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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.138 2003年4月1日

連合官公部門連絡会


政府がILO結社の自由委に追加情報送付−3/31
連合・連合官公部門も交渉・協議なき法案作業を批判する情報送付−3/28

 ILO結社の自由委員会第329次報告(2002年11月21日)に対する見解のとりまとめ作業を進めていた日本政府は、3月31日付でILO結社の自由委員会に「政府追加情報」を提出した。しかしその内容は、@「政府として検討段階にある具体的な案についても関係する職員団体に提示し、協議を申し入れるなど、誠意ある対応を行っている」と述べるなど、ILO勧告以降一度も交渉・協議が行われていない事実を押し隠そうとするものであること、AILO勧告で法制度の改善を指摘された消防職員の団結権や登録制度、在籍専従制度、団交権・スト権等の問題についても、これまでと全く同様の代わり映えのしない見解を繰り返しているものにすぎないことなど、何ら329次報告を踏まえたものとはなっていない。そればかりか、こうした日本政府の見解についてILOの理解を求める努力を行うとして、今回の勧告を受け入れるとの姿勢を一切示していない。
 こうした日本政府の追加情報がILOから前向きに評価される可能性は全くない。にもかかわらず、ILOに送付した目的は、この間の国会答弁でも明らかなとおり、条約違反とまで指摘された今回の勧告に対する日本政府の態度決定を引き延ばし、5月末の結社の自由委員会で「最終報告」等を出させないための時間稼ぎをしようとする意図が隠れている。
 一方、連合及び連合官公部門連絡会は、別添資料にあるとおり、3月28日付で追加情報を送付し、@329次報告以降一度も政府と交渉・協議が行われていないこと、Aにもかかわらず政府は国公法改正作業を一方的に進め閣議決定・国会提出の準備を進めていること、B政府は勧告が指摘した事項について何ら改善する努力を行っていないこと、などについて強い怒りと不満の意を表明し、「委員会の注意を喚起」することを求めた。これは、政府の改正法案作業の進捗状況を踏まえながら、実質的に5月末に予定されている次期結社の自由委員会で日本案件に対する再審査を行い、日本政府の不誠実な態度に対するアクションを行うよう求めたものである。また、31日付で、日本政府の追加情報を批判した内容の「付論」を送付した。
 連合及び連合官公部門連絡会「対策本部」は、こうした情報提供を行いつつ、今後さらにILO対策を強めていくこととしている。その一環として3月末に連合から中嶋総合国際局長、「対策本部」から山田国税労組委員長と岩本事務局次長がジュネーブに出向き、ILOの33名の労働側理事全員から日本政府が勧告を受け入れるよう求めた署名を獲得、4月中旬には労働側理事の代表のトロットマン氏が訪日し、その署名を日本政府に提出してILO勧告実現を迫ることとしている。


