12月5日から10日までの日程で、宮崎で第18回ICFTU(国際自由労連)世界大会が開催されているが、6日、ILO共同提訴団の国際労働組合組織代表は、会場内のホテルで、同大会に来賓として参加したソマビアILO事務局長と会談し、労働基本権の確立など公務員制度改革に関する要請を行った。
会談の出席者は次の通り。
【ILO】ソマビア事務局長、タピオラ基準・労働における基本的原則及び権利総局総局長、ベーカー労働者活動局長、クニア労働者活動局次長
【ILO労働側グループ】トロットマン労働側グループ議長、エドストローム労働側理事、ゼールホッファー労働側理事
【国際労働組合組織】オリヴェイラICFTU副書記長、イルバートンPSI(国際公務労連)会長、エンゲルベルツPSI書記長、ヴァン・リューエンEI(教育インターナショナル)書記長、ボブ・ハリスEI上級顧問、ジェニングスUNI(ユニオン・ネットワーク・インターナショナル)書記長、コックロフトITF(国際運輸労連)書記長、ノルマクIFBWW(国際建設林産労連)書記長
【連合】草野事務局長、中嶋総合国際局長
【公務労協】丸山対策本部長、人見・森越両副本部長、山本事務局長、佐藤全水道委員長
冒頭、草野連合事務局長から会談の出席者に対し、「日本の公務員制度改革について皆さんの理解と支持に感謝する」とのべるとともに、「トロットマン議長には昨年、ILO労働側理事全員が署名した書簡をもって日本政府と政党に要請行動をしていただいた。また、シャメンダICFTU会長とコックロフトITF書記長には本世界大会の直前、東京で活躍いただいた。このようなご尽力にもかかわらず政労協議は合意に至っていない。皆さんの支持をパワーにしながら合意推進のための協議を積極的に進めていきたい。引き続きの強力な支援をお願いしたい」と訴えた。
トロットマン労働側グループ議長が労働側全体を代表してあいさつした。そのなかで、「昨年訪日した際、日本政府に改革の必要性を認識してもらうことがいかに困難なことであるか実感した」とのべ、「国際労働運動は連合方針を全面的に支持しており、日本政府は、我々が公務員の労働基本権保障問題をいかに重視しているかを知るべきである」と表明した。
エンゲルベルツPSI書記長は、ILOへの共同提訴団体を代表して次のように説明した。@日本政府には、ILO勧告を実施しようとする兆候がない。消防職員の団結権付与も認められず、消極的な対応を象徴している。
A韓国政府さえ、労働協約締結権の付与にむけ法改正を進めており、日本より積極的であることは評価できる。
B日本政府は、ILOへの第2位の財政拠出国だが、勧告を遵守し労働行政を進めるうえで相応の責任を果たすべきである。日本はアジア諸国に模範を示さなければならない。
ついで、コックロフトITF書記長は、12月2、3日の両日、厚生労働大臣と各政党への要請を実施した経過を説明、「韓国での制度改革により、OECD(経済開発協力機構)加盟国で労働協約締結権を認めていないのは唯一日本だけになる」とのべて、日本政府の姿勢を批判した。
丸山対策本部長は、公務員制度改革に対する取り組み経過を説明し、ILOからの引き続く支援を要請した。
こうした一連の要請に対し、ソマビアILO事務局長は、「招待に感謝する。訪日の目的の一つには公務員制度改革を巡る日本の動向について雰囲気を感じ取ることもあった。そのため、笹森連合会長とも会談した。ILOにとって連合と協力して最良の解決策は何かを探ることは重要な任務であるが、すでに日本国内でも協議が進んでいると聞いている。この問題についてはILOにとっても重要であり、興味を持って注視している」と発言、政労協議により制度改革が行われることが重要であることを強調した。
この要請に先立ち、ソマビアILO事務局長と笹森連合会長との会談が12月1日、連合本部で行われ、@公務員制度改革、A連帯のグローバル化、について意見交換した。そのなかで、ソマビア事務局長は、「日本政府と連合との協議に期待する。組合にとって非常に重要な問題だと理解しているが、同時にILOにとっても重要事項である」とのべ、「両者が共通の理解に到達するようILOとして努力する」ことを約束した。
また、ICFTU世界大会初日の5日には、笹森連合会長と小泉首相との会談が行われ、公務員制度改革問題などについて意見交換した。会談には尾辻厚生労働相が同席した。
笹森会長は、日本と同様に公務員の労働基本権が制限され、公務員労働者が弾圧されている韓国に対して、来年1月にOECDが是正を勧告する予定であることなどを説明、「日本の動向がアジア各国に影響する。韓国より先に日本の答えをつくりたい。公務員の労働基本権は、いま暗礁に乗り上げているが、来春以降、労働基本権に関する明確な文書上の表現を盛り込んだ答えづくりをすすめたい。次の通常国会に関連法案を出さなければ国民が許さない」と要請した。これに対し小泉首相からは明確な見解が示されなかった。
対策本部としては、連合と連携し、引き続き国際労働組合組織の力強い支援のもと、労働基本権の確立をめざし、ILO対策を含めた国内外での取り組みを進めることとしている。
以上