対策本部は7月29日午前11時から、総評会館2階大会議室で拡大対策本部会議を開き、公務員制度改革に関する運動の到達点を確認し、今後の取組みについて意思統一をはかった。対策本部の本部員である各構成組織の委員長・書記長のほか構成組織本部役員などが参加した。会議では、公務員制度改革関連法案の今国会への提出断念を踏まえ、本格的な闘いはこれから始まるとの意思統一をもとに、今後の取組みとして、政府に対し、「公務員制度改革大綱」を撤回させ、労働基本権の確立とキャリア制度廃止・天下り禁止による透明で民主的な国民に開かれた公務員制度の実現を求めていく闘いを一層強化する、との方針を決めた。
会議の議長に丸山対策本部本部長が就き、冒頭、笹森連合会長が次のように挨拶した。
「50年に一度という公務員制度の大改革は、公務員の働き方を決めるだけでなく、日本の進路をも決めるものである。このため、連合は、官民共通の課題と位置付け、連合全体の運動として取り組んできた。3野党の全面的なバックアップのもと、政府・行革推進事務局による、法案の今国会提出の目論みを打ち砕き、断念させることができた。しかし、本当の勝負はこれからだ。秋の臨時国会から来年の通常国会に向けたこの半年間の闘いが非常に大事で、本気で要求の獲得に向け運動に取り組まねばならない。今秋に予想される解散・総選挙で自民党に変わる政権を樹立させるため、働く者の全ての力を結集して闘い抜こう。」
ついで、民主・社民・自由3党の代表から、それぞれ連帯の挨拶を受けた。
●民主党・川端達夫公務員制度問題対策本部長
今国会への法案提出を阻止できたことは、運動の成果である。公務員制度改革は、国の根幹・国の在り方を決めるものであり、3野党は力を合わせ、あらゆる委員会で政府を追及した。キャリア制度の温存にみられるように、官僚は自らの権限擁護に走り、この国の行政を歪めている。政権交代によって国民本位の行政と公務員制度を実現させよう。
●社民党・中西績介公務員制度問題対策特別委員長
ここまで運動が広がり、前進していることに感慨を覚える。いまこそ、半世紀越しの労働基本権奪還に向けた攻勢のチャンスである。1千万署名の達成、ILO勧告、そして、かつてない3野党の結束などにより、政府に今国会への法案提出を断念させた。公務員制度改革を人権問題と捉え、国際労働基準に沿った制度とするため、さらに闘いを続けよう。
●自由党・山岡賢次政治・行政改革推進本部長
公務員制度改革は、日本の進路を決める重要な課題である。我が党は、「日本は普通の国」としなくてはならないと考えており、国際化のなかで、公務員の基本権を制約するなど特別な国にしてはならない。闘いはこれからで、野党が一致して、政府案を潰さねばならない。そのためにも、総選挙に勝利することが大事だ。
ついで、山本対策本部事務局長が経過報告と今後の取組みの考え方(別紙1)を提起した。そのなかで、山本事務局長は、政府に今国会への法案提出を断念させたことについて、「一昨年12月の大綱閣議決定によって困難な闘いを余儀なくされたが、連合とともに取り組んだ14回に及ぶ中央行動や1,000万人署名、統一キャンペーン行動、国際労働運動の支援と連帯のもとでだされた二度のILO勧告、3野党の連携強化に基づく国会での追及など、一連の運動の成果」と評価した。そして、「運動の到達点」を、相撲に例えて「土俵の中央仕切線にまで押し返した局面にある」として、「これからが本格的な力勝負の正念場になる」と強調した。
さらに、取組みの基本的考え方について、山本事務局長は、「臨時国会から来年の通常国会を視野において運動を進める」としたうえで、「当面の争点が『仕切直しか継続か』にあることから、行革推進事務局案に基づく作業を止めさせ、大綱の見直しによる制度の抜本改革のために政労協議の場の設置を求め、この協議を通じて、透明で民主的な公務員制度改革の道筋をつける」との考えを提起した。
会議では、こうした考え方を確認し、今後の具体的取組みとして次の点を決めた。
@ILO勧告を踏まえた具体的な「制度改革案」を取りまとめる。そのため学者・有識者参加の研究会の立ち上げを検討する。
A3野党との連携を引き続き強化し、共同の具体案作成・取りまとめを目指す。
