公務労協公務員制度改革対策本部は、公務員制度改革をめぐって、12月15日17時から佐田行政改革担当大臣交渉を実施した。
この間、公務員制度改革については、2004年12月の閣議決定に基づき、「関係者間の調整を進める」とされてきたにもかかわらず、12月7日に開かれた経済財政諮問会議で集中論議が行われ、政府として関係法案の次期通常国会への提出をめざす動きにあることが、12日の行政改革推進本部事務局交渉(対策本部ニュースNo184参照)で明らかになったことから、政府の姿勢を質すため、その実施を求めていたもの。
交渉は、内閣府内で行われ、対策本部側は福田本部長、岡部副本部長、森・河田両本部員、山本事務局長が参加し、政府側は佐田大臣ほか株丹事務局次長らが対応した。
冒頭、福田本部長が佐田大臣に「公務員制度改革に関する申入れ」(別紙参照)を手交し、「われわれは公務員制度改革を推進する立場でいろいろ意見を申し上げてきた。改革を進めるに当たっては、部分的に行うのではなく、労働基本権を含めた一体的な観点から作業を進めていただきたい」として、申入れに対する見解を求めたのに対し、大臣は次の通り答えた。
(1) 12月7日の経済財政諮問会議で民間議員から厳しい意見が出たが、わたしの方からは総合的に改革を進めていかないといけないということを申し上げ、特に天下りについては徹底的になくすべきだとの考えを説明した。当面、現行の事前規制を維持しながら、新たに事後の行為規制を行うことにして、その後、事前規制はなくすことにしている。
(2) 能力・実績主義の人事管理については、俸給、職制、労働基本権とも関わる。この間、能力等級制度の議論もあったので、それを検討させていただきたい。
(3) 身分保障の問題については、民間議員から、官民交流のため公務の身分保障を下げてイコールフッティングにすべきだという意見が強かった。完全なイコールフッティングにはならないがそれなりのことは考えないといけない。
(4) 以上のようなことを総合的に考えていくことにして、その中でやれるものについては調整しながら進めていきたい。自民党の方では、長い間議論してきたので相当進んでいる。
これに対し、対策本部側は、次の通り、これまでの経緯を踏まえ、基本権の問題と能力・実績主義の人事管理は一体で検討されなければならないとして、大臣の考えを質した。
(1) われわれは専門調査会でもスピード感を持って進めるよう求めている。労働基本権と労使関係は専門調査会で検討しているからといって、それ以外は政府の方で進めていいということにはならない。
(2) 公務員制度改革については、2004年までに能力・実績主義の人事管理のための能力等級制の法改正について結論を得ることができず、現行制度の下で改革を進めようということで評価の試行が始まり、基本権については連合と三大臣(行革担当、総務、厚生労働各大臣)協議の合意に基づき専門調査会が設置され議論が始まり、ILOもそれを見守っている。
(3) 三大臣との合意の経過では、能力・実績主義の人事管理と労働基本権は密接・不可分であり、まず労使関係の改革をしようということだった。それが、仮に切り離されるならば、三大臣との協議に基づいて調査会を設置したのはいったい何だったのかということになり、再度、ILOに持って行かざるを得ない。労働基本権、労使関係の答えが出ないうちに能力・実績主義の人事管理に関わる法改正を行うということは納得できない。
これに対し佐田大臣は、「専門調査会には基本権の問題を議論してもらっており、尊重する。ただ、天下りや官民交流の問題までも議論してもらうわけにはいかない。政府としては、天下りや能力・実績主義の人事管理の議論なども一緒にやろうと思っている。天下りの議論は相当進んでいるが、能力・実績主義の問題はまだ漠としたものがあり、今までの議論の積み重ねを踏まえ、今後どう改革していくかについて組合との間で共通点を見いだせればいいと思うが、いつまでも議論していればいいというものでもない。すべて皆さんの意見が入るというわけにはいかないがしっかり議論を重ねたい」との見解を示した。
