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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.190 2007年4月13日

公務公共サービス
労働組合協議会


"政府・与党合意"受けた関連法案とりまとめに対し申入れ−4/13

−十分な交渉・協議を行い、一方的閣議決定・国会提出を行わないことを要求−

 公務労協公務員制度改革対策本部は、4月13日13時から行政改革推進本部事務局交渉を持ち、同日朝の「公務員制度改革に関する政府・与党合意」(別紙1参照。以下「政府・与党合意」という。)の内容等を質し、関連法案について一方的な閣議決定を行わないことを求める別紙2の「公務員制度改革関連法案の取りまとめに当たっての申入れ」を提出した。
 これは、本日の政府・与党合意により、今月末の閣議決定・国会提出をめざして関連法案の作業が急ピッチで進められることになる情勢を踏まえて、対策本部の法案に対する考え方を改めて申入れたもの。
 交渉には対策本部の山本事務局長ほか各構成組織書記長が参加し、行革推進本部事務局側は株丹次長、堀江参事官らが対応した。
 冒頭、山本事務局長が、本日の政府・与党協議会の状況を質したのに対し、株丹次長は「今朝8時から政府・与党協議会が開かれ、政府・与党合意がなされ、確定した」として、別紙1の政府・与党合意事項の内容を説明した上で、「事務局としては、法案提出に向けた作業、またその後の有識者による検討の場などについての作業を行っていくことにしており、引き続きいろいろな形で議論を行いながら進めて参りたいのでよろしくお願いする」との考えを示した。
 これに対し、対策本部側が@能力・実績主義と再就職規制だけを急いで法案化する一方、労働基本権やその他の公務員制度の総合的検討課題を先送りすることは納得できない。整合性ある一体のものとして改革すべきだA新たに総理の下に置かれる有識者会議の性格とスケジュール、専門調査会との関係等について明らかにすべきだと質したところ、株丹次長は@能力・実績主義と再就職規制は長い間検討されて今日に至っていることから、できるところから実施することとし、続いてパッケージの議論を行っていくことにしたものであるA専門調査会は行政改革推進法に基づいて設置され、労使関係等について現在審議を行っており、総理の下に置かれる有識者会議は今回合意されたパッケージの4つの課題を含めて公務員制度を総合的に検討する場であり、次期通常国会に国家公務員制度改革基本法を立案し、提出していくことになる、との見解を示した。

 これらのやり取りを踏まえ対策本部側は「3月8日にも渡辺大臣に申入れを行ったが、事務局の回答内容はいわばゼロ回答であった。本日、われわれの主張が全く反映されないまま、政府・与党合意が行われ、これに基づき、総理の訪米前に一方的に法案の閣議決定が行われることになる。われわれは労働関係制度の改革と分離した能力・実績主義人事管理の強化、天下り問題の抜本的解決とならない再就職管理の見直しを盛り込む公務員制度改革関連法案は到底容認できない」として、別紙2の申入れを提出し、法案の閣議決定前には渡辺行政改革担当大臣との交渉を行い、正式に回答するよう迫った。
 この申入れに対し、株丹次長が「申入れは承ったので、大臣交渉が行えるよう努力したい」と答えたことから、これを確認し、本日の申入れ交渉を終えた。

