として、貴職が3月5日の参議院予算委員会で、極めて遺憾かつ看過し得ない答弁を行っていることに鑑み、その発言の真意を質すとともに以下の通り修正または撤回を求めますので、切に誠意ある対応を望みます。
記
1.国連機関であるILOに対しその果たしている役割に敬意を表し、誤解を解くべく見解を表明するとともに、3月5日予算委員会でのILOに関連する答弁を撤回すること。
2.労働基本権の扱いは今次公務員制度改革と切り離し可能であるかの答弁を撤回し、労働基本権の扱いを一体のものとして改革するべく見解を表明し、政府として交渉・協議の枠組みを設置すること。
以上