B政府・行革推進事務局と交渉し、法案の国会提出困難の原因が、「手続・手法と内容」にあることを指摘し、その責任を明確にさせる。
C自民党・与党関係者に対し、ILO勧告の重要な政治的意味と、時代の変化を踏まえた公務労使関係のあり方について理解の拡大に努める。
D論説委員懇談会の開催など関係者との意見交換を積極的に展開する。
E11月結社の自由委員会への対応など引き続きILO国際対策を強化する。
F地方連合会と連携し地域のキャンペーン行動に取り組む。
G職場集会を開催し、運動の到達点、情勢、今後の取組み・課題の意思統一を図る。
最後に「透明で民主的な公務員制度改革をめざすアピール」(別紙2)を採択、笹森連合会長の音頭で「団結ガンバロー」を三唱し、会議を締め括った。
(別紙1)
公務員制度改革に関する運動の到達点と今後の取組みの考え方
一、取り組み経過と到達点
1.政府は7月25日、公務員制度改革関連法案の取扱いについて、閣議後の公務員制度改革関係閣僚懇談会で、石原行革担当大臣の「これまでの与党における議論や人事院、職員団体など関係者との協議状況等を勘案し、国公法改正法案の今国会への提出を見送らざるを得ない」との発言を了承した。
これは、「平成15年中を目標に国会に提出することとする」(2001年12月25日閣議決定)との政府方針の変更を正式に認めたものである。
2.2001年12月25日の「公務員制度改革大綱」の閣議決定によって、「使用者権限を一方的に強化する」法案の通常国会提出を宣言した政府・与党に対し、組合側は政府方針の全面見直しを求める困難な闘いを余儀なくされたが、少なくも今国会への提出については断念に追い込む状況を作り出すことができた。
このことは連合を先頭とし14回の中央行動、地方連合会が中心となって展開した全国一斉キャンペーン行動、連合に結集する53の全民間構成組織による団体署名、街頭市民アンケートの実施、2度にわたるILO勧告、5回に及ぶILO理事・国際労働組合組織代表の来日と政府要請など国際労働運動の支援と連帯、3野党共同のILO調査団のジュネーブへの派遣、衆参110余名議員による3野党決起集会、3党幹事長らによる政府申入れの実施等々結束した支援と取組み、数度のシンポジウムの開催、マスコミ・世論対策など極めて多様な取組み、そして1000万署名、全国3万カ所職場決議、全国からの議員要請上京行動など職場・地域からの日常的なねばり強い取組みなど、文字通り総力を挙げた一連の運動の成果であり到達点として確認できる。
しかし、公務員制度改革の闘いは、相撲にたとえれば土俵の中央仕切線にようやく押し返した局面にあり、これから本格的な力勝負、いよいよ正念場となる。
自民党内部には根強い基本権付与反対論と「組合とは話し合ったという手続さえ踏めばよい」とする強硬路線があり、十分警戒し慎重な対応が必要である。問題は、いかにして「大綱」の縛りを解き抜本改革実現への中期的道筋をつけるかにある。
3.行革推進事務局は、今国会への法案提出ができなくなったことを単なる作業スケジュール上の問題と強弁している。内閣法制局審査を「通過」していることから法案白表紙本を作成するなど、依然として、「大綱」に基づく法案閣議決定に向け、各省・人事院との非公式協議を継続しており、あわよくば自民党行革推進本部決定などに持ち込み、臨時国会・通常国会への道を開こうとしている。
政治の指導性の確立、国民本位の行政の実現を基本理念として掲げて、2000年12月1日の行革大綱の閣議決定から3年来進められてきた政府の公務員制度改革が、一部官僚と特定政治家が密室で進めてきたシナリオと楽屋裏が白日の下に晒され、皮肉にも茶番劇としてその第1幕が降ろされた事実を、政府・与党、推進事務局は重く、まじめに受け止めねばならない。
政府が掲げた真の国民本位の行政実現のためには、こうした結果と行政官としての分を逸脱した振る舞いに対する責任を明確にすることから始めるべきであり、政治と行政に対する信頼の回復抜きにして、国民から信頼される公務員制度改革の実現はないことを肝に銘ずるべきである。