<別紙1 政府・与党合意>

公務員制度改革に関する政府・与党合意


平政19年4月13日


1.改革の基本的考え方
(1)改革の必要性
 これまで、公務員は、戦後レジームの中で、国家運営の担い手として、国民と国家の繁栄のために積極的な役割を果たしてきた。しかしなから、本来優秀な人材が集まっているのに、その能力が十分に活かされているとは言えない。また、経済・社会の変化に対応して、政策企画能力を高めるため、民間の専門能力を取り入れる必要も指摘されている。他方、押し付け的あっせんや官製談合に対する強い批判がある。
 このような現状に対応するため公務員制度改革を進めることが急務となっている。
(2)改革の目的
 公務員は、まず、国民と国家の繁栄のために、高い気概、使命感及び倫理感を持った、国民から信頼される人物である必要がある。更に、公務員には、幅広い知識・経験に裏打ちされた一層の企画立案能カ、管理能力が求められる。また、精緻・複雑化する行政分野に対応した今以上の深い専門的知識・経験を有するスペシャリストとしての能力も必要となる。
 今回の公務員制度改革は、このような21世紀にふさわしい行政システムを支える公務員像の実現を目指す。それには質の高い人物が公務の世界に入リ、能力を高め、誇りを持って職務に専念できるような仕組みが必要である。また、官と民の闊達な交流により、専門能力、民間の世界に対する深い理解に基づいた行政の展開が求められる。同時に、公務員が様々な機会にその能力を積極的に活かせる仕組みとすることも重要である。他方、上記のような批判を踏まえた政革を断行し、国民の信頼を回復することも必要不可欠である。
 このような改革は、いわば、「美しい国」を創る担い手として、国民から信頼され、かつ「世界に誇れる公務員」をわが国に創っていくことを目指すものである。
(3)パッケージとしての改革とその進め方
 公務員制度改革は、能力・実績主義や再就職規制にとどまるものではなく、行政組織の職員の採用、能力開発、昇進、退職等の相互に関連した人事管理制度全体に変革をもたらしていくものであリ、パッケージとして改革を進めていくことが必要である。このため、以下のとおり、国家公務員法等改正法案を速やかに国会に提出するとともに、引き続き公務員制度の総合的な改革を推進するため、基本方針を盛り込んだ法案を次期通常国会に向けて、立案し提出する。


2.法律案の骨子概要
(1)能力・実績主義
@人事管理の原則
 職員の任用、給与その他の人事管理について、職員の採用試験の種類や年次にとらわれてはならないこと、人事評価に基づいて適切に行うことといった基本的な原則を明らかにする。
A能力本位の任用制度の確立
イ 昇任、転任等
 職員の昇任及び転任は、職員の人事評価又はその他の能力実証によるものとする。また、職制上の段階の標準的な官職と、その官職に必要な標準職務遂行能力を明らかにしておき、標準職務遂行能力及び適性を、昇任又は転任の判断基準とする。
ロ 採用昇任等基本方針
 職員の採用、昇任、降任及び転任に関する制度の適切かつ効果的な運用を確保するための基本的な方針(採用昇任等基本方針、閣議決定)を策定する。
B新たな人事評価制度の構築
イ 職員の人事評価を「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能カ及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」と定義し、これを公正に行わなければならないこととする。
ロ 職員の執務について、その所轄庁の長は、定期的に人事評価を実施。
ハ 人事評価の基準及び方法に関する事項その他人事評価に関し必要な事項は、人事院の意見を聞いて政令で定める。
C分限制度
 分限事由の一つである「勤務実績がよくない場合」を「人事評価又は勤務の状況に照らして、勤務実績がよくない場合」に改める。
(2)再就職に関する規制
@再就職あっせんの規制
 各府省等職員が職員又は職員であった者について、営利企業及び非営利法人(以下「営利企業等」という。)に対し再就職あっせんを行うことを禁止し、内閣府に設置する官民人材交流センター(仮祢)(以下「センター」という。)にー元化する。
 センターは、職員の離職に際し行う離職後の就職の援助に関すること及び官民の人事交流の円滑な実施のための援助に関することを行う。
 ―元化までの移行期間中は、再就職等監視委員会(仮称)等の承認を受けた場合に限り、各府省職員による再就職あっせんを可とする。センターは平成20年中に設置することとし、一元化実施時期は、センター設置後3年以内とする。
A現職職員の求職活動規制
 現職職員が自らの職務と利害関係を有する一定の営利企業等に対し、求職活動を行うことを規制する。ただし、現役出向の場含、一定の官職以下の職員の再就職の場合、センターを利用する場合、再就職等監視委員会(仮称)等の管理下において行う場合には、現職職員による当該営利企業等への求職活動を可とする。
B退職職員の働きかけ規制
 離職後に営利企業等の地位に就いた退職職員が、離職後2年間、一定の国の機関の現職職員に対し、当該営利企業等又はその子法人が関係する契約又は処分であって離職前5年間に担当していた職務に属するもの等に関して働きかけを行うことを規制する。
 離職後に営利企業等の地位に就いた退職職員が在職中に自らが決定した契約又は処分に関して働きかけを行うことを期限の定めなく規制する。
C働きかけを受けた現職職員の規制
 退職職員から上記Bに規定する働きかけを受けた現職職員に対し、監察官(仮称)への届け出を義務付ける。
D上記@〜Cにおいて、違反行為に対しては懲戒、過料を科し、不正な行為等に対しては、刑罰を科す。
E再就職情報の内閣での一元管理
 管理職職員は、営利企業等の地位に就く場合等には、離職後2年間内閣総理大臣に政令で定める事項を届け出なければならないものとする。
F事前承認制度の暫定的存続と廃止
 離職後2年間の内閣による事前承認制度を暫定的に設け、一元化の時点で同制度は廃止する。
G監視体制の整備
 再就職等監視委員会(仮称)を設置し、再就職に関する規制の適用除外の承認、任命権者への勧告等を実施する。
 同委員会に監察官(仮称)を設置し、各府省等における再就職に関する規制違反の調査等を実施する。