<添付資料>

ILO結社の自由委員会第329次報告に関する追加情報


2003年3月28日
連合・連合官公部門連絡会


1.結社の自由委員会第329次報告以降の経過
(1) 2002年11月21日に結社の自由委員会第329次報告がILO理事会で採択されて以降、日本政府は、総務省が「我が国の公務員制度について、ILO条約違反である旨言及された点については、我が国の実情を十分理解した判断とはいえず、従来のILOの見解と異なる部分もあることから承服しがたい」とのコメントを発表したのみで、同報告に対する正式の見解は一切明らかにしていない。
 連合笹森会長と連合官公部門連絡会代表委員は、2002年11月29日、福田官房長官に対して@ILO勧告を全面的に受け入れ、「公務員制度改革大綱」を見直して、次期ILO理事会の開催時期までに、公務員労働者の労働基本権を確立する方向での改革案をとりまとめることA国際労働基準に沿った改革案とりまとめのため労使協議の場を直ちに設けること、を申し入れたが、日本政府からは明確な回答が示されなかった。同様の申入れは、石原行革担当大臣、片山総務大臣に対しても行われた。(以上、2002.12.26付け連合追加情報)
(2) 上記経過を踏まえ、連合・連合官公部門連絡会は、2003年2月24日、再度、福田官房長官と会い、申入れに対する明確な回答を求めた。福田官房長官は、「国家公務員法などの改正作業に当たっては職員団体と誠意を持って交渉・協議する」との見解を示したものの、「協議の場」の設置については「よく検討させてほしい」として、明確な回答を示さなかった。また、官房長官は「公務員制度改革で強行するつもりはない」「独走はできない」とのべた。
 連合官公部門連絡会は、本年2月25日、石原行革担当大臣と会い、同様に申入れに対する回答を求めたが、「現在、『大綱』に基づく国公法改正案の検討作業を進めているので、節々で組合側と意見交換していきたい。協議の場は政府全体の問題として検討したい」として、明確な見解は示さなかった。また、石原大臣は「労働基本権の問題は一、二ヶ月で結論が出る問題ではない。基本権のあり方は将来の課題だ。今回は、『大綱』で決めた労働基本権制約のもとで制度設計を行い、次のステップとして議論したい」との見解を示した。
(3) 現在開会中の通常国会でも、民主党、自由党、社民党の野党議員が再々に渡って「日本政府はILO勧告を全面的に受け入れるとの態度決定を行い、公務員の労働基本権を確立すべきだ」と日本政府を追及したが、坂口厚生労働大臣、片山総務大臣、石原行革担当大臣はいずれも@329次報告はILOの過去の見解と異なっており、日本の実情を良く理解していないA「中間報告」なので、3月中に日本政府の見解をとりまとめ情報提供し、日本の実情を理解してもらうよう努力する、とする答弁を繰り返し、受け入れるとの明確な態度を示していない。
 にもかかわらず、石原大臣は、日本政府のILO勧告に対する見解がまとまっていない段階の3月5日の参議院予算委員会の民主党議員の質問に対して、「基本権を今公務員の皆様方に与えるということが本当にいいことなのか悪いのか。人事院の代償措置というものがあるわけですから、もし、そのことを進めていきますと人事院を無くす必要が出てくるわけですね。人事院、700人の方が一生懸命働いていて、それを外国の国際機関の勧告が、拘束力のない勧告が出たからといって、ひとっ飛びに労働基本権を認めろというのは非常に乱暴な議論だと私は考えておりますので、中長期的にじっくり議論する重要な問題だと考えております」との答弁を行った。
(4) 以上の通り、連合・連合官公部門連絡会が日本政府に対して再三に渡って日本の公務員法制の改革のための労使協議を行うよう申し入れたにもかかわらず、329次報告から四ヶ月が経過した今日においても、同報告「勧告」部分652(b)項にある「全面的で率直かつ有意義な協議」は一切行われていない。これは、日本政府には、われわれと「全面的で率直かつ有意義な協議」を行う意思がないものと受け止めざるを得ない。
 その一方で日本政府は、公務員制度改革大綱に基づく国家公務員法・地方公務員法の改正作業を着々と進めており、現在開会中の通常国会に同改正法案を提出する方針を変えていない。このまま推移すれば、ILO勧告以降、交渉・協議が全く行われないまま、次期結社の自由委員会前にも、政府が同改正法案を一方的に国会提出することも十分考えられる、極めて憂慮すべき状況となる。
 さらに、極めて憂慮すべき点は、同改正法案の内容である。日本政府の公務員制度改革の責任者である石原大臣の国会答弁は、@労働基本権の検討を事実上先送り・棚上げする意図、と、A労働基本権制約を維持するとした閣議決定を変えないまま改正法案を国会提出する方針、を示している。
 これは、日本政府が329次報告の「公務員の労働基本権の現行の制約を維持するという、その公表した意図を再検討すべきである」との勧告を受け入れる意志がないと言う態度を事実上表明したこととなる。
(5) 以上の経過から、日本政府には、@329次報告・勧告部分の652(a)項が求めている労働基本権制約の意図を見直す考え方はなく、「大綱」の閣議決定通り労働基本権を制約したまま公務員法改正法案を国会に提出する考えである。また、A同報告652(b)項が指摘し、求めている現行公務員制度のILO87,98号条約の違反状況を解消し、法制度を改善するための部内検討や努力も一切しておらず、そのための労使協議を行う意思もない。
 さらに、日本政府は現在も「大綱」にもとづく公務員法改正法案の作業を進めており、6月18日までを会期とする開会中の通常国会に改正法案を一方的に提出することが十分考えられる。もし、政府が改正法案を通常国会に提出すれば、比較多数を占める自民党などの与党が国会で十分な審議もなく今国会の会期中に法案を強行採決し、成立させる可能性が生じてくる。
 国会における今日の与野党の勢力比から見て、いったん公務員法が成立した後、それを見直すことは極めて困難である。329次報告は、日本政府に対して「関連法案のコピーを提出する」よう求めているが、法案コピーの提出が行われたあと結社の自由委員会で2177号案件を審査したのでは、国会における法案審議の動向に間に合わなくなることが考えられる。

2.ILO結社の自由委員会に対する要請
(1) 我々は、行革推進事務局が関係省庁に国家公務員法改正法案の条文提示を行い、本日非公式協議を開始したことを知った。正式の法令協議から2週間で閣議に提出するとの政府内ルールを考慮すれば、改正法案が近く閣議決定され国会に提出されることが予想される。
 この場合、法案のコピーが結社の自由委員会に提出されたとしても、審査が行われる時点ではすでに法案が成立してしまっているという自体が十分考えられる。
 我々は、結社の自由委員会第329次報告を無視/軽視する政府の不誠実さに対して怒りと不満を表明し、この点について委員会の注意を喚起したい。

以上