29日の国会では、参議院本会議で野党が提出した柳沢厚生労働大臣、安倍内閣総理大臣の問責決議案を賛成少数で否決、その後衆議院で内閣総理大臣不信任決議案等も否決した。そして参議院本会議で、30日未明(国会は29日から継続)に社保庁改革法案等を与党の賛成多数で可決したあと、国公法等改正法案について委員会採決を省略し藤原内閣委員長に中間報告を求める動議が提出され可決、続いて本会議で強行採決、与党の賛成多数で可決・成立となった。
4月末に国会に提出され、衆参内閣委員会で審議されてきた国公法等改正法案は、公務員制度改革の全体像の議論や労使関係制度の改革等の本質的な議論が深まらないまま、参議院選挙向けの政治的パフォーマンスに終始してきた。そして、本日、参議院内閣委員会の審議が未了のまま、与党によって本会議で強行採決されたことは、厳しく批判されねばならない。こうした状況の中、公務労協は6月27日の参・内閣委員会の審議を通じて、政府から今後の闘いの足がかりとなる確定的答弁を引き出すなどの取組みを進めてきた。
法案強行採決を受け公務労協は、29日(30日未明)、労働基本権確立・公務員制度改革対策本部長の見解(資料参照)を発表し、政府・与党の姿勢を厳しく批判するとともに、労働基本権を含む公務員制度の抜本改革や能力・実績主義人事管理の具体化に向けてさらに取組みを強めていくこととしている。
<資料>
国家公務員法等改正法案の強行可決・成立に対する本部長見解
1.政府・与党は、6月29日(30日未明)、天下り・再就職規制と能力・実績主義人事管理を中心とする国家公務員法等改正法案を委員会審議未了のまま参議院本会議で強行採決によって可決・成立させた。
国の基盤的行政である国家公務員制度についての国会論議は冷静で整合性ある議論の深まりを欠き、法案の取り扱いは、予定されていた参議院選挙日程を変更して国会会期が延長されるという異例の政治情勢の下で、終始選挙戦術に従属された。これらのことは厳しく批判せざるを得ない。「天下り・再就職問題については勧奨退職を継続するのか否か」、「各省割拠主義など、政府として一貫した人事管理を行う権限と責任の体制をどうするのか」、「採用試験制度、現行キャリアシステムをどうするのか」等の本質的課題の解決はいずれも不明確なまま先送りされ、労使関係制度改革等の基本的方針が法律上明示されなかったことは極めて問題である。
2.こうした情勢の下での国会審議に対し、公務労協は連合と連携し、@求められる公務員制度改革の全体像を明らかにすること、A労働基本権を軸とした労使関係制度の抜本改革の推進、B評価制度の設計・活用に関する政令制定は労使協議に基づくことと労使協議制度の確立、C総理の下に設置されるパッケージ改革のための有識者による検討の場への労働界の代表参加、等に資する政府答弁等を引き出すことを第一目標として取り組みを進めた。
結果として、官房長官、行革担当大臣、同副大臣らから「政府として専門調査会の結論を尊重し、速やかに労働基本権を含む公務の労使関係を改革の方向で見直すべく取り組む」、「評価結果等のフィードバックと苦情処理のシステム等が信頼性の高い制度を構築するための課題」であり「政令策定にあたっては、職員団体等と十分話し合い、理解と納得を得る最大限の努力をする」、「労使協議制度については専門調査会の審議を踏まえ速やかに取り組む」、総理の下に設置される「有識者による検討の場の具体的人選は、広く国民的な議論を行う観点から労働者代表が参加する必要があるとの指摘も踏まえ検討する」などの答弁を引き出した。
3.パッケージ改革の一歩と位置づけられた法案成立により公務員制度改革は新しい段階に突入する。即ち、第1に、「採用試験区分や採用年次にとらわれない能力・実績による人事管理とそのための評価制度」は2年以内の施行に向け、具体的な設計・活用等の政令策定作業にはいることとなる。第2に、来年通常国会に提出される公務員制度改革基本法案策定作業が総理の下に設置される有識者による検討の場において本格的に推進されることとなる。
公務労協は連合と共に、透明で民主的な公務員制度改革とILO勧告を満たした労使関係制度の確立に向け、国会答弁等を足がかりとし、10月に想定されている専門調査会報告とりまとめ、有識者による検討の場への意見反映、政令策定に関わる各級段階での交渉・協議システムの確立や評価制度の活用、具体的設計についての交渉・協議に全力を傾けるものである。
2007年6月29日
公務公共サービス労働組合協議会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部