3.官民人材交流センター(仮称)に関する方針
 官民人材交流センターの制度設計については、官房長官の下に置く有識者懇談会の意見を踏まえ、内閣において以下の原則に従い検討することとする。
(1)制度改革の進行とともに、各府省等の人事の一環としての再就職あっせんから、センターによる再就職支援に重点を移していく。センターの主たるユーザーは職員となることを想定しているが、退職勧奨を行う人事当局からの依頼も受け付ける。多くの企業等から多様な求人情報を得られる能動的な求職活動をしっかり行えるよう、再就職ニーズに十分対応した積極的な求人開拓営業・キャリアコンサルティングの実施等により、センターの再就職支援機能の重点的強化を図る。
(2)各府省縦割りを排し、内閣一元化を図る。各府省等の人事当局と企業等の直接交渉は禁止し、センター職員は出身府省職員の再就職あっせんを行わないこととする。センターは内閣府に置き、中央組織と地域ブロック別の拠点からなる組織・人員体制を整備し、各府省等からの中立性を徹底し、実効性のある効率的な組織・運営とする。あっせんの対象職員に関する必要なキャリア及び人的情報の把握のため、センター職員は人事当局等と必要に応じて協力するものとする。
(3)あっせんによる就職実績等の公表も含め、業務の透明性を確保する。外部監視機関が厳格に事後チェックを行う。
(4)センターを内閣府に、20年中に設置し、3年計画であっせん取扱いを拡大する。このため、センターの設置後、随時、効率性・実効性の観点から見直しを行い、必要な追加的措置を講ずることにより、再就職ニーズに十分対応できる体制、業務の仕組みを整備する。その際、センターの規模については、再就職のニーズ・実情を十分把握した上での必要最小限度の体制の構築に配慮することとする。


4.パッケージとしての改革
 公務員が国民から信頼され、官・民双方の場において能力に見合った活躍の場を得られるよう、改革の全体像を念頭に置きながら、実現できる改革から迅速に実現し、公務員制度改革を前進させる。このため、前記、2.を内容とする国家公務員法等改正法案を速やかに提出する。これに加え、総理の下に有識者からなる公務員制度に関する検討の場を設け、下記の課題を含む採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について総合的・整合的な検討を進めることとし、公務員制度の総合的な改革を推進するための基本方針を盛り込んだ法案(国家公務員制度改革基本法(仮称))を立案し、提出する。
(1)専門スタッフ職の実現
 職員の専門能力を活かして公務部内で長期間在職可能な専門スタッフ職の早期導入を目指す。
(2)公募制の導入
 意欲と能力のある多様な人材を確保するため、幹部職員について他府省及び民間を含めた公募による任用を職務の特性を踏まえつつ推進する。
(3)官民交流の抜本的拡大
 官から民、民から官の双方での官民交流の抜本的拡大に向け、早急に所要の制度整備を行う。
(4)定年延長
 公務員の定年と年金受給開姶年齢の乖離、民間における定年の延長や再雇用の活用状況等も踏まえ、公務員の定年延長を進める。