対策本部は、政府が法案提出断念に立ち至った真因について、政府・行革推進事務局が進めた改革の手順・手続きと法案自体の内容にあることを広く社会的に明らかにし、公務員制度改革を一からやり直すべく事態の責任を追及し、対政府・自民党、行革推進事務局に「政治的区切り」をつけさせる必要がある。
<付記> 延長国会終盤の法案の扱いを巡る攻防の経過は以下の通りである。
(1) 5月16日、自民党8役と野中公務員制度改革委員長、太田行革本部長による会談が開催され、野中氏は「連合との話が物別れになったので、今国会に法案を提出したい」と述べ、自民党野中委員会・行革推進本部は組合との交渉決裂を一方的に宣言し、党内機関手続を経ることなく「閣議決定へのゴーサインを出し」、最終判断を官邸に預け、法案提出の扱いが政府・官邸の判断に「移った」。
(2) これを受けて行革推進事務局は、5月19日の小泉総理大臣・石原大臣会談で総理から閣議決定へのゴーサインを得ようとしたが、総理はこれに応じず、石原大臣・行革推進事務局に引き続き組合との協議など汗をかくことを求めた。
(3) 連合会長を先頭とした精力的な政府・与党対策を展開し、5月27日の政労トップ会談によって、「政労交渉・協議」の場の設置、「トップ会談の開催」が確認され、交渉・協議の具体的枠組み、手順についての協議が緒につくこととなった。
(4) ILO総会開催中の6月4日には、石原大臣・根本副大臣と草野連合事務局長・丸山対策本部長による四者会談が開かれ、「大綱」の抜本見直しと、政労協議と合意に基づく法案提出を求める組合側とで意見は平行線となったものの、協議の場設置の必要性が確認された。
組合側は、政府関係者の要請を踏まえ、ILO総会での激突を回避しILO基準適用委員会での日本案件リストアップを取り下げ真摯に協議を推進するとの立場を笹森連合会長が総会演説で表明した。これに対し鴨下厚生労働副大臣も、それに先だって坂口厚生労働大臣が日本政府方針として表明した「四段階手続論」を踏まえた見解を表明した。
(5) ILO理事会は6月20日、ILO追加勧告(「結社の自由委員会第331次報告」)を採択し、日本政府に再び「大綱」の見直し、労働基本権付与など条約に適合した公務員制度改革を強く求めた。これによって、「追加情報を提供すれば勧告内容は変わる」との日本政府の言い訳は成立しないこととなった。
(6) 通常国会の会期末がギリギリ迫る中で行革推進事務局は、「7月18日閣議決定強行」というシナリオに基づいて乱暴な賭けにでたが、7月8、9両日に開催された野中委員会、自民党行革推進本部と内閣・総務・厚生労働合同部会では、党内手続以前の問題として政府・行政部内での意見の不一致が明らかになり、今国会への法案提出・閣議決定は事実上断念に追い込まれた。
(7) 7月16日、自民党行革推進本部と内閣・総務・厚生労働合同部会は、党として今国会提出が物理的に不可能であることを確認し、政府部内での意見の調整や事務局体制の整備などを求める取りまとめ案を了承し区切りをつけた。これを踏まえ、自民党太田行革本部長・林事務局長、石原大臣が18日午後4時、首相官邸に小泉総理を訪ね、公務員制度改革関連法案を巡る政府・与党間の調整について報告し、総理は、同法案の今国会提出を見送る方針を了承した。24日、3与党は実務者協議の場でこうした経緯を確認した。
二、組合のスタンスと当面の取組み
(1)基本的考え方
1)政府に対し「大綱」の撤回を求め、ILO勧告・国際労働基準を満たした公務労使関係制度の実現、キャリア制度の廃止、天下り禁止など透明で民主的な国民に開かれた公務員制度の実現を目指して連合・連合官公部門連絡会対策本部は、職場・地域、各構成組織において運動の到達段階について合意形成を図ることと並行し、9月総裁選、衆議院選挙、通常国会を視野に収め、要求実現に向けた中期的方針を確立する。
2)当面、政治的争点が「仕切直しか継続か」にあることから、行革推進事務局案に基づく作業=改革を止めさせ、01.12.25「大綱」の見直し、ILO勧告を踏まえた抜本改革のために、政労協議の場の設置を求める。この政労協議を通じて、民主的で透明な国民の求めに応えた公務員制度改革実現への道筋をつける。