さらに重ねて対策本部側が、@能力・実績主義と労働基本権の問題は不可分であること、Aこれまでの経緯を反故にしないこと、Bはじめに結論ありきで進めないこと、を強く迫ったのに対し、佐田大臣は「能力・実績主義の人事管理すなわち能力等級の問題はこれからしっかり議論する。問題が難しく、広く影響するので、皆さんと誠心誠意議論していきたい。ただ、時間は余り取れない。基本権は専門調査会にしっかりやってもらうが、能力・実績主義の方も早くやらなければならない状況にあることもご理解願いたい。これまでの経過や信頼関係を損ねてまで進めるつもりはない」との考えを述べたことから、引き続きの誠実な対応を確認し、交渉を終えた。
以上のように、大臣は能力・実績主義の人事管理に関わる法案を次期通常国会へ提出するともしないとも明言はしなかったが、これまでの経緯を踏まえ、労働組合と「誠心誠意議論」していくことを約束し、組合の反対を押し切ってまで一方的に法案を提出するようなことはないとの考えを示した。これについて対策本部は、今後とも、公務員制度改革は2004年末の閣議決定の枠内で、三大臣との協議に基づいて設置された専門調査会での労働基本権検討と一体のものとして進められるものと受け止め、連合と連携し、専門調査会対策などを強化していくことにしている。
<別紙申入れ>
2006年12月15日
行政改革担当大臣
佐田 玄一郎 様
公務公共サービス労働組合協議会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部
本 部 長 福 田 精 一
公務員制度改革に関する申入れ
常日頃から、公務員に関わる諸制度改革や処遇改善にご努力頂いていることに心から感謝申し上げます。
公務員制度改革に関わっては、7日の経済財政諮問会議に佐田大臣の考え方が示され、議論が行われたと拝聞しています。さらに、自民党からは次期通常国会に公務員制度改革関連法案を提出することを目標に作業を進めるよう要請があったと拝聞しています。
現在、公務員制度改革は、2004年12月24日の「今後の行政改革の方針」(閣議決定)により、「関係者間の調整をさらに進め」ることとなっており、当面、評価の試行などが鋭意取り組まれているところです。また、労働基本権や労使関係の改革に関わる課題については、三大臣と連合の政労会談の確認に基づき、「専門調査会」が設置され審議が進められています。
今日までわれわれは、労働基本権確立を含め抜本的な公務員制度改革を早急に進めるべきであるとの考え方に基づいて様々な提案を行い、こうした取組みに積極的に協力してきました。しかし、今般の政府や与党における検討方向は、こうした経過に基づいて進められている現在の取組みとの整合性に重大な疑義を生じ、われわれと十分交渉・協議するとの約束にも反するものであるといわざるを得ません。また、安倍総理が7日の経済財政諮問会議の議論を「全体パッケージの中できちんと位置づけて改革していかなければならない」と集約しているように、公務員制度改革は部分的なものではなく、総合的・一体的に進めるべきものと考えます。
行政改革推進本部が公務員制度改革について新たな観点からの検討を行うのであれば、まずわれわれに対してその経緯や内容を納得のいく形で説明し、改革案のとりまとめに当たって十分交渉・協議を行い、合意すべきものと考えます。
以上のことから、下記事項を申し入れますので、貴職におかれてはその実現に向けて最大限努力されるよう強く要請します。
記
1.今般の公務員制度改革の検討に至る経緯や背景、その方向性について、現在進められている様々な取組みとの関連を含め、納得のいく説明を行うこと。
2.国民本位の公務員制度改革を進めるためには、政治との関わりや行政の在り方、キャリア制度を含めた公務員の在り方や労使関係制度など、広範・多岐にわたる改革を行う必要があることから、部分的・個別的に検討を行うのではなく総合的・全体的な観点から一体的な改革案を取りまとめること。
3.公務員制度改革の検討にあたっては、次期通常国会への法案提出を前提とせず、公務労協との間に「交渉・協議の場」を設け、十分交渉・協議を行い、合意のもとに作業を進めること。
以上