5.その他
(1)自衛隊員については、特別職の特殊性を十分考慮した上で、一般職の国家公務員に適用される能力・実績主義及び再就職に関する規制に準じた内容の法案を速やかに提出する。
(2)地方公務員については、2.の内容や地方の実態等を踏まえた上で、改革の内容について検討を行い、必要な法案を速やかに提出する。
(3)都道府県警察出身の警務官については、警察法において、国家公務員法の再就職規制に係る規定を適用除外とし、地方公務員法と同様の規制を行う。
(4)労働基本権については、専門調査会の審議を踏まえ、引き続き検討する。


<別紙2> 申入書

2007年4月13日


行政改革担当大臣
 渡 辺 喜 美 殿


公務公共サービス労働組合協議会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部
本部長  福 田 精 一


公務員制度改革関連法案の取りまとめに当たっての申入れ


 公務員制度改革については、本日、政府と与党間の合意が行われ、貴職において今月末にも関連法案を閣議決定すべく作業が進められるものと拝聞しています。しかし、現段階で示されている内容は、再就職管理について本当に天下り問題の解決となるのか実効性に大きな疑義があり、能力・実績主義人事管理の強化についても、それと不可分の労使関係制度の改革方向が明示されていないなど、到底容認できるものではありません。
 この間、公務労協は、3月8日に貴職に対してキャリア制度の廃止や労働基本権の確立を含む抜本的な公務員制度改革を求める「申入れ」を行い、その実現を求めて交渉・協議を行ってきましたが、今日までその内容はまったく反映されておらず、極めて遺憾といわざるを得ません。
 今後、関連法案の取りまとめに当たって、改めて下記事項の実現を求めるとともに、公務労協と十分交渉・協議し、合意の上で閣議決定するよう強く要請します。



1.国家公務員法改正法案の策定作業にあたっては、公務労協と十分交渉・協議、合意することとし、一方的な閣議決定・国会提出を行わないこと。

2.「能力・実績主義人事管理を徹底」するための国家公務員法改正にあたっては、労働基本権の保障、交渉による賃金・労働条件決定システムと労使協議制を整備するための規定を一体のものとして設けること。

3.能力・実績に基づく人事制度の法制上の整備については、評価基準・結果の開示と職員代表等が参加する苦情処理システムを整備した新たな評価制度の整備を前提とすること。評価の任用・給与等への活用のあり方の検討に当たっては、評価の試行結果を踏まえて公務労協と十分交渉・協議、合意すること。

4.いわゆる「キャリア制度」の廃止を明確にし、採用試験制度を抜本的に見直すこと。

5.任用の中立・公正性を確保するため、複雑・困難、責任の度に応じた個々の官職の任用基準と透明で民主的な手続きを定めること。その際、一定の官職以上への任用にあたっては「審査委員会」等を設けること。また、「職制上の段階」や「標準職務遂行能力」等は制度化しないこと。

6.新たな交渉による賃金・労働条件決定システムや労使協議制が構築されるまでは、政令等を定めるにあたって職員団体等との「協議制度」を整備すること。

7.公務員の退職管理については、いわゆる「天下り」を前提としたシステムを抜本的に改め、複線型人事システム等を活用しながら定年まで勤務できるシステムを整備すること。また、定年延長を具体的に検討すること。

8.いわゆる「天下り」については、営利企業への再就職を原則禁止する規制を維持・強化するとともに、中立・公正な機関において審査対象を公益法人等にも拡大して審査すること。また、審議官級以上の幹部職員の再就職管理については、内閣一括任用を前提に内閣官房で行うこと。

以上