3)協議の場の目的・性格・枠組み・課題、検討スケジュールなど具体的事項の整理に当たっては、密室批判を謙虚に受け止め国民に開かれた手続・手法の明示、労使関係制度については組合との交渉・合意協議に基づくことを求める。
(2)具体的取り組み
1)これまで積み上げてきた連合の「基本要求」や連合官公部門の「提言」を基礎として、2度のILO勧告内容を踏まえた、より具体的な「制度改革案」を取りまとめる。そのために各分野の学者・有識者の参加する研究会の立ち上げを検討する。
2)3野党との連携を引き続き強化し、共同の具体案作成、取りまとめを目指す。また、中央・地方で各級個別議員との意見交換を積極的に進め、協力要請を行う。
3)政府・行革推進事務局との交渉を持ち、国会提出が困難となった最大の原因が、「手続・手法と改革の名に値しない内容」の両方にあることを指摘し、その責任を明確にさせるとともに今後の作業スケジュールを明らかにさせる。
4)自民党・与党関係者に対し率直な意見交換を呼びかけ、ILO勧告とそれへの対応が重要な政治的意味を持っていること、時代の変化を踏まえた公務労使関係のあり方などについての理解者の拡大に努める。
また、根強く存在している「基本権問題にたいする偏見」勢力に十分警戒し、連合と連携し、情報収集など対策を引き続き進める。
5)マスコミ・世論形成のために論説委員懇談会の開催など関係者との意見交換を積極的に展開するなど対策を強める。
6)11月結社の自由委員会への対応など引き続きILO国際対策を強化する。既にILOタピオラ局長へ非公式訪日要請に対し前向きの回答を得ていることを踏まえ国際労働団体との連携の具体化を図る。
7)連合本部、同対策本部との連携を一層強め、民間構成組織の仲間からの支援と連帯、地方連合会・同官公部門連絡会と連携し地域におけるキャンペーン行動を始めとした具体的取組みの強化に努める。
8)各構成組織においては職場集会などを開催し、上記運動の到達点、情勢、今後の取組みの考え方・課題について意思統一を図り、組織的取組み体制を再確立することとする。
(別紙2)
透明で民主的な公務員制度改革実現をめざすアピール
第156回通常国会は7月28日閉会し、公務員制度改革関連法案の閣議決定は見送られた。
政府・行政改革推進事務局は、「公務員制度改革大綱」にもとづく国家公務員法改正案など関連法案の今通常国会提出をめざし、法案作業の密室性、天下り・キャリア制度温存、労働基本権の制限など、手続き・基本的内容にわたる各界からの厳しい批判を無視し、閣議決定の強行を画策してきた。しかし、こうした法案が受け入れられるはずはなく、閣議決定断念に追い込まれたのである。
これは、連合を先頭に組織の総力をあげた1,000万署名運動、国会議員要請行動、中央行動、地域での統一キャンペーン行動や民主・社民・自由3党の国会内外の結束した取組みなどによる、私たちの運動の成果であり、現在の到達点と確認できる。
また国際的にも、国際自由労連をはじめ国際労働組合組織の支援によるILO結社の自由委員会への共同提訴、ILO理事・国際労働組合組織代表の来日によるシンポジウムや、政府・政党への要請など数々の取組みを行ってきた。ILOが二度にわたり「大綱」の見直しと労働基本権の保障を日本政府に勧告したことは、運動の前進に大きく寄与し、これによって公務員制度改革の進むべき方向が一層明確にされた。
今通常国会における法案の閣議決定は阻止することができたが、闘いはまさにこれからである。今後、公務員制度改革問題は改めて本格的な議論が展開される局面へ移行する。
私たちは、次期臨時国会から来年の通常国会を視野において、政府に対し、ILO勧告を受け入れ、政労協議の場を設置して早急に交渉・協議を開始することと、広く開かれた議論を保障することを求める。そのなかで、私たちは、国民の目線にたった国民の期待に応え得る公務員制度改革に取り組んでいく。
構成組織、組合員、関係者のこれまでの取組みに心から感謝するとともに、労働基本権の確立と透明で民主的な公務員制度の実現をめざして、さらに取組みを強化することを訴える。
2003年7月29日
連合官公部門連絡会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部
以上